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今週の全米No.1アルバム事情 #78 - 2021/5/8付

基本的にいい天気が続いたゴールデン・ウィーク、皆さんはいかが過ごされたでしょうか?他県への移動自粛の影響か、都内は結構人手が多いようで、その関係もあって連休前よりも一日の新規感染者数が増えたりして(何度も言いますがこれも数ではなく、率をトラックしないと意味がなく、単に新規感染者数だけ報道しているメディアには大きな疑問を感じますが)多くの飲食業の皆さんに苦悩を強いている緊急事態宣言の意味があるのか、考えてしまいますね。しかもまた延長。本気でオリンピック、などと言ってるのであればいい加減本気でPCR検査を徹底して感染源を特定してピンポイントの対策を打たないと本当に経済がやられる....

さてこの全米No.1アルバム事情のポッドキャスト版、今週も先ほど配信しましたので、上記のリンクからお楽しみ下さい。この記事に載ってないグラミー賞関連の最新ニュースもお届けしてます!(5/8追記)

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さて今週末のBillboard 200チャート、5/8付のチャートで1位を初登場で獲得したのは、メンフィスのラッパー、マニーバッグ・ヨの『A Gangsta’s Pain』。110,000ポイント(実売4,000枚)を獲得して、デビュー以来4作目にして初めての全米ナンバーワンアルバムを達成してます。先週の予想でも触れていたように、前作『Time Served』(2020)が3位、前々作『43va Heartless』(2019)が4位と、ここんとこ毎年リリースするアルバムが着実に順位を上げてきただけに、今回の1位でこれまで積み上げて来たファンからの支持が実を結んだ、ということでしょう。

彼のラップ・スタイルは、いわばメインストリーム・トラップであり、リリックの内容も古典的なヒップホップのテーマである「オレはこんなに凄いんだ」的なものが多いので、曲の内容というよりも、ファンにとっては彼の声の良さとかフロウの良さとかがアピールしてる、そんなタイプのラッパーなんでしょうね。ヒット的には前作からの「Said Sum」(2020年最高位17位)で一段フェーズを上げてきたタイミングで、今回もフューチャーとコラボしたシングル「Hard For The Next」(今年最高位49位)や2月にトップ40入りした「Time Today」(最高位37位)、その他先々週Hot 100の1位に「Rapstar」を初登場させたポロG、リル・ダーク、ジェネ・アイコ、ファレル・ウィリアムス等との共演をちりばめたこのアルバムはまあ売れ線なわけで。この間まで読んでいた本(慶応の大和田俊之先生による『アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』)の、メインストリームヒップホップが往々にして白人ティーンエイジャーに受けているのでは、という考察を思い出して、それは未だにこういうブリンブリンとエロいテーマをカマしている今のメインストリーム・トラップにも言えるのではないか、とちょっと思いました(上に挙げたPVはそういうテーマなので、その手のはいいよ、という方には視聴をお勧めしませんw)。

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先週1位を三つ巴でマニーバッグ・ヨと争うのでは、とコメントしてたヤング・サグ他ご一行のコンピ『Slime Language 2』は、デラックス・エディションのリリースにもかかわらずポイント46%ダウンで1位から2位にあえなく下降してました。

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そしてアルバム3部作の3枚目『Soul』がリリースされて、先週5位に初登場してた『Heart』と合体して今週1位を狙えるのでは、と言ってたエリック・チャーチはどうやら『Heart』と『Soul』は別アルバム扱いというビルボード誌の方針らしく、『Soul』が単独で今週4位に初登場したに止まってます(ちなみに『Heart』は今週68位にウルトラダウンw)。53,000ポイント(実売42,000枚で、今週のアルバム売上1位ですね)で初登場したこの『Soul』で、2017年のフューチャー以来、2週連続でアルバムをトップ10に初登場させた初めてのアーティストになってます。

こちらは今ヒット中のシングル「Hell Of A View」(今週41位→28位上昇中)が収録されていることもあり、先週の『Heart』よりやや高めの初登場になってますが、それだけでなく全体的にやや抑えた感じの楽曲が多いようで、それが昨年から今年にかけてコロナ・ロックダウンを経験してきた人々の気持ちに響いてる部分もあるのかな、とも思えます。個人的にはアルバムラストに収録されているアコギの弾き語り曲、その名も「Lynyrd Skynyrd Jones」がぐっと来ましたね。これは70年代にレーナードの大ファンの母親がレーナードのタラハッシーでのライブで知り合ったある男との間に生まれた息子、レーナード・スキナード・ジョーンズのお話。ただ、セカンド・ヴァースで彼が実は白黒のバイレイシャルであることが明らかにされ、母親が亡くなった後に彼の父親の素性が明らかにされる、という歌で、レーナードの名作セカンド・アルバム『Second Helping』(1974年最高位12位)収録のある曲へのオマージュになっている、という作りになってます。さすが「Springsteen」をヒットさせたエリック・チャーチのストーリー・テラーとしての面目躍如な曲ではないでしょうか。70年代のサザン・ロック・ファンの方には是非一聴をお勧めします。

今週のトップ10で他に特筆すべきは、またしても『The Highlights』と『After Hours』の間で、例の2曲のポイントが行ったり来たりする関係でこの2枚がヤジロベエのように順位を上下する現象が今週も勃発。少しだけアルバム売り上げが多かった『After Hours』に2曲のポイントが移って、先週比ポイント711%増で4/3付のチャートで7位にいたのを最後に、200位圏外に消えていた『After Hours』が今週7位に再登場してます(39,000ポイント、実売1,500枚)。一方1,000枚しか売れずに2曲のポイントが抜けた『The Highlights』は今週8位→22位にダウン。これ、いい加減何とかなりませんかねえ

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今週のトップ10圏外の様子は36位にプエルトリコ出身のラッパーで、ラテン界では中堅のスター、マイク・タワーズの3作目でメジャー・レーベル(ワーナー・ラティーナ)第1弾『Like Mike』、39位にはリル・ヤティのミックステープ『Michigan Boy Boat』(最近彼はこのボート・シリーズで攻めてるみたいですw)、52位にはノース・キャロライナ州チャペルヒル出身のエレクトロ・ハウスDJ、ポーター・ロビンソンの2枚目『Nurture』、83位にエリック・チャーチ3部作の真ん中『』といったあたりが初登場してますが、今週も地味ですねえ。ということで今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

*1 (-) (1) A Gangsta’s Pain - Moneybagg Yo
2 (1) (2) Young Stoner Life: Slime Language 2 _ Young Thug & Various Artists
3 (3) (16) Dangerous: The Double Album - Morgan Wallen
*4 (-) (1) Soul - Eric Church
5 (4) (6) Justice ● - Justin Bieber
6 (6) (5) SoulFly - Rod Wave
*7 (RE) (54) After Hours ▲2 - The Weeknd
8 (9) (56) Future Nostalgia ▲ - Dua Lipa
9 (2) (3) Fearless (Taylor’s Version) - Taylor Swift
10 (10) (43) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke

さて来週の1位予想です。来週のチャートの集計対象期間は4/30-5/6なんですが、この初日にリリースされてるアルバムの中で来週1位の可能性がありそうなのが、カントリーのトーマス・レットと、ヒップホップのDJキャレドトーマス・レットここ2作連続でBillboard 200の1位をゲットしてる一方、DJキャレドは例の豪華ゲスト満載共演で自分はゲストの名前を連呼するだけ、という手抜きのスタイルでここ3作が1位、1位、2位と来てます個人的にはDJキャレドあっち行っていいよ(笑)と思ってるので、ここはトーマス・レットに1位ガッツリ取って欲しいところですが、どうなりますか。ではまた来週。

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