見出し画像

今週の全米No.1アルバム事情 #18 - 2020/3/7付

(このシリーズもこれまでFacebookとブログでやってたのをnoteで今後発表することにしました。バックナンバー興味ある方はプロフィールのFBリンクでチェックしてみて下さい)

いやはや、先週既に予想はついてましたが、改めて今週末のBillboard 200チャートの1位にものすごい勢いで初登場してきたBTSの新作『Map Of The Soul: 7』、ちょっと歴史的にものすごいことになってます。今回のこの1位初登場が打ち立てた記録を列挙するとそのインパクトがわかるというもの。

画像1

* 『Love Yourself: Tear』『Love Yourself: Answer』(共に2018)『Map Of The Soul: Persona』(2019)に続く4枚連続全米アルバムチャート1位初登場は、アジアン・アーティストとしては当然初の快挙。
* ポイントの422,000 EAUs(実売347,000枚)はいずれも2020年最高値。特に実売347,000枚という数字はでかい。過去5年でこれ以上の数字を叩き出したアルバムは、このBTSのアルバムを入れて僅か10枚というレベル。
2019年:ハリー・スタイルズFine Line』(39.3万枚)、テイラーLover』(67.9万枚)、ジョナス・ブラザーズHappiness Begins』(35.7万枚)の3枚
2018年:なし
2017年:テイラーReputation』(121.6万枚)、ピンクBeautiful Trauma』(38.4万枚)、ケンドリック・ラマーDAMN.』(35.3万枚)の3枚
2016年:J.コール4 Your Eyes Only』(36.3万枚)、ドレイクViews』(85.2万枚)、ビヨンセLemonade』(48.5万枚)の3枚
* 最初の『Love Yourself: Tear』(2018年6月)から1年9ヶ月の間に4枚1位というのは、2015年8月の『DS2』からドレイクとの『What A Time To Be Alive』、『EVOL』そして2017年3月の『FUTURE』まで1年7ヶ月で4枚エースを決めたフューチャー以来の記録。そしてグループとしては何とビートルズの『Yesterday And Today』(1966年7月)から『Magical Mystery Tour』(1968年1月)の1年5ヶ月で4枚1位の記録以来というから正に歴史的。
* そしてこれが一番重要なんですが、BTSはこの4枚、リリースするごとにそのポイントと売上を一貫して増やしてること。特に実売枚数で、10万→14.1万→19.6万→34.7万と等比級数的に売上を増やしているのはこれまでのスタッフの戦略実行、というかK-Popの世界戦略エクセキューションが見事に結実してるといえます。

そしてHot 100の方でもこのアルバムから、先日のジミー・ファロンの『Tonight Show』でNYグランドセントラルでのパフォーマンスが放映された「On」が今週初登場4位と、過去最高のヒットになってこの上ない盛り上がりよう。

そして数字やチャートのみならず、今回のアルバムを通して聴くと、トラップからジョナスあたりが歌いそうなコンテンポラリー/ポップ・ロック、R&Bバラード、そしてオールド・スクール・ヒップホップへのオマージュ的楽曲とかハウスっぽいナンバーなどもちりばめた周到でおいしい楽曲満載かつバランスの取れたプロダクション(特にRMSUGAがそれぞれリードを取ってラップする「Intro: Persona」「Interlude: Shadow」はかなり本格的で聞きもの)は、正直言ってUSのサウンドメイカー達と互角以上の仕事をしている。そして聴いててそれぞれの楽曲が単純に楽しい。
ここに来るまでにサウンド面、各メンバーのパフォーマンスレベルの修練、そして必要な金を惜しまないマーケティングなど、明らかに戦略的だしJ-Popとの彼我の差がここまで来たのか、とある意味暗然とならずにいられない、それほどこの作品は今のポップ作品としてよくできててこのヒットもある意味当然の帰結。まあJアーティストでここまでの野心のある人いないだろうしね。

もう一つ特筆すべきは、最近の全米1位アルバムの常套手段である、コンサートやグッズとの抱き合わせ販売がない代わりに、4種類のパターン違いのジャケのCDを用意し、ブックレットや塗り絵シートを同梱、更には32パターンのうちどれが入っているか判らないメンバーのフォトカード封入といった、もうファンサービスこれでもかというギミック投入の徹底ぶり。こりゃ売れるわ。AKBの握手券付とかいったケチなレベルじゃないね。

画像2

正に先週のモンスタXに続いてK-Pop旋風吹き荒れる中で、2位に地味ーに初登場してる(笑)のがこちらも今旬のラッパー、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインの『Still Flexin, Still Steppin』。去年1位を決めた『AI YoungBoy 2』に続いて好調で、今回も91,000 EAUs(実売4,000枚)とまずまずの成績ですが、今週のBTSの騒ぎの中ではかなりかすみますね。

画像3

そして3位初登場は、先頃パーキンソン病を公表して今年の北米ツアーをキャンセル、その動静が注目されてたキング・オブ・メタル、オジー・オズボーンの11作目、10年ぶりのスタジオ・アルバム『Ordinary Man』。77,000 EAUs(実売65,000枚)とまずまずの勢いで、2007年の『Black Rain』に並んで全米最高位を記録したこの作品に続いて、今年後半に次のアルバムも用意してるといいますから、年もくって病気はしてもまだまだ意気盛ん、といったところでしょうか。

なお初登場以外では、去年12月に初登場1位だったトリッピー・レッドの『A Love Letter To You 4』にボートラ追加したデラックス盤がリリースされた関係で36位→9位と大きくリバウンドしてきてます。

さて、BTS旋風で何となく舞い上がった感じの今週ですが、来週の1位予想。2/28〜3/6のリリーススケジュールのラインアップは正直小粒。可能性があるのはヒップホップ勢ではリル・ベイビー、それ以外ではジェームス・テイラーやここのところ5作連続トップ5初登場を決めてるラスヴェガス出身のメタル・バンド、ファイヴ・フィンガー・デス・パンチくらいでしょうか。でもこの勢いでひょっとすると来週もBTSが1位キープ、というのも充分あり得るシナリオのような気もします。ではまた来週。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?