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今週の全米アルバムチャート事情 #161- 2022/12/10付

ビルボードHot 100の年間チャートもいよいよ発表されて、今年もトップ3は何とか的中できてちょっと満足。暦も12月に入って、日本サッカーチームの素晴らしいWCでの活躍も終わり、ここから年末年始までは怒濤の期間。まずは自分の2022年年間ベストアルバム企画のブログをアップしなくては。そして年末までには2/5に発表予定のグラミー賞の52部門予想のブログに着手しなくては。ああ忙しいなあやっぱり師走です。

"Midnights" by Taylor Swift

さて今週12月10日付Billboard 200、全米アルバムチャートの1位はやはり大方の予想どおり、テイラーの『Midnights』が通算5週目の1位をキープ。しかしこの1位、まだまだ続きそうだと思わせるのは、今週のこのアルバムのポイントが151,000ポイントと、先週の177,000ポイントからほとんど減衰してなくて(15%減)、まだあと数週は10万ポイント超えを続けそうな勢いなのと、何と今週はアルバム実売数が先週の57,000枚から60,000枚とわずかながら増えてるってこと。これは今週のチャートの集計期間の初日がサンクスギヴィングホリデーのブラック・フライデーに当たった(=買い物客が改めてこのアルバムを買いに集まった)ということもあるんでしょうが、なかなかこういうパターンないですよね。

これから年末にかけては、各ストリーミング・サービスが「Best Of 2022」的なプレイリストを提供してきて、その中に必ずテイラーのこのアルバムからの曲も含められるんじゃないかと思うので、今週は減っているストリーミング・ポイントが来週以降は盛り返してきて、来週減るであろう売上枚数をカバーするというような何となく安泰なシナリオが見えるテイラー。去年のアデル30』みたいに、サンクスギヴィングあたりに1位を確保したヒットアルバムはそのまま年末まで行ってしまうパターンが多いので、しばらくテイラー天下は続きそうです。

"The Christmas Song" by Nat King Cole

さて今週はトップ10内の初登場はゼロでした。そして先週予想したようにサンクスギヴィングが終わってクリスマス・シーズン本番ということで、先週10位に再登場してきたマイケル・ブブレの『Christmas』が今週4位にジャンプアップした他、この季節お馴染みのクリスマス・アルバムがトップ10内に去年以来の再登場を果たしています。1枚は先週の18位→8位にアップしてきた、大御所ナット・キング・コールの『The Christmas Song』(36,000ポイント)。69週目のチャートインで自己の最高位6位の更新を狙う勢いです。

ナット・キング・コールのクリスマス・ソングというと超鉄板で、様々なアーティストがカバーしている「The Christmas Song (Merry Christmas To You) 」ですが、この曲をコールが録音したのが1946年といいますからクリスマス・ソングでも超定番ですね。このアルバムに収録されてるのは、1961年ステレオ録音のバージョン。「栗が暖炉で弾けて、霜焼けで鼻がヒリヒリするこの季節/合唱隊がクリスマスの歌を歌い、人々はエスキモーみたいな格好で街を行き交うこの季節」と始まる歌い出しで一気にこの季節の気分に持って行ってくれる、この無敵のクリスマス・ソングは、このアルバム収録の他の定番曲共々、やはりこの季節のストリーミング・サービスのプレイリストに必ず顔を出してますので、このアルバム、クリスマス終わるまでは上位にいるでしょうね。

"A Charlie Brown Christmas" by Vince Guaraldi Trio

そしてもう1枚は、先週17位から10位にジャンプアップした、ヴィンス・ガラルディ・トリオの『A Charlie Brown Christmas』(33,000ポイント)。去年もこのブログで触れましたが、あの古典的ピーナッツ・コミックスのクリスマス・アニメ映画のサントラ盤で、アメリカではこの時期かならず再放送されて子供達が見るもうクリスマス・シーズン定番番組のサントラ盤です。去年は折からのヴァイナルブームに乗って、この1965年リリースのアルバムのヴァイナル盤リイシューもあって、最高位6位を記録しましたが、今年もそれくらい行きそう。

個人的には、軽快なピアノによる「Linus And Lucy」がアニメの一場面を思い出させてくれて結構好きなんですが。DVD家にあるから引っ張り出してクリスマスにはまた観てみようかな。子供達が懐かしがること請け合いですね。

"Live At The Fillmore, 1997" by Tom Petty & The Heartbreakers

今週は圏外100位までにも今週11位に上昇してきて来週トップ10入り間違いなしのマライアのクリスマスアルバムを始め、16枚のクリスマスアルバムが躍進中ですが、初登場も4作入ってます。その中で今週初登場一番人気となったのが、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの4枚組、全58曲に及ぶライブ盤『Live At The Fillmore, 1997』。彼らがサンフランシスコの有名ライブハウス、フィルモア劇場で1997年の1〜2月にレジデンシーで出演していた時の最後の6公演から厳選されたかなり良質の音源によるファンにとってはたまらないライブ集です。

特にこのライブ盤が重要だと思うのは、やってる曲の半分以上が彼らが敬愛し影響を受けたと思われる様々なアーティスト達のカバーだということ。詳細知らずに聴き始めていきなりレーナード・スキナードの名演で有名な「Call Me The Breeze」(オリジナルはJ.J. ケール)が聴こえてきたのにはぶっ飛びましたわ。その他にもディラン、バーズ、リトル・リチャード、ジョン・リー・フッカー、ビル・ウィザーズ等等、「こんなのもカバーしてる!」と楽しく聴けること請合い。このレジデンシーは彼らも大いに気に入ってたらしく、ギターのマイク・キャンベルなどは「人生最高のギグの一つだった」と言ってるくらい。彼らが楽しそうに演奏しているのが聴いてても伝わってきます。ちょっとフィジカル購入はキツいので(それでも今週のアルバム・セールス・チャートに3位初登場!)、ストリーミングで楽しんでみて下さい。

"A Family Christmas" by Matteo, Andrea & Virginia Boccelli

続いて53位には、今週の圏外クリスマスアルバム16枚中唯一の初登場を決めている、イタリアの人気テナー歌手、アンドレア・ボッチェリと次男のマテオ(25歳)、娘ヴァージニア(10歳)の3人による微笑ましいクリスマス・アルバム『A Family Christmas』が入って来ています。去る11月12日には、毎年イギリスで開催されるリメンバランス・デー・フェスティバル(第一次大戦戦没者追悼記念式典)にこの3人で出演したらしく、タイミングをうまく捕らえたクリスマス・アルバムということでUKチャートでも先々週5位に急上昇後トップ10から落ちていましたが、今週は11位→4位に再上昇していますね。

内容は「もろびとこぞりて(Joy To The World)」や「飼い葉のおけで(Away In A Manger)」といったクラシカルな定番クリスマス曲は当然として、「Have Yourself A Merry Little Christmas」やホセ・フェリシアーノで有名な「Feliz Navidad」などのポップ・クリスマス定番曲、更にはジョンヨーコの「ハッピー・クリスマス」なんてのもやってて、なかなか楽しいリストになってます。クラシカルなテイストの家庭のホリデー・シーズンには多分うってつけの1枚になってるんでしょう。もちろん今年のSpotifyApple Musicのクリスマス・ソング・リストにも採用されててこの順位になっているに違いないですね。

"3860" by Quando Rondo & YoungBoy Never Broke Again

先週トップ10来るかなあと言っていた、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン(YBNBA)とそのレーベル契約第1号アーティストのクアンド・ロンド(本名:ティクィアン・テレル・バウマン)のラップ・デュオによるミックステープ『3860』は全然そんなことなくて、62位初登場に終わってます。

まあ、これがYBNBAに取っては今年7作目(!)だし、いくら何でもそうそうは大ヒットは続かないことのいい例ではないでしょうか。一方2020年に唯一のアルバム『QPac』が22位を記録しているクアンドにとっては、今回それ以来のトップ100アルバムになってます(その間3作ミックステープ出してますがいずれも100位に届かず)。タイトルは、YBNBAが育ったルイジアナ州バトンルージュの北38番街と、クアンドが関係しているというLAのギャング集団クリップスの一派、ローリン60sの数字を組み合わせたものとのこと。いずれにしてもいつになく殺伐とした雰囲気のトラップ・アルバムなんで自分的にはあまりコメントすることもございません。トラップ好きの人ごめんなさい

"TM" by BrockHampton

そして今週どん尻100位に初登場したのは、先日活動停止を発表したブロックハンプトンが最後に2日連続でリリースしたアルバムの2枚目『TM』。1枚目の『The Family』は先週お伝えしたようにリリース初日のポイントが含まれなかったため、先週はトップ10逃しの15位チャートインでしたが、このアルバムは丸々先週のチャート対象だったにもかかわらず、何故か今週のチャートにこんなところに登場してます。先週『The Family』聴いてたファンが今週こっちのアルバムのストリーミングに一週遅れでわっと集まったってことなんでしょうか。よく判らん。

The Family』がいろんなスタイルの楽曲が盛り込まれたなかなかのクオリティだったのと同様、こちらの『TM』もトラップあり、メインストリーム・ポップあり、オールドスクールなヒップホップチューンありと、それなりの内容になってます。このアルバムリリースの翌日の11月19日に、彼ら最後のショーがLAはハリウッドにあるフォンダ・シアターで行われ、これで正式に活動停止。この後メンバー達のソロ・プロジェクトが出てくるんでしょうねえ。

ではいつものように今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (6) Midnights - Taylor Swift <151,000 pt/60,000枚>
2 (2) (4) Her Loss - Drake & 21 Savage <93,000 pt/443枚*>
3 (3) (30) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <52,000 pt/1,586枚*>
*4 (10) (104) Christmas ▲6 - Michael Buble <47,000 pt/9,617枚*>
5 (4) (7) It’s Only Me - Lil Baby <43,000 pt/117枚*>
6 (5) (99) Dangerous: The Double Album ▲4 - Morgan Wallen <40,000 pt/2,132枚*>
*7 (6) (94) The Highlights - The Weeknd <40,000 pt/1,646枚*>
*8 (18) (69) The Christmas Song ▲6 - Nat King Cole <36,000 pt/3,689枚*>
9 (8) (28) Harry’s House ▲ - Harry Styles <35,000 pt/12,120枚*>
*10 (17) (103) A Charlie Brown Christmas (Soundtrack) ▲5 - Vince Guaraldi Trio <33,000 pt/10,933枚*>

一気にクリスマスムード満載になってきた今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。さて最後にいつもの来週1位予想ですが、先ほどコメントした通り、これから年末にかけてはよほど強力な新譜がドロップされない限り、テイラーの首位は安泰の可能性大。来週も多分まだ10万ポイントを割ってこないでしょう。来週チャート集計期間の12/2-8リリースの新譜でトップ10に入って来そうなのは、カントリーのルーク・ブライアンと、ヒップホップのメトロ・ブーミンくらいですが、いずれも多分5~6万ポイントレベルだと思うので、来週もテイラーの首位6週目はほぼ確定だと思われます。ではまた来週。

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