見出し画像

今週の全米アルバムチャート事情 #233- 2024/4/27付

祝大谷翔平メジャー通算176号。でも彼の力はまだまだこんなもんじゃないと思う。176号のホームランも、去年の夏場に打ってたホームランのパワーと迫力にはまだまだだし、彼は夏に向けて更にパワーをアップしていくんだろう。今年は山本今永など今年からメジャーに参戦した日本人ピッチャー達も頑張ってるし、MLB三昧はまだまだ続きそう。

"We Still Don't Trust You" by Future & Metro Boomin

早いもので4月もそろそろ終わりに近づいて、GWも眼の前になってきた今週の全米アルバムチャート、4月27日付のBillboard 200の首位は先週の予想通り、フューチャーメトロ・ブーミンのコラボ・シリーズ第2弾『We Still Don’t Trust You』が127,500ポイント(うち実売2,500枚、デジタルダウンロードのみ)で初登場してきてます。3週間前にリリースのコラボ1作目『We Don’t Trust You』が25万ポイントとかなり力強かったのに比べるとさすがに二番煎じ(というわけでもないんでしょうが)だとポイントも半減しちゃうんですね。

今回の2作目は2枚組の仕立ですが、特にディスク1は前作やいつものフューチャー絡みのプロジェクトのようにバリバリのトラップ・レコードというよりもかなりR&Bサイドに寄せた作りになってるようで、のっけからザ・ウィークンドをフィーチャーしたタイトル・ナンバーなんて、ザ・ウィークンドのアルバムの曲かと思う、クールなヒップホップ風味のR&Bナンバー。この曲も含めてディスク1ではアイズレーをサンプリングした「All To Myself」などザ・ウィークンドと3曲、タイ・ダラ・サインと1曲「Gracious」、そして驚いたことに90年代以来久しぶりに名前を聞いたブラウンストーンとコラボしているという「Luv Bad Bitches」なんかもあったりして(でもブラウンストーンがやってるのはエフェクトかけたバックコーラスだけみたいですが)、なかなか自分のようにヒップホップR&B大好き人間にはかなり楽しめる内容になってますね。しかしブラウンストーンのメンバーで、プロデューサーのソウルショックの嫁さんだったマキシーは10年くらい前に事故で亡くなったんだけど、残ったメンバーでまだやってだなあ、とちょっと感慨にふけってしまいました。あと意外だったのは、ディスク1のラスト・ナンバー「Red Leather」にJコールがフィーチャーされてチルなトラックをバックに結構メインのヴァースをラップしてること。あれ?1作目の「Like That」でのケンドリック・ラマードレイクJコールへのディスと、先週ディス返しをドロップしたJコール(でもすぐ謝ったあたりかなりダサいw)のあのやり取りがあったのにもうJコール、ディスされた連中とやってるのって何か変だなあ。まあいいかw

"Papercut" by Linkin Park

今週のトップ10初登場はもう1枚、6位にエントリーしてきた懐かしやリンキン・パークの初ベスト盤『Papercut - Singles Collection 2000-2023』。今回ヴァイナル8種類のバリエーションを用意したこともあって、実売が20,500枚、ポイント数で44,000ポイントを叩き出してトップ10に飛び込んで来ました。正直今更リンキンのベストがトップ10に来るとは思わなかったので、これは嬉しいサプライズですね。これで彼らに取っては『Meteora』(2003)や『Minutes To Midnight』(2007)など6枚のナンバーワン・アルバムを含む通算11枚めのトップ10になりました。今週UKでも4位に初登場で、彼の地では通算9枚目のトップ10アルバムになってます。

今回のベスト盤全20曲中1曲は未発表曲「Friendly Fire」(今回シングルとしてリリース、先週メインストリーム・ロック・トラック・チャートで1位)で、残りは彼らの代表曲やオルタナティブ・ソングス・チャートでのヒット曲を中心に選曲。彼らの12曲のオルタナティブ・ソングス・チャート1位曲(ちなみに12曲1位というのは、フー・ファイターズ、グリーン・デイと並んで歴代2位。1位は15曲のレッチリです)のうち、「Lying From You」(2004年3週#1)と「The Catalyst」(2010年4週#1)は残念ながら収録されてませんが、「In The End」や「What I’ve Done」、「Somewhere I Belong」といった代表的ナンバーはしっかり並べられてますので、当時のリンキン・ファンは充分満足できる構成でしょうね。久しぶりにこういった曲を聴くと、当時の熱い思い、特に「Friendly Fire」で聴けるチェスターのボーカルとMVを見るにつけ、彼への思いが沸々とわき上がってくるのは自分だけではないでしょう。

"To The Limit: The Essential Collection" by Eagles

今週のトップ10初登場はこの2枚ですが、圏外11〜100位の今週の初登場は先週の盛況と打って変わってわずか2枚。そのうち30位に入って来てるのは「うーんまだ違うベスト盤出すの?」と思わず見てウンザリしてしまった、イーグルスのこれで12枚目になるCD2枚組/LP3枚組のベスト・コレクション『To The Limit: The Essential Collection』。何で今さらまた、と思ってセットを確認したところ、今回の売りは9曲の未発表音源を含む16曲のライブ録音が含まれてることのようですな。しかもプロデュースト・バイ・ドン・ヘンリー(笑)。かねてからオンライン音楽ディストリビューションに強硬な立場を取ってる彼が、老後のお小遣いを稼ぐにはうってつけのプロジェクトなんでしょう。バーニー・レドンランディ・マイズナーがいた頃のイーグルスが最高だと思ってる自分などはこのリリースをシニカルに受け止めざるを得ないですなあ。

そのライブ音源のうち、「Seven Bridges Road」など7曲は1980年に既にリリースされてる『イーグルス・ライブ』の音源と同じなんですが、当時1980年のサンタ・モニカ・シビック・オーディトリアムでの録音だった「The Long Run」が2018年、そして「Take It Easy」「Hotel California」が何と1976年のLAフォーラムのライブ音源で新たに収録されてるんですよね。「The Long Run」の2018年ライブは、例のグレンの息子のディーコン・フライヴィンス・ギルがメンバーでやってるまあどうでもいい音源なんですが、1976年の音源、特にまだ発表前だったはずの「Hotel California」の音源というのはなかなか興味をそそるところ。さすがヒヒオヤジのドン・ヘンリー、商売巧いなあ(笑)。さっそくSpotifyで聴いてみましたが、既に楽曲的にも演奏的にもこの時点で完成されてますね。こうやって簡単にネットで聴いちゃうとドン、怒るんだろうけど(爆)。それ以外で貴重だと思うのは、ドン・フェルダーがメンバーに入ってる最後のライブ録音、1999年のLAステイプルズ・センターでの「The Best Of My Love」あたりですかね。これはなかなかトロピカルなアレンジでいい感じです。こんな風にガチで70年代イーグルスの大ファンの自分でも聴いてみたい音源は数曲なんで、せいぜいSpotifyで楽しむことにします。いい時代ですなあ。

"Don't Forget Me" by Maggie Rogers

そして今週もう一枚の圏外初登場は48位にチャートインしてきたマギー・ロジャースのフル・アルバム3作目『Don’t Forget Me』。衝撃の全米トリプルAチャート(アダルト・オルタナティブ・ソングス・チャート)ナンバーワンの「Light On」(2018)からのデビュー・アルバム『Heard It In A Past Life』(2019、自分の2019年年間アルバム1位です)の全米初登場2位で華々しくデビューを飾った彼女ですが、デビュー作以上に大きくエレクトロな音作りに舵を切った前作のセカンド『Surrender』(2022、これも自分の年間ランキング1位にしました)が12位、そして今回が48位とリリースのたびに順位を落としてきているのがデビュー以来のファンとしてはとっても残念。独特の世界観を持った楽曲やサウンドスケープ、そして聴く者の胸に直接飛び込んでくるような独特な彼女のボーカルなど、本当に素晴らしい今の時代を代表するシンガーソングライターだと思うので、今回はトップ10に返り咲いてほしかったんですが。

で、今回のアルバムですが、先にシングルで今週「Light On」から通算4曲目のトリプルAチャート1位に輝いてるタイトルナンバー「Don’t Forget Me」を聴いたところ、サウンドがガラリとアコースティックでオーガニックな、キャロル・キングとか70年代にシンガーソングライター達が生み出していた芳醇な雰囲気に変わっていたのでちょっと驚いたのと「いやいやこれ、なかなかいいんじゃないか」と嬉しくなってました。今回はあのケイシー・マスグレイヴスの『Golden Hour』(2018)以降最近3作の素晴らしいアルバムの共作・プロデュース3人組の一人であるイアン・フィチャックと全面的に一緒にプロデュース、曲も10曲中8曲を彼と共作しているという、正にイアンとマギーの共同作業の結果がどうやらサウンドスケープの見直しと、楽曲自体の魅力にもつながってるようです。思うに彼女の出世作「Light On」の共作・プロデュースで彼女のブレイクに貢献して、ファースト・アルバムでも一曲プロデュースしてたキッド・ハープーンマギーがセカンド・アルバムのパートナーに選んだことによって、彼の得意分野であるエレクトロでコンテンポラリーな方向性に進んだんだけど、前作ではややそれがファーストほどうまく化学変化につながっていなかった感じもあったような気がします。ファーストもエレクトロなサウンドスケープがうまく使われていたけど、そのあたりはメインのプロデューサーだったグレッグ・カースティンアデルの仕事などで有名ですね)の絶妙なさじ加減が機能していたということなんでしょう。

今回イアンとパートナーを組むに至った経緯は不明ですが、音的にはその「Light On」でブレイクする以前の、NYUクライヴ・デイヴィス・レコーデッド音楽大学院であのファレル・ウィリアムスに絶賛された頃のアコースティックな音楽スタイルに戻った感じで、とっても聴いてて気持ちが癒やされる、そんな曲が並んでます。何でも彼女自身も「今回は日曜日の午後を感じさせるアルバムにしようと思った」と言ってるように、正にゆっくりと日曜の午後、日だまりでくつろぎながら聴ける感じだけど、でもタイトル曲が今の恋人に対して「立ち去る時には私を忘れないで」と男女関係に不安を抱える心情を歌っているように、多分他の曲も歌詞を読むと深い内容であろう一連の楽曲が楽しめるアルバム。聴けば聴くほど味が出る、そんなアルバムになりそうな予感。マギーのこのアルバムが繰り返して聴くことによって熟成していく過程が今から楽しみです。

ということで今週の100位までの初登場は都合4枚。一方Hot 100の方では、先週1位争いを予想していたJコールケンドリック・ラマーへのディス返し曲「7 Minute Drill」が、発表後3日で本人が謝罪してストリーミングから削除するという何とも残念な展開になったため(うちのヒップホップ・ヘッズの息子が「もうJコール誰も聴かないんじゃね?」と言ってました)、対抗馬がいなくなったホージアの「Too Sweet」が余裕で初のナンバーワンを決めています。来週はアルバムもシングルもあの人の作品で埋め尽くされそうなので、ギリギリ滑り込みで1位取れて良かったねえ。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) We Still Don’t Trust You - Future & Metro Boomin <127,500 pt/2,500枚>
2 (1) (3) Cowboy Carter - Beyonce <99,000 pt/28,261枚*>
3 (4) (4) We Don’t Trust You - Future & Metro Boomin <83,000 pt/336枚*>
4 (5) (59) One Thing At A Time ▲5 - Morgan Wallen <71,000 pt/1,335枚*>
*5 (8) (73) Stick Season ▲ - Noah Kahan <51,000 pt/10,375枚*>
*6 (-) (1) Papercuts - Linkin Park <44,000 pt/20,500枚>
7 (6) (2) Fireworks & Rollerblades - Benson Boone <43,000 pt/1,629枚*>
8 (10) (71) SOS ▲3 - SZA <40,000+ pt/2,066枚*>
9 (11) (171) Dangerous: The Double Album ▲6 - Morgan Wallen <40,000 pt/335枚*>
10 (7) (6) Eternal Sunshine - Ariana Grande <40,000- pt/4,076枚*>

フューチャーメトロ・ブーミンがわずか3週間に2枚のアルバムを1位に送り込むという離れ業を決めた今週の「全米アルバムチャート事情!」、いかがでしたか。最後にいつもの来週1位の予想(チャート集計対象期間:4/19~25)ですが、これはもう既にあちこちで伝えられてるように、テイラーの新作がまたまた恐ろしい勢いで売れてストリーミングされてるようなので、来週はテイラーブッちぎりの首位は間違い無いところ。Midnights』『1989 (Taylor’s Version)』同様、初週ミリオンは既に達成してるので、あとどこまで初週ポイントを伸ばすのかが注目ポイントになりそう。その他ではパール・ジャムがトップ10に入ってくるくらいでしょうか。ではまた来週。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?