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今週の全米アルバムチャート事情 #213- 2023/12/9付

12月になったので2023年の自分のベストアルバムブログのために先週くらいから今年のアルバムの聴き直しを始めてるんだけどこれが結構難儀な作業になってる。普通の年なら突貫でこの作業やるんだけど、今年は自分の病院のこととかいろいろ重要な野暮用も多くてなかなかまとまった時間が使えず、作業の進捗が遅い…できるだけ早く片付けて、次の作業であるグラミー賞の各部門予想ブログに移りたいんだけどなぁ。まあ頑張りますので期待してお待ち下さい。それより今朝、自分のDJ活動で大変お世話になった方の突然の訃報が入ってきて驚愕。朝一番で弔問でお邪魔しましたが、未だに信じられない気分です。まだまだお若かったY.Y.さんのご冥福をただただ心からお祈りするばかりです。

"1989 (Taylor's Version)" by Taylor Swift

さてサンクスギビングのブラック・フライデーも終わって、大型新譜のドロップも少なくなってくる時期になってきましたが、そんな状況も反映して先週の予想通り今週の全米アルバムチャート、12月9日付のBillboard 200の1位は、ポイントを減らすどころかブラック・フライデーの恩恵もあって対先週比3%アップの141,000ポイント(うち実売はHits Daily Doubleによると83,979枚)で、テイラーの『1989 (Taylor’s Version)』が2週間ぶりに通算3週目の首位に返り咲いてますテイラーの「過去自作品再録プロジェクト」は今回で『Fearless』『Red』『Speak Now』に続いて4作目ですがすべてアルバムチャートトップ、しかも今回の3週1位はその中でも最長の1位になってます。

1989』は自分としても個人的に一番聴いたテイラーのアルバムだったので(ライアン・アダムスの丸々カバー・アルバムも買いましたw)今回は自分も買うかな、ということでヴァイナルを購入しましたが、聴いてみてオリジナルの『1989』と結構音のイメージやアレンジが異なってるのにちょっと驚きましたね。「Blank Space」や「Shake It Off」とかはかなり別物に聞こえてよりエレクトロ寄りで、ビートを強調したアレンジが多くなってるというか。実際トラック自体は大きく変わってないということなので、自分の思い込みなのかもしれませんが。ところで今週は、これもブラック・フライデーの恩恵だと思いますが、トップ10にこのアルバムを含めてテイラーのアルバムが5枚チャートイン(詳細は下記のトップ10まとめをご参照)。2016/5/14付チャートで、没後直後にプリンスが5枚同時にチャートインさせた記録がありますが(『The Very Best Of Prince』2位、『Purple Rain』サントラ3位、『The Hits/The B-Sides』4位、『Ultimate Prince』6位、『1999』7位)、生存しているアーティストでは1963年8月以来のBillboard 200の歴史で最多記録だそうです。どこまで続くテイラーパワー。

"Christmas" by Michael Bublé

ということで今週のトップ10には初登場はゼロで、まあテイラーが5枚独占ということでテイラー一色のトップ10なんですが、そんな中、初登場ではありませんが圏外24位から9位に急上昇しているのは、時節柄のクリスマス・アルバム、マイケル・ブブレの『Christmas』(46,000ポイント)。毎度この時期になると、他のクリスマス・アルバム共々上位に戻ってくるこのアルバム(2011年初チャートイン、5週1位)前のシーズンも今年の1/7付チャートで3位まで上昇しています。この時期はナット・キング・コールマライア、フィル・スペクターチャーリー・ブラウン・クリスマスなど、他のクリスマス・アルバムもトップ10に登場してくるはずですが、今週はテイラー独占で何とかこのアルバムがトップ10に辿り着いたような感じ。来週はもう少しトップ10にクリスマス・アルバムが増えるでしょう。そしてマイケル・ブブレのこのアルバム、今年はどこまで上昇するか

"Blockbusta" by Busta Rhymes

一方圏外11位以下100位までの初登場は今週わずか1枚という状況ですが、その1枚は、42位に入ってきた、バスタ・ライムスの3年ぶりの新作になる『Blockbusta』。しかしバスタの久しぶりの新作なのにこの順位は低い!1996年の鮮烈なデビュー作『The Coming』(6位)以来ここまでアルバム10作のほとんどがトップ10入りしていて、直近の『Extinction Level Event 2: The Wrath Of God』(2020)も7位だったことを考えると大きなダウンになってます。

内容的にはNYコネクションの盟友、スウィズ・ビーツティンバランドファレルの両巨頭を始め、実力派のサウンドメイカーをバックに、クウェイヴォヤング・サグ(現在服役&組織犯罪法違反の門で訴訟中w)、コイ・リレイ、ダベイビー、バーナ・ボーイ、クリス・ブラウン、コダック・ブラックと豪華すぎるほど豪華な客演陣を従えたかなり「派手な造り」ですが、音楽メディアの評価はあまりパッとしないようです。やれ各ゲストとのコラボ感が希薄で、別にレコーディングして後でスタジオで切り貼りしただけじゃないか、など結構あんまりなことも言われてるみたいで(笑)。90年代の彼の快進撃にシビれていた自分としては、DMX没後最近ナズが孤軍奮闘しているNYラップシーンにもう一度輝いて欲しいという観点からも彼が元気にこうしてアルバムを出してくれるだけでも嬉しいのですが、まあ確かに盛り沢山過ぎなのと、バスタのワン・アンド・オンリーぶりが今回やや控えめな感じがするのは事実。もうバスタはトラップに手を出したりしなくていいから、コイ・リレイとの「Luxury Life」みたいに若い活きのいいやつとのコラボとか(このMVなんかいい線行ってると思います)、せっかくNYにはラテン・ヒップホップ・コミュニティもあるんだから、ラテンとのコラボなんかで独自性を出してくれた方が面白いんだけど、と思ってしまいました。

以上、この時期は毎年今年のベストヒットだとか、クリスマス・ソングだとかで旧譜のトラックがストリーミングで多く聴かれるこの時期の事情もあって、100位までの初登場はバスタのみ1枚と少なめでした。一方、Hot 100の方では歴史的な記録が誕生しています。ちょうど先週話題に出していた、ブレンダ・リーの「Rockin’ Around The Christmas Tree」がプロモーションの甲斐あってか、先週の8位から今週見事に1位を獲得1958年のリリースから65年、1960/12/12付での初チャートインから63年(正確には62年と362日)という、いずれも最長記録を達成してます。ここ数年毎年のようにHot 100上位に戻って来て、2019年からは毎年マライアに阻まれて通算9週間2位止まりだったこの曲が晴れて1位になったということで今年78歳のブレンダも大喜び。ちなみに最年長での1位記録は1962年に「Hello, Dolly!」で1位を取ったルイ・アームストロングが62歳で保持してましたが、こちらも一気に15歳以上更新しちゃってますね。ちなみに彼女は1960年に「I’m Sorry」と「I Want To Be Wanted」の2曲で1位を記録してますが、今回の1位はそれ以来ということで1位と1位との間の最長スパン記録(63年と61日)も今回更新してますな(従来の記録はシェールの1974年「Dark Lady」と1999年「Believe」の25年と355日)。何にせよ記録づくめでめでたい限りです。では今週のトップ10おさらい(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (2) (5) 1989 (Taylor’s Version) - Taylor Swift <141,000 pt/83,979枚*>
2 (1) (8) For All The Dogs - Drake <85,000 pt/279枚*>
*3 (6) (58) Midnights ▲2 - Taylor Swift <65,000 pt/30,516枚*>
4 (5) (39) One Thing At A Time - Morgan Wallen <63,000 pt/5,578枚*>
*5 (9) (175) Folklore - Taylor Swift <60,000 pt/33,858枚*>
*6 (8) (223) Lover ▲3 - Taylor Swift <53,000 pt/21,713枚*>
*7 (10) (51) SOS ▲3 - SZA <48,000 pt/6,137枚*>
*8 (14) (12) Guts - Olivia Rodrigo <47,000 pt/19,447枚*>
*9 (24) (113) Christmas ▲6 - Michael Buble <46,000 pt/6,509枚*>
*10 (17) (21) Speak Now (Taylor’s Version) - Taylor Swift <46,000- pt/28,037枚>

テイラーがトップ10の半分を占めてしまった今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの来週の1位予想(チャート集計対象期間:12/1-7)ですが、今週のリリースで目立つのはKポップのATEEZ(エイティーズ)くらい。ただ彼らは10万ポイント以上は厳しいので、来週も10万ポイントくらいまでしか減りそうにないテイラー4週目の首位をキープする、というのが一番ありそうなシナリオですね。ではまた来週。


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