今週の全米No.1アルバム事情 #38 - 2020/8/1付

東京だけでなく、大阪・愛知も一日の新規感染者数が100人を超えてきた今週、それでも街に出るとソーシャルディスタンスも取らず、密でも平気な人が多いのは正直民度の問題か、と暗澹となります。それ以上に暗澹となるのは国や都の無策ぶりが変わらないことですが。追加の布マスク配布の話は久しぶりに顎が落ちました。

さて今週末のBillboard 200の1位。先週の予想ではディキシー・チックス改めザ・チックスの新譜と、ポップ・スモークのデラックス・バージョンによる1位返り咲きの対決か、と予想したのですが、その２つを大きく上回って今週もジュースWRLDの遺作『Legends Never Die』が堂々の162,000ポイント（実売23,000枚）で2週目の1位を死守。これ、ジュースは先週比でポイント67％減で、2位のポップ・スモークは先週比でポイント26％アップ（138,000ポイント）にもかかわらずジュースが上を行ったということで、恐れ入りましたって感じです。

そしてもう一つの話題版、ザ・チックスの『Gaslighter』はこの2枚に遥かに及ばない84,000ポイント（実売71,000枚、今週のセールス1位）で初登場3位にとどまりました。ザ・チックスのアルバムは確かに話題ではあったものの、ジュースとポップという今のヒップホップ・シーンの最大のスター達（いずれも故人ですが涙）のストリーミング・パワーには及ばなかったということでしょう。あのグラミーを席巻した名盤『Taking The Long Way』(2006年初登場1位）から14年、音楽シーンも大きく変わって来ているのでまあ、やむを得ない部分もありますが。

ただ収録されている楽曲は、往年の若々しかった頃のエネルギーそのままに、力強さを感じるものですし、カントリーのステレオタイプに収まらないのも当時のまま。プロデュースにはテイラーのポップ界での地位確立に貢献したジャック・アントノフと、若手の実力派ポップ・ソングメイカー、テディ・ガイガーを配してアルバム全体の出来も良さそう。前評判に違わず、シーンの評価も高いようです。おそらく次回のグラミーの主要賞戦線にはしっかり参戦してきそう。おっとでも来週1位確実のテイラーの新譜もかなりグラミーでは強そうだけど。

今週のトップ10初登場はこのザ・チックスだけですが、9曲の新曲追加のデラックス・バージョンのリリースで先週の43位から一気に6位に再上昇してきたのは、自分も最近イチオシのR&Bシンガーソングライター、ジェネ・アイコの『Chilombo』(50,000ポイント）。今回のデラックス・バージョンのジャケは、オリジナルのナチュラルな感じから一転、妖艶な夜のイメージで、これも自分お気に入りのケラーニがオリジナル・バージョンではH.E.R.とコラボしていた「B.S.」のリミックス・バージョンでフィーチャーされてたり、ウィズ・カリファ、クリス・ブラウンにスヌープ・ドッグといった豪華なゲストも満載で、これはやはりデラックス・バージョン買わなきゃ、って感じです。惜しむらくはヴァイナルはまだ出る様子がなく、今回のデラックス追加曲はデジタル配信のみの様子。うーんフルバージョンをヴァイナルで出してほしい！

ということで今週のトップ10、改めておさらいです。（順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト）。

1 (1) (2) Legends Never Die - Juice WRLD
*2 (2) (3) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
*3 (-) (1) Gaslighter - The Chicks
4 (3) (252) Hamilton: An American Musical - Original Broadway Cast ▲6
5 (4) (21) My Turn - Lil Baby ▲
*6 (43) (20) Chilombo - Jhene Aiko ●
7 (5) (46) Hollywood’s Bleeding - Post Malone
8 (6) (14) Blame It On Baby - DaBaby
*9 (7) (32) Fine Line - Harry Styles ▲
10 (9) (18) After Hours - The Weeknd

さて来週の1位ですが、さっきもちょっとコメントした通り、対象リリース期間の7/24-30の初日に突然テイラーがドロップした新作『Folklore』、もうこれしかないでしょう。発売3日で既に今年一番だった『Legends Never Die』初週ポイントの479,000を超えてるなんてビルボードのレポートももう出てますし。後は前回の『Lover』の867,000ポイントを抜くか、というのが興味の的になりそうです。ではまた来週。