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今週の全米アルバムチャート事情 #86- 2021/7/3付

今週の大谷翔平選手の活躍に改めて元気をもらった人も多いのではないでしょうか。残念ながらベーブ・ルース以来初のヤンキー・スタジアムでの先発+バッター出場の試合は1回持たずに降板してしまいましたが、オールスター、そしてホームラン・ダービーではまた多くのファンを元気にしてくれることでしょう。2021年も早くも折返し。コロナ感染拡大が心配なオリンピックも目の前に迫り、今年後半が日本にとって残念なことにならないことを祈るばかりです。今週もお送りするこの「全米アルバムチャート事情!」の記事、連動ポッドキャストの方は遅くなってしまいましたが、さっき土曜日の夕方に配信しましたので下記のリンクから併せてお楽しみ下さい。

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さて今週末7/3付のBillboard 200全米アルバムチャートの1位を飾ったのは、先週の予想通り、先週比わずか14%ダウンの105,000ポイント(実売枚数不明)で先週3位だったオリヴィア・ロドリゴの『Sour』が、それぞれ50%以上のポイントダウンで下降してしまった先週1位のポロGと2位のミーゴスとの相対的な地位向上で、今週通算2週目の1位に返り咲きました

Hot 100の方では今週で5週目の1位で頑張っているBTSの「Butter」に押さえられて「Good 4 U」が2位に甘んじているオリヴィアですが、UKでは「Good 4 U」が5週連続1位と好調。アルバムも今週英米で1位とモメンタムをキープしてます。今週はオリヴィアのコンサート・ドキュメンタリー『Sour Prom』がYouTubeでストリーミングされましたが、元カート・コバーン夫人でホールのリーダー、コートニー・ラヴが、そのプロモーションに使われたイメージの一つがホールのデビューアルバム『Live Through This』のジャケのパクリだ!と噛み付くという事件がありました。オリヴィア本人は軽く受け流しており、まあこういうのもある意味有名税ということなんでしょう。いずれにしても半分終わった2021年前半を通じてチャートの上位で存在感を放っているオリヴィア、正に大谷選手と共に今年の顔ですな。

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そしてひょっとすると1位来るかも、と先週言ってたH.E.R.のデビューフルアルバム『Back Of My Mind』は36,000ポイント(実売5,500枚)というかなり地味な成績で6位初登場でした。今年に入ってBLMを直接的に取り上げた「I Can’t Breathe」がグラミー賞のソング・オブ・ジ・イヤーを、そしてロバート・グラスパーとの「Better Than I Imagined」が最優秀R&Bソングを受賞、映画『Judas And Black Messiah』に提供した「Fight For You」がアカデミー賞の最優秀オリジナル・ソングを受賞するなど、アーティスト・パワーをぐんぐん積み上げてきたH.E.R.だったのでこの地味さはやや意外ですが、これらの曲がどれもこのアルバムには収録されていない、というのもポイントが地味だった一因かも。といっても初のトップ10ということでめでたい。

収録曲中最大のヒットでコンプトン出身のラッパー、YGをフィーチャーした「Slide」(2020年43位)など、どちらかというとヒップホップ系のアーティストを多くフィーチャーしたアルバムですが、サンダーキャットをフィーチャーした「Bloody Waters」なんかが自分は気分です。そういえばこれだけ存在感を既に持つH.E.R.、未だにトップ40ヒットってジェネ・アイコの「B.S.」(2020年24位)のフィーチャリングだけで、まだピンのトップ40ヒットって一曲もないんですよね。かなり意外ですね。

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さて、先週は9枚も初登場してメチャクチャ賑やかだったトップ10圏外100位まで、今週の初登場は3枚とだいぶ静かになってます。そんな中、圏外一番人気で15位に飛び込んで来たのが、またまたKポップ勢。そして今回はBillboard 200初チャートインで22,600ポイント(実売21,200枚、何と今週のアルバム売上トップ)を叩き出してきた13人組のボーイズバンド、SEVENTEENの『Your Choice: 8th Mini Album (EP)』。

全6曲収録のこのEP、タイトルでは「8枚目のミニアルバム」とあるが、実際は9枚目のEP(何でや!)で、直近4枚のEPはいずれも韓国でミリオン以上の売上というから凄まじい。シングルの「Ready To Love」を聴いた感じではダンサブルで、エレクトロちょっと入った、正に今の英米のメインストリーム・ポップの王道、という感じでこれなら売れるなあ。何でも曲作りやプロデュース、振付まで自分たちがかなりインボルブしてやるセルフ・コンテインドが信条らしい。ますますKポップの世界は実力者が増えて行くなあ。

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ちょっと下って34位初登場は、今やアトランタ・ラップ・シーンの顔役の一人、グッチ・メインの15作目のアルバム『Ice Daddy』。このタイトルの「Ice」というのは、実は昨年12月に生まれたばかりのグッチ・メインの長男アイス君のことのようで、ジャケに大々的に登場してるのがそのアイス君なんでしょうね(笑)。これはどうも親父メロメロの作品なのかな、と思いきや、音を聴くと結構ソリッドなトラップチューンで固められていて、メディアの評価もまずまずの様子。

ただ、5作目の『The State vs. Radric Davis』(2009年10位)から前作14作目の『Woptober II』(2019年9位)までの10作のうち7作がトップ10、特にここ4作連続トップ10だったのが、今回は34位とちょっと残念な順位に終わってるのはなぜなんでしょうね。先週同じアトランタ・ラップ・シーンのミーゴスが新作を2位にぶち込んでいたのだけに、そのミーゴスをはじめ、ヤング・サグ21サヴェージといったアトランタのラッパー勢のゴッドファーザー的なグッチがこの順位というのは不思議だし、更にこのアルバムからHot 100にも1曲もエントリーしていないのも変ですね。

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今週の最後の圏外100位までの初登場、87位に登場したのが、ビリー・アイリッシュのEP『Prime Day Show X Billie Eilish (EP)』。彼女の新作『Happier Than Ever』は今月末リリースの予定で、リリースされればまた間違いなく1位なんですが、このEPは6/17にアマゾンアマゾン・プライム・ミュージックのユーザー向けにストリーミングされたライブ・イベントの音源をEP化したもののようです。同じ日にアマゾン・プライムではビリーの他にH.E.R.キッド・カディのライブがストリーミングされたようなのですが、ビリーキッド・カディのパフォーマンスがそれぞれEPとしてリリースされ、このビリーの方のみがチャートインしたということのよう。

内容的には最新ヒットの「Lost Cause」(同27位)をはじめ、ファーストからの「all the good girls go to hell」とシングルのみの「Everything I Wanted」以外はすべて今月末リリースの新作に収録されている曲のライブバージョンで構成されていて、どうも新譜のティーザー的な効果もあってのチャートインのようですね。新作のリリースへの期待がいやが上にも高まるというもんです。
なお、新作への期待というと、先週テイラー次の再録アルバムは11月リリース予定の『Red』、とアナウンスしたのがファンを刺激したと見えて、93位にその『Red』が再登場してました。

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ということで今週のトップ10おさらいです。先週ゴールドディスクだったオリヴィアがもう今週はプラチナになってますね。あと、マニーバッグ・ヨにもゴールドが点灯してます(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

1 (3) (5) Sour ▲ - Olivia Rodrigo
2 (1) (2) Hall Of Fame - Polo G
3 (4) (3) The Voice Of The Heroes - Lil Baby & Lil Durk
4 (2) (2) Culture III - Migos
5 (5) (24) Dangerous: The Double Album - Morgan Wallen
*6 (-) (1) Back Of My Mind - H.E.R.
7 (11) (64) Future Nostalgia ▲ - Dua Lipa
8 (9) (9) A Gangsta’s Pain ● - Moneybagg Yo
9 (7) (3) Inside (The Songs) - Bo Burnham
10 (10) (6) The Off-Season - J. Cole

今週のトップ10および圏外、いかがでしたか。さて恒例の来週の1位予想ですが、今回の集計対象期間は6/25-7/1。この週はリリースラインアップにはいい感じの作品が並んでいて、ドジャ・キャットの2作目、過去5作がいずれもトップ3というロジック引退後の初のベスト盤、そして2011年のデビュー以来5作連続トップ5というタイラー・ザ・クリエイターの6作目、といった当たりが三つ巴で来るんではないかとみています。おそらく10万ポイントをクリアすればオリヴィアを抜いて1位は間違いないでしょうし、この3作はいずれもその可能性大。ドジャ・キャットはデビュー作が9位でしたが、今回は同じ週にデラックス・エディションもドロップされるのでかなりのデッドヒートが予想されます。ではまた来週。


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