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【恒例洋楽新年企画#3】DJ Boonzzyの第64回グラミー賞大予想#3~ロック・オルタナ部門

さて、前回お預けにしたロック・オルタナティブ部門の予想、ちょっと間が開いてしまったのでどんどんいきます。

8.最優秀ロック・パフォーマンス部門

  Shot In The Dark - AC/DC
○ Know You Better (Live From Capitol Studio A) - Black Pumas
◎ Nothing Compares 2 U - Chris Cornell

  Ohms - Deftones
× Making A Fire - Foo Fighters(受賞)

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ロック部門の話になると(いや、主要部門のところでももう一回持ち出すと思うけど)やっぱり言わずにいられないのは「なぜ今回ブルース・スプリングスティーンの『Letter To You』がまったくどの部門にもノミネートされなかったのか!」ということ。しかも主要部門に至ってはノミネート数が10まで増やされたのに、ノミネート発表に先立つ9月11日にはNYで開催されたあの9-11の20周年イベントでそのアルバムから「I'll See You In My Dreams」を感動的に演奏したのに、だ。去年の11月末にここnote.comにアップした、グラミー賞主要部門ノミネート予想でも、自信を持って最優秀アルバムとソング・オブ・ジ・イヤーに予想したのに、まさか主要部門だけでなく一切ノミネートされないとは思わなかったメタクリティックでも88点付くなど、シーンの評価も最高に近かったのに、その前の『Wester Stars』に続いて今回もガン無視って、いったいアカデミーのメンバーはどうしてしまったんだろう。今回はノミネーション・コミッティーの恣意的操作もなかっただろうから、純粋にアカデミー・メンバーの投票が集まらなかったということなんだろうけど、ほんとに全く解せないホント、ブラック・プーマスとかノミネートするんだったらボスノミネートしてくれよ

と、愚痴ばかり行ってもしょうがないので予想行きますね。そんなモヤモヤした思いで見たこのノミニー・リストで真っ先に目に飛び込んで来たのがクリス・コーネルの名前。ポップ部門のノラ・ジョーンズのところでも名前を出したけど、ご存知90年代グランジをニルヴァーナらと引っ張ったサウンドガーデンのリーダーとして、そして解散後はレイジのメンバー達と組んだオーディオスレイヴのリード・ボーカルとして、今アラフォーくらいのロックファンには圧倒的な存在だったクリス・コーネル。2017年5月自らの命を断ってしまったクリスが生前残した音源をまとめて昨年発表されたカバー集『No One Sings Like You Anymore, Vol. 1』(このアルバム・タイトルは、ノラジョンがカバーしていたサウンドガーデンの「Black Hole Sun」の一節)からの、アコギでのプリンスのカバー(シニード・オコナーのバージョンが全米1位になったなあ)「Nothiing Compares 2 U」がノミネートされてるのを見た瞬間、◎本命はこれしかない!と思ったね。親友だった彼の後を追うようにわずか2ヶ月後に自殺した、リンキン・パークのボーカル、チェスター・ベニントンと今頃天国でジャムってるだろうクリス、2019年第61回のこの部門でも、死後にリリースされた未発表曲「When Bad Does Good」が見事受賞してるクリス、死後2回めの受賞となるか。

○対抗は、何でこんな企画もののライブ盤からの曲がノミネートされてるのかホント意味不明のブラック・プーマス、昨年はアメリカーナ部門にいたのに今年はこの部門と、グラミー・ダーリンぶりをいかんなく発揮してるので可能性はあるなあということでこいつらに付けますわ。ホント取って欲しくないけど。そして残る✗穴は、久々のカムバックで元気なところを見せてくれたAC/DCデフトーンズも捨てがたいのだけど、ここはこの部門過去受賞経験のあるフーファイに。

9.最優秀メタル・パフォーマンス部門

× Genesis - Deftones
  The Alien - Dream Theater(受賞)
○ Amazonia - Gojira
◎ Pushing The Tides - Mastodon

  The Triumph Of King Freak (A Crypt Of Preservation And Superstition) - Rob Zombie

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今回のメタル部門のノミニーを見て思ったのはここ数年と比べると何だかベテラン勢が多いなあ、ということ。特に昨年はエキセントリックの権化みたいな女性ボーカルのゴス・メタル勢が3組もノミネートされるという、ダイバーシティとニューウェイブぶりでぶっ飛んでいたのに、蓋を開けてみたらそれらに比べるとへなちょこに聞こえてしまった、アイスT率いる90年代からやってます的なボディ・カウントが取っちゃってこれっていいのかなあ、と思ったのを覚えてます。

そういう意味でいうと今年も2000年以降のバンドながらいずれも実力派のアトランタのバンド、マストドンとフレンチ・メタルの雄、その名もゴジラの2組がニューパワー勢なら、90年代から頑張ってるベテランのデフトーンズ、ドリーム・シアターそしてまだいたかこいつ!って感じのロブ・ゾンビ―の3組はオールド・スクール軍団って感じ。昨年はオールドスクール軍団がこの部門制してるけど、いずれもメタリカ・チルドレンという感じの今回のニューパワー勢はいずれも実力派なんで、今年はこのどちらかが取るでしょう。個人的にはよりメタリカ・フォロワーっぽい感じが強いマストドンが、この部門2018年第60回でも去年受賞したボディ・カウントを抑えてガッツリ受賞してるので、◎本命はマストドン、そして○対抗はこの曲を含むアルバム『Fortitude』がBB200で12位と過去最高を記録したゴジラかな。

✗穴はどうしようかな、と思ったんですが、今更ドリーム・シアターでもないだろうし、ましてやロブ・ゾンビーとかもう過去の遺物としか思えないので、ここはロック・アルバム部門にもノミネートされているデフトーンズに付けておきます。

10.最優秀ロック・ソング部門(作者に与えられる賞)

  All My Favorite Song - Weezer (Rivers Cuomo, Ashley Gorley, Ben Johnson & Ilsey Juber)
  The Bandit - Kings Of Leon (Caleb Followill, Jared Followill, Matthew Followill & Nathan Followill)
◎ Distance - Mammonth WVH (Wolfgang Van Halen)
○ Find My Way - Paul McCartney (Paul McCartney)
× Waiting On A War - Foo Fighters (Dave Grohl, Taylor Hawkins, Rami Jaffee, Nate Mendel, Chris Shiflett & Pat Smear)(受賞)

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さてこのロック・ソング部門、毎年そういう傾向はあるんですが、今年はロック・パフォーマンス部門とのダブりがフーファイのみで、あとはサー・ポール以外はここ以外どこにもノミネートされてないアーティストばかりというかなりのバラバラ具合ですね。じゃあ、ここはフーファイが本命◎か!というとうーん、今回のアルバムもこの曲も自分的にはちょっと過去の作品に比べてイマイチかなあ、という感じなので、付けても穴×でしょうか。

キングス・オブ・リオンも過去には2010年第52回では「Use Somebody」でレコード・オブ・ジ・イヤーとロック・パフォーマンス部門を見事受賞し、以来大体毎回作品が出ればロック部門ではノミネートされるんですが、今回の作品はちょっと地味目。ということで自分が本命◎を付けたのは、何とこの部門のみのノミネート、マンモスWVHの「Distance」です!え?誰それ?って感じの方多いかもしれませんが、これ、2020年10月に惜しくも65歳の若さで他界したあの!エディ・ヴァン・ヘイレンの息子さん、ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン君のソロプロジェクトだ、って言うと「うーんなるほど」と言ってくれる方も多いのでは。しかもMV見るとわかりますが、この曲、彼のデビューアルバム『Mammoth WVH』の最後を飾る、父エディに想いを馳せた内容の、なかなかエモーショナルに盛り上がる、泣かせる曲なんですよねー。この曲がここにノミネートされた(=アカデミーメンバーの票を集めた)となれば、もうこの中ではこれが来なきゃ!って感じですよねえ。

それに唯一対抗できそうなのが、次のロック・アルバム部門でもノミネートの、サー・ポールの「Find My Way」。こちらはこちらでサー・ポールが全ての楽器を演奏しながらマルチチャネルで歌うMVがなかなかグッとくる楽曲。このアルバム『McCartney III』とそれを今のアーティスト達とリミックスした『McCartney III Reimagined』(リミックス・バージョンではこの曲、ベックと共演してました)を連チャンでリリースしたサー・ポールのエネルギーにはやはり脱帽なので、対抗○を進呈します。

11.最優秀ロック・アルバム部門

  Power Up - AC/DC
  Capitol Cuts - Live From Studio A - Black Pumas
◎ No One Sings Like You Anymore Vol. 1 - Chris Cornell
× Medicine At Midnight - Foo Fighters(受賞)
○ McCartney III - Paul McCartney

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そしてそのロック・アルバム部門。この部門はここ数年どちらかというとベテラン・アーティストよりも若手というか90年代以降のアーティストが受賞していく(昨年なんか90年代以前のアーティストはノミネートゼロでした)傾向があるのですが、いやあ今年は久々にオールドタイマーが並びましたね(笑)。一番若手っていうと何やら最近グラミー・アカデミーご贔屓の様子のブラック・プーマスだけど、スタジオ・ライブ盤で他の大御所たちを差し置いて受賞ってのはさすがにないでしょ、ってことでまず彼らはアウト。

6年ぶりの新作でその健在さを見せつけてくれたAC/DCにも頑張って欲しいところなんですが、この顔ぶれでやはり光ってるのは、さっき詳しくお話した、クリス・コーネルの見事なカバー・アルバム『No One Sings Like You Anymore Vol. 1』。本命◎はもうこれしかないでしょう、って感じです。パフォーマンス部門でノミネートされた「Nothing Compares 2 U」(ちなみにレコードにはシニード・オコナーの名前はなく、プリンス直下のザ・ファミリーのバージョンのカバー、ってことになってます)もいいのだけど、ガンズの「Patience」とか、おやっと思わせるアップビートなジョン・レノンの「Watching The Wheels」のカバー、そして何と言ってもラストを飾る、火を噴くような「Stay With Me」(ジャニスや『The Rose』でのベット・ミドラーのカバーが有名だけど、レコードにはオリジナルのR&Bシンガー、ロレイン・エリソンのカバーとの表示)はもうただただ圧倒的で、クリスのシンガーとしての素晴らしさが本当にギッシリ詰まってアルバムなんで、是非ご一聴を。

そして対抗○は、ソング部門でも触れたようにこのノミネートラインアップの中でも確かな存在感を放っているサー・ポールのアルバムに。そして穴×はここでもフーファイのアルバムに付けておきます。

12.最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム部門

  Shore - Fleet Foxes
  If I Can't Have Love, I Want Power - Halsey
× Jubilee - Japanese Breakfast
◎ Collapsed In Sunbeams - Arlo Parks
○ Daddy's Home - St. Vincent(受賞)

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さて、ロック・アルバム部門とは好対照で、このオルタナ部門では、フレッシュな顔ぶれが勢揃い。去年もフィービー・ブリッジャーズテーム・インパラらのいい作品がノミネートされてたけど、まあ去年のこの部門はフィオナ・アップルの一択だったんで残念でした。そこへ行くとダントツの作品はないけど、今年は正直どの作品が取ってもおかしくない、そんなソリッドな作品が並んでますグラミーにはとかく冷たくされてるホールジーも、身体を張って、ナイン・インチ・ネイルズの二人と作った意欲作がちゃんとノミネートされているのには「ああよかったな」と思ったもんです。

そんな充実した顔ぶれなんで予想はなかなか難しいんですが、ここは個人的に自分の2021年年間アルバムランキングでも1位にした、UKの黒い女性詩人、アーロ・パークスの素晴らしいアルバムに本命◎を付けさせて下さい。彼女の出自の解説と、アルバムの素晴らしさは年末にアップしたDJ Boonzzyの年間アルバムランキング記事を参照して頂きたいのですが、何といっても彼女の魅力はその詩情溢れるリリックを、コンテンポラリーながらアーシーで国籍不明・ジャンルレスなサウンドに乗せてくれてるところ。今回新人賞部門にもノミネートされるなど、やはり注目度大なので、この部門ではガッツリ取ってほしいなあ、と思うのです。

それに対抗するのは、やはり同じく新人賞部門にノミネートのジャパニーズ・ブレックファストことミッシェル・ゾーナーのアップビートでインディなポップ・アルバムかなあ、とも思ったのですが、この部門では2015年第57回にも受賞している、ちょっと先輩のセント・ヴィンセントことアン・クラークが、金融犯罪の疑いで収監されていた父親の帰還をイメージに、まさしくオルタナ・ロック的アプローチでR&Bのテイストを載せた楽曲を詰め込んだ『Daddy's Home』の方がちょっとだけ上かなあ、と思ったので、ここはセント・ヴィンセントが対抗○、ジャパニーズ・ブレックファストは穴×とさせて下さい。あ、ちなみにフリート・フォクシズの『Shore』も素晴らしいインディー・フォーク・アルバムですよ。

ということでロック・オルタナ部門は終わり。次の予想はR&B部門に参ります。こちらも数日以内にアップしますのでお楽しみに。

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