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【恒例洋楽新年企画】DJ Boonzzyの第65回グラミー賞大予想#7~ジャズ部門

ここのところ寒い日と暖かめの日が交互に来ているような感じですが、来週あたりはぐっと寒さが厳しくなるそうですので、コロナ感染再拡大の傾向もある中、皆さまにはどうかお体ご自愛下さい。さて、毎回このグラミー賞予想ブログでアナウンスしていますが、吉岡正晴さんとの毎年恒例のグラミー大予想トークDJ・イベント「ソウル・サーチン・ラウンジ」を来週の1/24(火)に控えてますので、当日お時間ある方は是非お立ち寄りを新宿カブキラウンジで19時からです!
ではジャズ部門の予想に行きます。

27.最優秀インプロヴァイズド・ジャズ・ソロ部門(ソロイストに与えられる賞)

○ Rounds (Live) - Ambrose Akinmusire (From “New Standards, Vol.1” by Terri Lyne Carrington, Kris Davis, Nicholas Payton, Matthew Stevens, Linda Oh)
  Keep Holding On - Gerald Albright (From “The Black Aquarius” by Hank Bilal)
✗ Falling - Melissa Aldana (From “12 Stars” by Melissa Aldana)
  Call Of The Drum - Marcus Baylor (From “The Evening: Live At Apparatus” by The Baylor Project)
  Cherokee / Koko - John Beasley (From “Bird Lives” by SWR Big Band / Magnus Lindgren / John Beasley)
◎ Endangered Species - Wayne Shorter & Leo Genovese (From “Live At The Detroit Jazz Festival” by Wayne Shorter / Terri Lyne Carrington / Leo Genovese / Esperanza Spalding)

前回、前々回のこの部門は、前々回第63回の授賞式直前に急逝したチック・コリアが、2年連続で圧倒的な存在感を示して受賞していたのが記憶に新しいところ。そしてこの部門だけでなく、インストゥルメンタル・アルバム部門(63回)とラテン・ジャズ・アルバム部門(64回)でも受賞していて、シーンからの絶大なリスペクトを感じたものです。今年は一転してそういう全体を通して大きな存在感を示しているノミニーもなく、各部門多彩な顔ぶれが候補に選ばれてますね。このソロイスト部門だと、2年前はジャズ・インストゥルメンタル・アルバム部門で初ノミネートされ今回が2回目のノミネートとなる、新進気鋭のトランペット奏者で、ケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly』(2015)にも参加していたアンブローズ・アキンムシリ、スムーズ・ジャズのベテラン、サックスのジェラルド・オルブライト、チリのサンチャゴ出身で、ボストンのバークリー音楽院卒業後NYを拠点に活躍する女性テナー・サックス奏者のメリッサ・オルダナ、もとジャネイのボーカルで妻のジーンとのデュオ・ユニット、ベイラー・プロジェクトで既にトラディショナルR&Bやジャズ・ボーカル・アルバム部門で4回のノミネート(しかし未受賞)を誇る、元イエロージャケッツのドラマー、マーカス・ベイラー、テキサスのジャズ音楽一家に育ち20歳にしてヒューバート・ローズら一流ジャズ・ミュージシャンとカーネギー・ホールで初コンサートをやった経験もある、今はベテランのジャズ・ピアニスト、ジョン・ビーズリー、そして大御所ウェイン・ショーターとアルゼンチン出身でインダストリアル・プログレ・バンドのマーズ・ヴォルタエスペランザ・スポールディングとの仕事で知られるピアニスト、リオ・ジェノヴェーゼのコンビと、いやあ多士済々の顔ぶれです。

肝心の予想ですが、本命◎はやはりこの部門で過去2回受賞歴のある(2000年第42回、2014年第56回)大御所ウェイン・ショーターリオ・ジェノヴェーゼが、女性ドラマーのテリ・リン・キャリントンと女性ベーシストのエスペランザ・スポルディングのリズム隊をバックに、21分に亘ってフリージャズなサックスとピアノの絡み合いを聴かせてくれる「Endangered Species」かな。2017年のデトロイト・ジャズ・フェスティバルのライブを収めたアルバムからの一曲ですが、この顔ぶれも豪華ですしね。対抗○はやはりテリ・リン・キャリントン絡みで、彼女が女性ジャズ・ミュージシャンの作品のみを集めた『New Standard, Vol. 1』収録のフリー・ジャズ曲「Rounds (Live)」で持ち味のアヴァンギャルドなプレイを聴かせるアンブローズ・アキンムシリに付けましょう。

そして穴✗は迷いましたが、ソニー・ロリンズに影響されて女性ででっかいテナー・サックスを操るメリッサ・オルダナが気になったので、彼女の「Falling」に。

28.最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム部門

✗ The Evening: Live At Apparatus - The Baylor Project
  Linger Awhile - Samara Joy
  Fade To Black - Carmen Lundy
◎ Fifty - The Manhattan Transfer With The WDR Funkhausorchester
○ Ghost Song - Cécile McLorin Salvant

その先ほど名前の出たベイラー・プロジェクトがここジャズ・ボーカル部門でノミネートされているのが、NYにあるデザイン・スタジオ、アパラタスの共同設立者であるガブリエル・ヘンディファーの招きで、スタジオ内に作られたジャズ・クラブでライブ録音された『The Evening: Live At APPARATUS』。マーカス・ベイラーのピアノ、ベース、サックス、トランペットとトロンボーンの5ピースのジャズバンドをバックにガーシュインハービー・ハンコックのスタンダードに自作のオールドタイミー・ジャズなナンバーを気持ちよく歌うジーンの歌声が古き良きジャズ全盛期を想起させる素敵な作品なんですが、このバンドのベースを弾いてたのがNY在住の日本人ジャズ・ベーシスト、中村恭士(やすし)さんだったというのを今回調べて発見!(この記事のトップの写真がその中村さんです)このシリーズの最初の記事で日本人ノミニーを紹介したところに追加しなくてはいけませんが、これは是非取って欲しい!と思ったところが実はこの部門、かなり強力な作品が他にもあり、泣く泣く穴✗にしています。この作品の紹介動画にチラッと中村さんも写ってますのでチェックして下さい(最後のマーカスの喜びようが微笑ましいですがw)

その強力な作品の一つが、皆さんご存知のマンハッタン・トランスファーが、その活動50周年を記念して、ドイツはケルン拠点に活動するポピュラー交響楽団、WDRファンクハウスオーケスターをバックに、自分達のこれまでのカタログから定番、レア曲を取り混ぜて新たなアレンジと録音で振り返っている、その名も『Fifty』。2014年惜しくも他界した創立・中心メンバーだったティム・ハウザーの後任として前作から参加しているトライスト・カーレス以外はジャニス、アラン、シェリルのお馴染み面々がいい感じで年取った様子で移ってるジャケもいい感じ。選曲も結構気合い入れてて、前作で取り上げていた何とXTCの名盤『Skylarking』(1986)からの「The Man Who Sailed Around His Soul」やビーチ・ボーイズの「God Only Knows」などをオーケストラ・アレンジで聴かせたりする一方、ガーシュインらのスタンダード、そして「Twilight Zone/Twighlight Tone」「Chanson D’Amour」といったマントラお馴染みのナンバーまでかなり楽しく、強力な作品ですね、これは。80年代から90年代前半にかけてポップ部門の受賞も含めて8部門受賞したマントラのこと、今回は何と23年ぶりのノミネートになりますが、キャリアの区切りとなっているこの作品に対する評価は高そうですので、本命◎を付けます。

対抗○は、2014年のセカンド・アルバム『WomanChild』がダウンビート誌の年間ジャズ・アルバムを獲得してブレイク、2016年第58回には3作目『For One To Love』で見事この部門を受賞後60回、61回とこの部門に強い、ハイチ人の父とフランス人の母をもつ女性黒人ジャズ・ボーカリスト、セシール・マクローリン・サルヴァントのちょっと前衛的でエッジの立ったアルバム『Ghost Song』に付けておきます。何せこのアルバムの冒頭がいきなりケイト・ブッシュの「嵐が丘」のジャズ・アレンジというだけでそのエッジ度が察せられるというもの。一聴の価値はあると思いますのでご興味のある方は是非。

29.最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム部門

✗ New Standards Vol. 1 - Terri Lyne Carrington, Kris Davis, Linda May Han Oh, Nicholas Payton & Matthew Stevens
  Live In Italy - Peter Erskine Trio
○ LongGone - Joshua Redman, Brad Mehldau, Christian McBride & Brian Blade
◎ Live At Detroit Jazz Festival - Wayne Shorter, Terri Lyne Carrington, Leo Genovese & Esperanza Spalding

  Parallel Motion - Yellowjackets

この部門は毎年必ず2〜3組は「ああ、絶対このどれかが取るよなあ」と思わせる、若手ベテランを問わない実力派の作品がノミネートされているので、予想は比較的容易な部門なんですが、昨年は絶対一昨年他界した時に受賞したチック・コリアが取ると思ったんですが、何と超ベテランベーシストのロン・カーターがこちらもベテランドラマーのジャック・ディジョネット、キューバ人のアフロ・ジャズ・ピアニストのゴンザロ・ルバルカバーとトリオを組んだ作品が受賞して、うーむやっぱりロン・カーターほどの大御所はしっかり取って行くんだなあ、と思った次第。で今年ですが、そういう意味でノミニーを見て一際光っているのが、大ベテランのウェイン・ショーターと、もう今回何度も名前の出てる女性ジャズ・ドラマーのテリ・リン・キャリントン、今のアメリカジャズ界の超サラブレッド、女性ベーシストのエスペランザ・スポールディング、そしてアルゼンチン出身のピアニスト、リオ・ジェノヴェーゼという強力なカルテットによる、2017年のデトロイト・ジャズ・フェスティバルのライブ録音盤。ショーター作で、各人の抑制された演奏がお互いのグルーヴを探り合うように聞こえる中エスペランザのボーカルも聴けるオープニングの「Someplace Called “Where”」から始まり、21分に及ぶショーターエスペランザの共作で前述のインプロヴァイズド・ジャズ・ソロ部門にもノミネートの「Endangered Species」、エスペランザが達者にポルトガル後で歌う、ミルトン・ナシメントの『Encontros e Despedidas』など聴き所満載のこの盤は本命◎に値すると思います。

ほとんど同じレベルの豪華なメンツによるカルテット、サックスのジョシュア・レッドマン、天才ピアニストのブラッド・メルドー、亡きチック・コリアとのトリオによるトリロジー・シリーズで2作連続この部門を受賞している、ベースのクリスチャン・マクブライドとドラムスのブライアン・ブレイドによる『LongGone』もかなり強力な作品。さっきのライブ盤ほど「寄らば斬るぞ」的なヒリヒリしたテンションはなく、よりオーガニックでレイドバックな演奏が楽しめるこの盤もかなり素敵なので対抗○を付けます。

穴✗は、さっきのウェイン・ショーターのライブ盤でもドラムス叩いてたテリ・リン・キャリントンがリーダーを務めていろんなミュージシャンと共演して女性ミュージシャンによる作品のみを集めた『New Standard Vol. 1』に。

30.最優秀ラージ・ジャズ・アンサンブル部門

✗ Bird Lives - John Beasley, Magnus Lindgren & SWR Big Band
◎ Remembering Bob Freedman - Ron Carter & Jazzaar Festival Big Band Directed by Christian Jacob

  Generation Gap Jazz Orchestra - Steven Feifke, Bijon Watson, Generation Gap Jazz Orchestra
○ Center Stage - Steve Gadd, Eddie Gomez, Ronnie Cuber & WDR Big Band Conducted by Michael Abene
  Architecture Of Storms - Remy Le Boeuf’s Assemply Of Shadows

この辺りの部門になってくると、元々ジャズ門外漢の自分についてはなかなかちゃんとした評価に基づく予想というのが難しいのですが、ここ10年の受賞作を見ると、先ほど名前の出て来たクリスチャン・マクブライドのビッグ・バンドが、去年も含めて3度受賞、現代ビッグ・バンド・ジャズの女王と言われるマリア・シュナイダーのオーケストラが2回受賞しているのが目立つ程度。そして今回そのどちらもいないので、昨年インストゥルメンタル・アルバム部門を征した大御所ロン・カーターが、ビッグ・バンドのアレンジャーとして有名らしい、ボブ・フリードマンという方のトリビュートとして、モンクの「Straight No Chaser」や「Stompin’ At The Savoy」などをビッグ・バンドとやったライブ盤に敬意を表して本命◎を進呈します。

対抗○は、皆さんご存知スティーヴ・ガッドが、ビル・エヴァンスのベーシストとして有名なエディ・ゴメス、サックスのロニー・キューバーとのトリオでこちらもドイツはケルンを拠点に活動するWDRビッグ・バンドをバックに、スティーヴィー・ワンダーディラン、オーティス・レディングなどのポピュラー楽曲を楽しそうにやってる『Cener Stage』に。これ結構いい感じです。

そして穴✗はバードことチャーリー・パーカーのスタンダード「Cherokee / Koko」などバードの楽曲を中心に、ガーシュインの「Summertime」なども取り混ぜた楽曲をこちらもドイツのシュトットガルト拠点のビッグ・バンド、SWRビッグ・バンドをバックに聴かせてくれる、キーボードのジョン・ビーズリーのリーダーアルバムに付けておきましょう。

31.最優秀ラテン・ジャズ・アルバム部門

◎ Fandango At The Wall In New York - Arturo O’Farrill & The Afro Latin Jazz Orchestra Featuring The Congra Patria Son Jarocho Collective
  Crisálida - Danilo Pérez Featuring The Global Messengers
○ If You Will - Flora Purim
✗ Rhythm & Soul - Arturo Sandoval

  Música De Las Américas - Miguel Zenón

去年もこの部門の予想で書いたけど、ラテン・ジャズとなってくると益々自分の知見がほとんどないので、基本は過去の実績などを参考にして予想するしかないのですが、そのアプローチで行くと、今回本命◎候補として有力そうなのが、ここ3年連続ノミネートされていて、一昨年の63回では見事受賞を果たしてる、キューバン・ジャズの大御所、アーテュロ・オファリルアフロ・ジャズ・ラテン・オーケストラ。このノミネート作の情報が少なくてはっきりしないのですが、どうも、2018年トランプ政権のまっただ中でリリースした『Fandango At The Wall: A Soundtrack For The United States, Mexico and Beyond』という33曲入りの対策からの曲をNYで演奏したライブ盤のようです。タイトルからいって、当時のトランプのメキシコとの壁の件に対するカウンター作品だったんでしょうね。今回で受賞するとこの部門4回目の受賞になるアーテュロ・オファリル御大、果たしてどうでしょうか。

そして何とブラジリアン・ジャズの女王、フローラ・プリムがノミネートされてるではないですか!日本でも人気の高いフローラ・プリムというと、70年代初頭のリターン・トゥ・フォーエバーでの客演や、夫のラテン・ジャズ・パーカッショニスト、アイアート・モレーラとの活動が有名ですが、グラミーでは過去2回ノミネートで未受賞、しかも1987年第29回以降今回が初のノミネートなのでほぼ40年ぶりのノミネートということになります。今回は15年以上ぶりに彼女の80歳の誕生日を祝って自らのプロデュースで制作された『If You Will』でノミネートされてますが、聴くととても80歳とは思えない伸びやかで艶のある、しかも時折ソウルフルなパワーも感じさせる歌声が素晴らしく、ジャズ・シーンでも高い評価を受けているようです。やってる曲はジョージ・デューク作のタイトル曲や、1974年の同名ライブアルバムで演奏した、リターン・トゥ・フォーエバーの時の曲(チック・コリア作)を再演している「500 Miles High」など、いわゆるラテン・ジャズというよりは彼女自身の従来からのスタイルでもあるフュージョン系のナンバーが多いのですが、ここは対抗○を付けざるを得ないでしょう!

そして最後に穴✗はこの部門で過去3回受賞、ラージ・ジャズ・アンサンブル部門でも2013年第55回に受賞経験のある、キューバ・ジャズ・トランペットの第一人者、アーテュロ・サンドヴァルの『Rhythm & Soul』に。

さあ、この週末頑張ってもう少し追い込みの予想をアップしますね。次はゴスペル/コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック部門の予想行きます。お楽しみに。


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