見出し画像

今週の全米アルバムチャート事情 #115- 2022/1/22付

ちょうど今週グラミー賞の延期日程が4/3(日本時間4/4)に決定、しかも場所もLAでもNYでもなく、何とラスベガスでの開催となることがアカデミーからアナウンスがありました。これで2年連続の日程延期となってしまったグラミー賞、今年の授賞式がどうなるか、それまでにオミクロンは収まってるのか、いろいろ気になりますよね。そしてこのグラミー賞授賞式延期に伴って、自分が毎年音楽評論家の吉岡正晴さんとやってる、トーク&DJイベント「ソウル・サーチンラウンジ〜グラミー大展望&予想」も今週開催予定だったのを、3/17頃に変更予定で今最終調整中です。その頃にはオミクロンも下火になって、リアル開催できますように。

せっかくこの記事の連動ポッドキャストをお休みしているのに、その代わりに、と言ってた毎年恒例のグラミー賞51部門大予想のブログ記事、なかなか手がついてなくてすみません。何とかこの週末くらいからは始動したいと思ってます。ちなみに昨年の今頃やったグラミー各部門の予想は上記のまとめマガジンで読めますので「去年はどんな感じだったかなあ」と思ったら是非一度読んで見て下さい。最終受賞者もわかるようにしてあるので、予想との比較も振り返って楽しめるのでは、と思います。

画像1

さて今週の全米アルバムチャートBillboard 200。先週の予想では1位はまあ間違いなくザ・ウィークンドの新譜ですよわっはっは!と言ってたんですが、蓋を開けてビックリ。何とザ・ウィークンドは2位初登場止まりで、1位はわずか2,300ポイント差という僅差でアトランタの人気ラッパー、ガンナの3作目『DS4Ever』が2020年5月に1位を決めた前作『Wunna』に続く1位をもぎ取ってしまったのです(150,300ポイント、うち実売は4,700枚)。
上記のポイント内訳でも判るとおり、最近のヒップホップの常で、ポイントのほとんど、144,600ポイント(96%)がストリーミングによるポイント。

ということはトラックごとのストリーミングの積み上がりがこのポイントと1位を可能にしてるということなので、個々のトラックも同様にほぼストリーミングポイントだけで、今週Hot 100で7位初登場の「Pushin P」(フィーチャリング・ヤング・サグ)を筆頭に、Hot 100の方に彼のトラックがドカドカ入ってきています(23位、28位、42位、45〜47位、59位、61位、68位、70位、72位、86位、92位の計14曲)。内容的には、21サヴェージ、クリス・ブラウン、フューチャー、リル・ベイビー、ロディ・リッチそして所属レーベル社長のヤング・サグと豪華なゲストを揃えた、でも普通のトラップ・アルバム。UKでも今週初登場4位と好調なこのアルバム、何でここまで人気あるのかな、と個人的にはよく判っていません(ガンナが好きな、うちのヒップホップヘッズの息子にも聞いておきます)。なお今回、チャート対象期間の初日1/7に19曲入でリリースされたこのアルバム、対象期間の最終日1/13にドレイクがフィーチャーされた「P Power」を追加したデラックス・バージョンをドロップする、というなかなか姑息なマーケティングをやってます。この最後の1曲でジリっと1位に上がったんだろうなあ。

画像2

そして惜しくも僅差で2位初登場に終わったのが、先程より話に出ているザ・ウィークンドの『Dawn FM』(148,000ポイント、うち実売14,800枚)。グラミーには全く無視されながらも、2年間にわたる大ヒットアルバムとなった前作『After Hours』は「閉店後(=深夜)」という意味でしたが、今回のタイトルは夜が終わって朝になる「夜明け」、しかも全編架空のFMステーション、103.5 Dawn FMから流れてくるザ・ウィークンドの楽曲をつなげて流している、という設定が何とも楽しい。既にHot 100で6位を記録して、今週Hot 100に再登場のシングル「Take My Breath」でもわかるように、今回前作以上にエレクトロな要素がかなり増えていて、ちょっと聴いてるとペット・ショップ・ボーイズとかの80年代シンセ・ポップを彷彿とさせる出来、ただ今回は前回にも増して楽曲の出来がいいので、全編とても気持ち良く聴ける出来になってるのがさすがザ・ウィークンドという感じ。

今回はタイラー・ザ・クリエイターとの客演や、FMステーションのDJをあの人気コメディアンのジム・キャリーがやってたり、途中でなぜか御大クインシー・ジョーンズの語りが入っていたりと話題には事欠かないのだが、それ以上にリリースと同時に早くから日本のシティポップ・ファンの話題になっているのが、第3弾シングルのシティポップ風ミディアムナンバー「Out Of Time」がほぼ全編80年代シティポップ・シンガーソングライター、亜蘭知子の1983年のアルバム『浮遊空間』収録の「Midnight Pretender」のメロディ・ラインをまんまサンプリングしてること!これ、既にYouTubeで二つの曲をマッシュアップしてる動画も上がったりしてて、日本のみならず世界中のシティポップ・ファンの間でも盛り上がってる様子。ああこれで亜蘭知子のレコードが高くなるんだろうなあ(笑)。でもこのオリジナルのメロディ・ラインをザ・ウィークンドもうまーく料理して無茶苦茶魅力的な楽曲に仕上げているあたりはこれもさすが。1位は逃したけどしばらくはチャートの上の方に居残りそうですなあ。

このえらい勢いの2枚のおかげで今週割を食ったのが先週1位を取ったディズニー・アニメ『Encanto(ミラベルと魔法だらけの家)』のサントラ盤。何と今週は先週比で34%もポイントを伸ばして95,700ポイントを上げてたんですが、上2枚の勢いに押し下げられて星付で3位にダウンしてます。またトップ10ではザ・ウィークンドの新譜の勢いで、先週トップ10に返り咲いてきた彼のベスト盤『The Highlights』も順調にポイントを伸ばして先週8位から6位に上昇するという波及効果も起きてますね。

そして何と今週もう一つ驚いたのは、11位以下100位までの初登場アルバムが何とゼロ。これ、去年の4/17付、ジャスティン・ビーバーの『Justice』が2週目の1位に返り咲いていた週以来9ヶ月ぶりの珍現象でした。ということで今週は一気にトップ10おさらいに行きます。いやいやドレイクの実売枚数いよいよ100枚台になってきましたね(笑)。このままだと実売2桁でトップ10という別の珍現象が起きそう(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) DS4Ever - Gunna <150,300 pt/4,700枚>
*2 (-) (1) Dawn FM - The Weeknd <148,000 pt/14,800枚>

*3 (1) (7) Encanto - Soundtrack <95,700 pt/16,500枚>
4 (2) (8) 30 - Adele <48,300 pt/21,000枚>
5 (3) (53) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <42,800 pt/2,088枚*>
*6 (8) (48) The Highlights - The Weeknd <36,300 pt/2,104枚*>
7 (4) (34) Sour ▲2 - Olivia Rodrigo<35,600 pt/10,000枚>
8 (6) (19) Certified Lover Boy - Drake <35,100 pt/118枚*>
9 (7) (29) Planet Her - Doja Cat <33,600 pt/818枚*>
10 (5) (9) Red (Taylor’s Version) - Taylor Swift <33,200 pt/9,000枚>

画像3

ということで今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後はいつもの来週の1位予想ですが、今回の対象期間は1/14〜20ということで、リリースラインアップを見ると、どうもめぼしいリリースが見当たらないですね。キャット・パワーのカバー集とか、話題のFKAトウィッグスの新譜やパンチ・ブラザーズ久々の新譜など、個人的には興味あるリリースが多いんですが。ということは、来週はガンナが大きくポイントを落として、ザ・ウィークンドが2週目で晴れの1位を獲得する、というシナリオかもという気がしますね。ではまた来週。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?