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【今週の全米No.1アルバム事情 #28- 2020/5/16付】

コロナの状況もさることながら、検察庁法改正案抗議のツイッター書き込みが異様に盛り上がってますね。抗議の論点の是非は別にして、このコロナ非常時に不急不要の法案を充分な審議もなしに通そうとする政府に対して広い範囲の国民が興味を持ち、意見を表明することはこれまでになかった政治に対する健全な姿勢かも。

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さて今週末のBillboard 200の1位ですが、個人的には予想外の結果に。てっきり5/1に急遽ドロップされたドレイクのミックステープ『Dark Lane Demo Tapes』が余裕で1位をさらっていくもんだと思ってたら、カントリーのケニー・チェズニーの通算19作目の新譜『Here And Now』が233,000ポイント(EAUs、実売222,000枚)という強力なセールスに支えられて、僅か10,000ポイント差でドレイクを押さえて1位に初登場。彼に取っては通算9枚目のNo.1アルバム(カントリー・チャートではなく総合アルバム・チャートで)ということで、カントリー・アーティストとしてはあのガース・ブルックスに並ぶ記録を打ち立てました。この9枚1位というのは、マドンナ、ドレイク、ローリング・ストーンズそしてカニエ・ウェストに並ぶ記録で、歴代同率7位ですから、日本での知名度は皆無に近いのが残念ですが、堂々たるスーパースターぶりを証明したと言えます。

せっかくなのでここで彼の過去のBillboard 200の1位をおさらいしておきましょう(1位日付・週数、タイトル、ポイント/実売枚数)。

2002/5/11(1週)No Shoes, No Shirt, No Problems ▲4(235,000枚)
2004/2/21(1週)When The Sun Goes Down ▲4(550,000枚)
2005/2/12(1週)Be As You Are: Songs From An Old Blue Chair ▲(311,000枚)
2005/11/26(1週)The Road And The Radio ▲3(470,000枚)
2008/11/1(1週)Lucky Old Sun ▲(176,000枚)
2010/10/16(1週)Hemingway’s Whiskey ▲(183,000枚)
2013/5/18(1週)Life On A Rock ●(153,000枚)
2017/11/18(1週)Life In No Shoes Nation ▲(219,000pt/217,000枚)
2020/5/16(1週?)Here And Now(233,000pt/222,000枚)

こうしてみると、2000年代前半は絶大な売上で1位を席巻してたけど2000年代後半から2010年代前半にかけてかなりパワーを落としていたのをここ2作でまた盛り返しているのが判ります。特に前回1位の『Life In No Shoes Nation』の後は3作続けてBillboard 200最高位2位に泣いていただけに、今回の『Here And Now』がドレイクを押さえて1位というのはなかなかの快挙。しかも実売22.2万枚というのはBTSザ・ウィークンドに次ぐ今年3番目の成績ですから、かなりの成績。彼はカントリー・チャートでは23曲ナンバーワンを持つ大スターですが、これまでのHot 100最大のヒット曲は2009年の「Out Last Night」(最高位16位、カントリーチャート1位2週)くらいで決してポップの世界ではヒットメイカーではなく、アルバムアーティストとしての地位を確保していて、今回それをいかんなく発揮したことになります。テンガロン・ストロー・ハットがトレードマークのケニー、芸風としては昔でいうとティム・マグロー、最近だとトーマス・レットあたりに影響を与えてると思われる、トラディショナルなカントリー・スタイルを残しながらも、ポップ・メインストリーム的な魅力も十分もったシンガーで、2016年にあのピンクとコラボった「Setting The World On Fire」(最高位29位、カントリーチャート1位4週)なんて、良質なポップ・ソングだったし、もう少し日本でも知られてもいいと思いますけどね(泣)

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そしてそのケニーに1位は譲ったものの、2位に堂々初登場してきたドレイクの『Dark Lane Demo Tapes』。こちらは223,000ポイント(実売19,000枚)のうち201,000ポイント(2億6,900万回ストリーミング相当)がストリーミング・ポイントで、こちらは先日登場初週は4億ストリーミング、2週目に3.49億ストリーミングを稼いだリル・ウジ・ヴァートに次ぐ今年3番目の記録だったので、ホントに僅差の戦いだったということになります。何しろ先月Hot 100初登場1位だった「Toosie Slide」と、今週Hot 100で7位初登場の、プレイボーイ・カーティをフィーチャーした「Pain 1993」収録ということで人気爆発だったはずなので。で今回はミックステープですが、ドレイクは夏には『Scorpion』以来のフルアルバムが予定されてるので、そちらの初登場ぶりも見物ですな。

今週のトップ10内初登場はこの2枚ですが、今週のHot 100の1位と2位に躍進しているアーティスト2組のアルバムが大きく動いてるので触れておきましょう。まずは先週ビヨンセを新たにフィーチャーしたリミックスでHot 100で4→2位にアップした、ミーガン・ザ・スタリオンの「Savage」の勢いで今週アルバム『Suga』が10→7位に上昇。そしてもっと凄いのは、シングル「Say So」に新たにニッキー・ミナージをフィーチャーしたリミックス・バージョンが今週Hot 100で6→1位に躍り出た、ドージャ・キャット。アルバム『Hot Pink』が圏外19→9位と大きく躍進してます。ニッキー・ミナージとしてはHot 100チャートイン109曲目であのプレスリーと並んだのと、1位になるまでのチャートイン曲数でぶっちぎりの記録を打ち立てた(従来の記録はジャスティン・ビーバーの47曲目)のでした。ニッキー・ミナージってそんなにHot 100ヒットあったの?てな感じなんですが(笑)で、このリミックス版「Say So」、ヴァイナル12インチが発売ということでさっそく購入しました。オリジナルの夢見るようなレトロ・ディスコ的ダンクラ・グルーヴが更にパワーアップしたバージョンで、うーんこれは流行るよなあ。

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さて今週のトップ10おさらいです。(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)

1 (-) (1) Here And Now - Kenny Chesney
2 (-) (1) Dark Lane Demo Tapes - Drake
3 (5) (10) My Turn - Lil Baby ●
4 (2) (3) Blame It On Baby - DaBaby
5 (3) (9) Eternal Atake - Lil Uzi Vert
6 (4) (7) After Hours - The Weeknd
7 (10) (9) Suga - Megan Thee Stallion
8 (6) (35) Hollywood’s Bleeding - Post Malone
9 (19) (27) Hot Pink - Doja Cat
10 (7) (10) YHLQMDLG - Bad Bunny

さて来週の1位予想ですが、対象の5/8-14リリース作品の顔ぶれは結構混戦模様になりそう。多分最右翼は元パラモアのリード・ボーカル、ヘイリー・ウィリアムスの初ソロアルバムのような気がしますが、前作『Begin Again』(2019)は大きくコケたけどそれまでは必ずトップ3に送り込んできたノラ・ジョーンズやカナダ人インド系ラッパーのNAVあたりが来ても全くおかしくないという状況、どうなりますか。ではまた来週。

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