最近おすすめした本(2023年4月)
なんか書けることがないので、最近Twitterなどでおすすめした本について書きます。
とりあえず今回は「ファシズム」についての基本的な本です。
ファシズムについて知る
ファシズムとはなんなのかというと、実はその定義が曖昧です。
ファシスト党のムッソリーニをはじめ、ヒトラーのナチズム、そして日本の天皇制ファシズムは、第二次大戦における枢軸国を構成し、これらがファシズムであるとする見解にほとんど異論は存在しません。
しかし、これら以外にも様々な国家や政体が、ファシズムであると見なされたり、他の政体との相違点によって否定されたりしており、ファシズムを定義する確固とした条件については定説が固まっていないのです。
しかしそれは、ファシズムそのものが曖昧な概念であることを意味するのではなく、ファシズムはいろいろな形を取り得る、ということです。
岩波現代文庫から出ている『ファシズム』(山口定)は、世界各国のファシズムについて、誕生から特徴などを網羅的に整理しており、様々なファシズムの共通性や相違点について知るには、とても良い一冊です。
読み切るには労力を要すると思いますが、ファシズムの問題に関心を持つ人であれば、手許に置いておくと良いと思います。
エーコの「原ファシズム」
ファシズムと言うと、ウンベルト・エーコが書いた「ファシズム14の徴候」を箇条書きしたものが、ブログやTwitterで紹介されることがあります。
これはもともと「永遠のファシズム」というエッセイに書かれたものですが、エーコはファシズムの定義が困難であることを述べたうえで、それらの特徴を語っているのです。
ある人がまとめたところでは、
伝統崇拝
非合理主義
反知性主義
批判の拒絶
よそ者の排除
欲求不満層の懐柔
ナショナリズム
敵の力の判断力欠如
反平和主義
弱者蔑視
死への崇拝
武器への愛着
ポピュリズム
貧弱な語彙
となっています。
エーコは、これらの特徴をいくつか備えた政治傾向を「原ファシズム」と呼び、強く警戒して戒めています。
このエッセイは、日本でも『永遠のファシズム』という書籍に所収されていますが、それほど長い文章でもありませんから、誰でも読みやすく、理解しやすいと思います。
ナチスについて知っておく
ファシズムと言えばナチス・ドイツが筆頭に挙げられることが多く、ナチスが権力を掌握した手法や時代背景について、いろんな人が話題にしています。
このナチス・ドイツについて、わかりやすくまとめた一冊が、石田勇治先生の『ヒトラーとナチ・ドイツ』です。
新書でコンパクトにまとまっており、新しい研究の成果も取り入れられているので、ナチス・ドイツとはどのような政体だったのか、どういう国家を作ったのか、ということを理解するのに好適な一冊です。
これを読めば、「ナチスは良いこともした」とかいう逆張り言説が、どれほど出鱈目なものかも、ちょっと理解できると思います。
以上に挙げた書籍は、価格も安くて手に入りやすく、いずれも定番として、おすすめできるものです。
よかったら手に取ってみてください。
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