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恒例グラミー賞企画第1弾!第65回グラミー賞主要4部門ノミネート予想

はい、今年もグラミーの季節が近づいて来ました。今回の第65回グラミー賞の発表は来年2月5日(日本時間2月6日)、今年もロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナ(旧ステイプルズ・センター)で開催の予定ですが、それに先立ってのノミネーション発表が11月15日の西海岸時間朝9時(日本時間16日午前2時)から、グラミー賞のストリーミングサイトhttps://live.grammy.com)でライブ放映される他、グラミー賞のツイッター、YouTube、Facebook、インスタ、TikTokのチャンネルでストリーミングされるようです。既に黒人カントリーシンガーのジミー・アレン(去年の新人賞ノミニー)、ラテンのルイス・フォンジ、レコーディング・アカデミーのLA支局長も務めてるR&Bシンガーのレディシ、ジョン・レジェンド、マシンガン・ケリー、スモーキー・ロビンソン、そして去年のグラミーを席巻したオリヴィア・ロドリゴらのノミネーション発表式への出演がアナウンスされてます。残念ながらその日の朝は早くから仕事なので(涙)ライブは無理ですが、多分YouTubeではその次の日くらいまで見れるんじゃないかと期待しているところ。そうでないかたは是非頑張ってライブで楽しんでみて下さい。

去年ノミネーション発表直前にノミニー数が8→10に増やされた主要4部門、今年もそれぞれ10の候補がノミネートされる予定。そして去年お伝えしたように、今回もノミネーション投票(10/23で既に投票は終わってます)の結果だけで候補が決定するということなので、広く業界のミュージシャン、ソングライター、プロデューサーやエンジニア達に支持される候補が並ぶことになりますが、果たして昨年のジョン・バディーストのような意外性あるノミニーは今年もあるのか。また、年末から年明けにかけて執筆予定のグラミー賞52部門予想記事の方でまた詳しく書きますが、今年からは「最優秀ソングライター部門」をはじめとする新しい部門も追加になっているようなので、そこでも誰がノミネートされるのか、今からなかなか楽しみです。

では、去年にならって今年も主要4部門のノミニー予想と行ってみます。いや、なかなか10候補予想するのは意外と大変でしたが、当たるも八卦、当たらぬも八卦ということで今年の米国音楽シーンの振り返りも兼ねて行ってみましょう。まずは最優秀新人賞部門の予想です

1.最優秀新人賞部門ノミネート予想

去年の新人賞部門は正直オリヴィア一択でしたが、今年は去年の彼女ほど抜きん出た候補はなさそう。個人的には最右翼はHot 100、R&B、ロック、オルタナの主要チャート1位を記録した「Bad Habit」の大ヒットで突然ブレイクしたスティーヴ・レイシーだと思ってたんですが、彼は既に2020年第62回の最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門でノミネートされてるので、「過去にノミネート経験のあるアーティストは対象外」というこの部門の基本ルールでアウトになってしまいました。同じ理由でジャック・ハーロウ、テムズ、ウォーカー・ヘイズあたりも権利落ちのようなのですが、それでも今回この部門対象に申込のあったアーティストは368に昇るとのこと。去年の468に比べると100ほど少ないですが、それでもかなりの数です。その中で自分がノミネートされるのでは、と予想するのが次の10組。

Zach Bryan
Gayle
Cody Johnson
Latto
Maneskin
Mitski
Rina Sawayama
Snail Mail
TWICE
Lainey Wilson

このリストをみて「あれ?」と思った方はこのノミネーション予想記事を去年も読んで下さった方ですかね。そう、去年も新人賞ノミネートを予想していたマネスキンを今年も入れてます。だいたい昨年のノミネーション予想イベントにマネスキンを呼んでパフォーマンスさせていながら、新人賞にノミネートされてないじゃないか!と去年文句言ってたんですが、実は去年の対象期間の時点ではまだUSではブレイク前だったんですよね。グローバルでは2017年にヒットしてた「Beggin’」がUSのロック・エアプレイ・チャートで16週1位を開始したのは去年の10月だったということもあってか、どうも今回のこの部門の対象アーティスト368組に含まれてるらしいです。なので彼らの今回のノミネートはどうも堅そう。

あと、オルタナやインディ・ロックにアンテナ高い方には、ミツキリナ・サワヤマスネイル・メイルも「随分前からブレイクしてるじゃん」と思われると思うんですが、彼らも全米の音楽業界の人たち全般に認知されたのは、去年から今年にかけての作品、例えばミツキは初の全米トップ10アルバム『Laurel Hell』(5位)、リナエルトン・ジョンのコラボアルバムで「Chosen Family」や、自分のアルバム『Hold The Girl』リリース(166位)、そしてスネイル・メイルはこの間のアルバム『Valentine』(61位)といったあたりによるものだと思うから、充分今回ノミネートされる可能性大だと思ってます。でもグラミー賞の同一部門に日本人が2人ノミネートされるかも、というの結構ワクワクしませんか?

カントリー系も今年は強そう。つい先週CMAアウォードで2部門受賞のレイニー・ウィルソン、ヒット曲「’Til You Can’t」がカントリー・チャート首位9週、そしてCMAアウォードでも年間最優秀シングルを受賞したコディ・ジョンソンあたりがノミネートされそう。そしてそれ以上にノミネート確実、ことによると受賞最右翼かも、と思っているのがザック・ブライアン。上記の二人よりもジョン・メレンキャンプを思わせるようなハートランド・ロック的なスタイルが魅力的なザック、アルバム『American Heartbeat』は いきなり全米5位を記録しただけでなくて、去年までクリス・ステイプルトンの牙城だったアメリカーナ・フォーク・アルバム・チャートで、今年23週首位をキープ中(継続中)という存在感抜群なので、かなり強いと思います。

TWICEを入れたのは、もちろん期間中全米トップ10アルバムを2枚ぶち込んでいるってのもありますが、主要賞になかなか候補を送り込めないKポップ軍団で、BTSが活動していなかった今年でその代わりに候補になり得るのは彼女たちくらいかな、と思うわけでして。でもメンバーに日本人が2人いるTWICEもノミネートされたら、日本人絡みが3アーティストという前代未聞の事態になりますね。うーんそうなったらそれはそれでスゴいけどなあ。

今年残念なのはR&B・ヒップホップ勢。前述のスティーヴ・レイシーや、テムズ、ブレント・ファイアズ、フィヴィオ・フォーリンといったあたりが軒並み過去ノミネート済で資格落ちしてるのが痛いところ。一応去年から今年にかけて「Big Energy」(3位)の大ヒットを飛ばしたラットを入れておきましたが、その他は正直パッと名前が浮かぶヤツがあまりなかったんで。

2.最優秀レコード賞(Record Of The Year)部門ノミネート予想

Easy On Me - Adele
Me Porto Bonito - Bad Bunny & Chencho Corleone
Break My Soul - Beyonce
We Don’t Talk About Bruno - Encanto Cast
Cold Heart (PNAU Remix) - Elton John & Dua Lipa
Bad Habit - Steve Lacy
N95 - Kendrick Lamar
About Damn Time - Lizzo
Beggin’ - Maneskin
As It Was - Harry Styles

さて今年のグラミー賞を考える時に、明らかに主要部門で有力になりそうなのは、アデル、ビヨンセ、そしてケンドリック・ラマー。本当を言うとここに前回グラミーで、「Leave The Door Open」でROYとSOYの両方をさらっていったシルク・ソニックも絡んでくると思ってたんですが、今年はシルク・ソニック作品はグラミー対象としての申請は行わないことにしたそうで、従って昨年12月にリリースされたアルバムも、その後大ヒットした「Smokin’ Out The Window」も本来ならそれぞれ最優秀アルバム、ROYかSOYにノミネートされる強力候補だったんですが、今回はアウトテイラーも今回の対象期間中のリリースは過去作品『Red』の再録盤のみなので再録リリースした「All Too Well」のROYは対象外だろう(SOYは事情が別。SOYの項を参照)とみてます。なので、新人賞部門以外の主要4部門ではアデル、ビヨンセケンドリック・ラマーがガチで争うことになりそう。しかし今回この3人ともに楽曲ベースでいうとダントツで強力、という感じもしないだけに混戦が予想されます

その混戦に乗じて受賞の可能性が高そうなのが、ハリー・スタイルズとスティーヴ・レイシー。それぞれ今年の活躍のスタイルは違いますが、ハリーはキャリア最高傑作の呼び声も高い『Harry’s House』と15週間1位を記録した「As It Was」の大ヒット、スティーヴも前述のように複数ジャンルチャート部門で圧倒的な記録を残しているので、彼らも有力候補として観るべきでしょう。

そして更に!今年のトレンドとしてラテン勢の台頭、特に依然圧倒的な人気を維持して、なかなかアルバムチャートトップ3から落ちてきそうもない『Un Verano Sin Ti』(13週1位)のバッド・バニーと、ディズニーアニメのサントラとしては久々の大ヒットになった『Encanto(ミラベルと魔法だらけの家)』のサントラ(9週1位)の2大作品も主要賞には絡んでくるでしょう。バッド・バニーの曲はどれも似たり寄ったりですが(笑)ラテン・チャートで20週1位を独走していたこの曲、そして『ミラベル』は何といってもHot 100で5週1位を続けた「We Don’t Talk About Bruno」(今年のグラミーで、司会のトレヴァー・ノアシルク・ソニックのテーブルでこの曲をネタにしてましたが)は正にROY候補にふさわしいんじゃないでしょうか。

その他、リゾデュア・リパなどのグラミー・ダーリン達の曲に加えて、ここは敢えてマネスキンの「Beggin’」を入れておきたいな、と思います。もし彼らがここでノミネートされたら、イタリアのアーティストとしては1959年第1回この部門を「Volare」で受賞したドメニコ・モドゥーニョ以来63年ぶりの快挙!ということになります(笑)。いずれにしても今年は例年に比べてこの部門、混戦必至。

3.最優秀歌曲賞(Song Of The Year)部門ノミネート予想

Easy On Me - Adele
Break My Soul - Beyonce
Something In The Orange - Zach Bryan
Bad Habit - Steve Lacy
N95 - Kendrick Lamar
About Damn Time - Lizzo
Black Summer - Red Hot Chili Peppers
Shivers - Ed Sheeran
As It Was - Harry Styles
All Too Well (Taylor's Version) - Taylor Swift

毎回説明してますが、ROYがその年を代表する楽曲として高いクオリティのパフォーマンスと技術を達成している作品に与えられる(従って受賞者はアーティスト、プロデューサー、フィーチャーされたアーティスト、エンジニアおよびミキサー)のに対し、SOYは高いクオリティの楽曲に対して与えられる(従って受賞者はソングライターのみ)ので、その曲が楽曲として素晴らしいかどうか、メロディや構成、そして歌詞の内容が評価されるわけです。それを考えると、ROYの強力候補、アデル、ビヨンセおよびケンドリック・ラマーの楽曲レベルが傑出している、という感じは今回あまりないように思うので、この部門もまた混戦の可能性があるかなあと思ってます。

一番微妙なのはテイラーの「All Too Well」の新バージョンがノミネートされるかどうかということ。この曲、ご存知のように今年新録音バージョンがリリースされた2012年のアルバム『Red』に収録されてた曲ですが、Billboard誌によると、グラミー・アカデミーがこのバージョンについて、SOY部門ノミネートの条件である「新しく録音された曲」という定義に当たるとして、SOYのノミネート対象になる、と先月発表したそうなんです。うーん、という感じなのですが、これが対象になるということだと多分ノミネートは間違いなくされるだろうというのは想像に難くないところ。受賞するかどうか全く別問題ですが。

ハリー・スタイルズスティーヴ・レイシーの楽曲はROYと同様、先の3大強力候補の楽曲以上に、やはり今年を代表する楽曲であることには間違いないと思うので、ROY同様結構受賞の可能性はありそうです。その次くらいに可能性があると思うのがザック・ブライアン。彼に対する業界の評価はかなり高いと思うので、ROYは無理でも、SOYでは可能性ありではないか、と思ってます。そして王道ロック系が主要4部門になかなか出てこなくなって久しいので(この部門だと2010年第52回のキングス・オブ・リオンUse Somebody」が最後)フルシャンテ復帰で久々に快作を出してくれたレッチリを挙げておきました。

4.最優秀アルバム部門ノミネート予想

30 - Adele
Un Verano Sin Ti - Bad Bunny
Renaissance - Beyonce
American Heartbreak - Zach Bryan
In These Silent Days - Brandi Carlile
Gemini Rights - Steve Lacy
Mr. Morale & The Big Steppers - Kendrick Lamar
Raise The Roof - Robert Palmer / Alison Krauss
Encanto - Soundtrack
Harry’s House - Harry Styles

さて個人的には主要4賞のうちで最重要部門だと思っているこの部門、アルバムという一つの総合的作品を評価する部門ということで、単一楽曲のみのクオリティではなかなか受賞どころかノミネートの対象にもなりにくい一方、ヒット曲がなくともアルバム全体のクオリティが高ければノミネート、更には受賞の可能性あり、ということで、この部門のみノミネートまたは受賞、というパターンが歴史的に多い部門ですよね。そういうパターンの最近の受賞で印象に残ってるのが、前回のジョン・バティーストの『We Are』、2019年第61回のケイシー・マスグレイヴスGolden Hour』、2015年第57回のベックMorning Phase』、2013年第55回のマムフォード&サンズBabel』そして2011年第53回のアーケイド・ファイアThe Suburbs』(この時は会場が呆気にとられていたのが更に印象的でした)。

そういった観点での受賞の可能性を秘めた作品としてここに挙げたのは、ブランディ・カーライルロバート・パーマー&アリソン・クラウス(この2人は正にそういうパターンで2009年第51回で受賞してます)。彼らはいずれもいわゆるグラミー・ダーリンでもありますし、少なくともノミネートはされても全然おかしくないところです。ブランディはこのアルバムの曲「Right On Time」が前回のROY、SOYにノミネートされてましたしね(アルバムリリースは今回の対象期間内)。

もちろん3大強力候補のアデル、ビヨンセ、ケンドリック・ラマーに加えてハリー・スタイルズは当然ノミネートされるとして、今年大ブレイクした、スティーヴ・レイシーザック・ブライアンはいずれもアカデミー・メンバーに評価高そうなので充分ノミネートの可能性大でしょう。そして忘れてはいけないのは、今年のラテン台頭のトレンド。バッド・バニーミラベルのサントラは2022年を全米における音楽消費の大きなトレンドの一つをドライブした作品として、ノミネートの一角は必ず押さえてくるんじゃないかと思ってます。

ここで「あれ?ドレイクってどこにも出てきてないけど」と思ったあなた。そうですねえ、ドレイクの『Certified Lover Boy』も前回の主要賞ノミネートにはカスリもしてなかったし、最優秀ラップ・パフォーマンス部門に「Way 2 Sexy」がノミネートされてたんですが、例のザ・ウィークンドのグラミー・アカデミーのガン無視事件に同じカナダ人のドレイクが抗議してノミネーションを辞退した、という顛末もあるので、どうも最近はドレイクグラミー・アカデミーの関係がイマイチだということもあり、今回敢えてノミネーション予想にはドレイク、入れてません。今年のアルバム『Honestly, Nevermind』自体は、彼が脱トラップを模索したように思うので個人的にはそれなりに評価してるんですが、まあ主要賞にノミネートされるようなプロファイルの作品じゃないんだろうなあ、ということで。

ということで、以上第65回グラミー賞の主要4部門ノミネーション予想でした。本チャンのノミネーション発表は、冒頭でもお知らせした通り来週日本時間水曜日の未明に行われますので、また結果が出たら答合わせしつつ、今年も例年お馴染みの52部門受賞予想(昨年までは51部門でしたが、今年新設の最優秀ソングライター部門も予想しようと思っています)の「DJ Boonzzyの大グラミー予想」ブログを、このnote.comで年末くらいから連載10回くらいで年初にかけてお届けする予定なので、どうかお楽しみに(前回は1/22〜4/3にかけて12回連載でした)。

そして今回も2017年から毎年やっている音楽評論家の吉岡正晴さんとのグラミー賞大予想トーク&ミュージック・イベント「ソウル・サーチン・ラウンジ〜グラミー賞大予想〜」は今回も年明けくらいに開催予定で現在相談中なので、また詳細が決まってきたらアナウンスしますのでよろしくお願いします。

では来週のノミネーション発表を楽しみに!

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