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今週の全米アルバムチャート事情 #176- 2023/3/25付

やりましたね、侍ジャパン!火曜日の準決勝で7回裏ツーアウトまで0-3で負けていたところから奇跡的に盛り返し、最後はとうとう打った村上選手のサヨナラ逆転ツーベースで決勝進出。そして決勝でもとうとうホームランを打ってくれた村上選手と、最後9回裏2アウトでトラウトを三振に斬って取って優勝を決めた大谷翔平の凄かったこと。まるで漫画の世界でした。いやあ興奮したなんてもんじゃありません。興奮しすぎて早くもWBCロスになりそうです。

"One Thing At A Time" by Morgan Wallen

さて一方今週3月25日付のBillboard 200、全米アルバムチャートの1位はWBCとは完全に裏腹にまったく興奮も感動もしない状態でして、先週予想というか恐れたとおり、モーガン・ウォレンの『One Thing At A Time』は48%ポイント減で259,000ポイント(うち実売21,000枚)という、それでも平均の1位のポイント水準の倍以上のポイントでなんなく2週目の1位をキープ。

売上枚数も決して小さくはないけど、今週も何と言ってもストリーミングのポイントがでかくて、オンディマンド・ストリーミング回数3億回超えらしいですわ。これはカントリー・アルバムの週間ストリーミングポイントとしては史上2位で、史上1位は先週のこのアルバムの4億9,800万回だっていうから、どんだけアメリカのカントリー・ファン、モーガン・ウォレン好きなんだよって言う感じでまあ呆れますね。例の「ニガ」発言騒ぎの時にボイコットを決めたグラミー・アカデミーや、CMA(全米カントリー・ミュージック協会)とかがボイコットを引っ込めてノミネート対象にしたりしないことだけ、ホント頼むわ、マジで。

"Ready To Be: 12th Mini Album (EP)" by TWICE

今週のチャートでビックリしたのは、モーガンと対抗できるのはマイリーだけと思ってたら何と、KポップのTWICEのEP『Ready To Be: 12th Mini Album (EP)』が153,000ポイント(うち実売145,500枚で当然アルバム・セールス・チャートぶっちぎり1位)で2位に初登場してきたこと。いや、Kポップのしかもメジャー・アーティストなので、出せば15万ポイントくらいは稼ぐのはわかってたけど、マイリーがそれに届かないというのはちょっと意外でした。彼女達のこれまでの最高位は『Formula Of Love: O+T=<3』(2021)と『Between 1&2: The 11th Mini Album (EP)』(2022)の3位だったので、今回その自己記録を更新したことになりますね。

内容はいつもの90年代チックなタイトでキャッチーなダンス・ポップ・ナンバーが満載の7曲入りEPで、先行シングルの「Set Me Free」や「Moonlight Sunrise」(Hot 100にも入って、全米のケリー・クラークソン・ショーでもライブでやったらしく、YouTubeで映像見れます)など、安心して聴けるナンバーばかりですから、ゆるいKポップファンでも結構飛びついてる子が多いんじゃないかしら。もちろんKポップ・マーケティングの常として、今回も11種類のパターン違いのCDパッケージがリリースされてるらしいのでこの売上になってるわけです。あ、そうそう、それからTWICEには日本人メンバーが3人いるので、これで日本人または日本人正式メンバーのいるアーティストの全米トップ10アルバムは18枚になりました。さてその18枚ってどのアルバム?という質問については来週くらいリストをアップしようと思います。

"Endless Summer Vacation" by Miley Cyrus

そしてそのTWICEに上を行かれて、119,000ポイント(うち実売55,000枚)という普通だったら余裕で1位取れるポイントながら、3位初登場となってしまったのが、マイリー・サイラスの『Endless Summer Vacation』。1月にHot 100の1位に初登場、6週間1位を記録した大ヒット「Flowers」を含むアルバムですが、タイミングが悪いというか、モーガン・ウォーレンどっか行けよというか、今回3位に甘んじています。UKではこのアルバム今週楽々1位を記録してて、「Flowers」も9週目の1位と、去年のハリー・スタイルズの「As It Was」10週1位以来の記録を達成していることを見ると、いかに今のUSのヒット状況が特異なのかが判ろうかというもの。と言っていたら今週「Flowers」、USでも1位に返り咲いたようです。マイリー、強いですね。この曲もマイリーの力強さを感じる曲ですしね。

そして今回のマイリーのアルバムは、前作の『Plastic Heart』(2020年2位)がかなりロック寄りのサウンドだったところからちょっと軸足をシフトしてかなりダンサブルでキャッチーなポップ寄りの楽曲で埋め尽くされてますね。そしてその中心的役割を果たしているのがハリー・スタイルズのアルバムでも重要な役割を担っていたイギリス人プロデューサーのキッド・ハープーン。全12曲のうち6曲を手掛けて、このアルバムのベースラインを固める役割を果たしてます。手堅いアルバム、という感じでメディアの評価もまずまず(メタクリティック79点)のようですね。

ということで今週の上位3枚の争いはかなり高次元の戦いだったわけですが、今週の100位までの初登場は2位と3位の2枚だけで、今週は久しぶりにそれ以外の初登場はゼロでした。というか、200位まで見ても初登場はもう1枚、198位に初登場してるワシントンDC出身のプログレ・メタルバンド、ペリフェリーの7作目のアルバム『Periphery V: Djent Is Not A Genre』のみという少なさで、ちょうどリリースの谷間だったんかなと思います。では今週のトップ10のおさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (2) One Thing At A Time - Morgan Wallen <259,000 pt/21,000枚>
*2 (-) (1) Ready To Be: 12th Mini Album (EP) - TWICE <153,000 pt/145,500枚>
*3 (-) (1) Endless Summer Vacation - Miley Cyrus <119,000 pt/55,000枚>

4 (2) (14) SOS ▲ - SZA <76,000 pt/326枚*>
5 (3) (3) Mañana Será Bonito - Karol G <52,000 pt/924枚*>
6 (5) (21) Midnights ▲2 - Taylor Swift <47,000 pt/9,615枚*>
7 (6) (114) Dangerous: The Double Album ▲4 <39,000 pt/1,945枚*>
8 (7) (15) Heroes & Villains - Metro Boomin <39,000 pt/261枚*>
9 (8) (45) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <36,000 pt/419枚*>
10 (10) (19) Her Loss - Drake & 21 Savage <34,000 pt/102枚*>

侍ジャパンWBC優勝の興奮も冷めやらない中、今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか?さて最後はいつものように来週の1位予想ですが、うーんこれは来週モーガンがどれくらいポイントを減らすかにかかってきますよねえ。実売はもういい加減少なくなるとして、ストリーミングがどのくらい減るかですが、せいぜい減って2~3割減じゃないでしょうかねえ。とすると来週もモーガンは15~16万ポイントは維持することになるわけで、来週のチャート集計期間3/17~23にそれを凌駕する新譜が出そうかといういうと、可能性あるのはU2の過去楽曲の再録アルバムくらいかなあ。ちょっと微妙な気がしますので、7:3くらいの確率で来週もモーガンが1位かもしれません。それ以外でトップ10来そうなのはヒップホップのESTジーくらいでしょうか。ではまた来週。

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