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今週の全米アルバムチャート事情 #208- 2023/11/4付

今年のMLBポストシーズンもいよいよ大詰め、レンジャーズダイアモンドバックスのワールドシリーズの激闘が展開されてますが、お互い譲らぬ戦いぶりに、2001年ダイモンドバックスランディ・ジョンソンカート・シリングの両エースでヤンキースを破った記憶がまざまざと蘇りますね。ちょっとダイアモンドバックスが劣勢になりつつありますが、ワイルドカード6番手からのWS優勝はあるのか?

"One More Time" by Blink-182

さていよいよ暦は11月に入って今週11月4日付のBillboard 200、全米アルバムチャートの1位は何とブリンク182のオリジナルメンバーが8年ぶりに顔を揃えたアルバム『One More Time…』が125,000ポイント(うち実売が101,000枚と今週のアルバム・セールス1位)と失礼ながら予想外のポイントを叩き出して1位初登場してます。これだけの売上を叩き出した要因としては、11種類のヴァイナル(ヴァイナルだけで49,000枚売ってます)やCD、カセット、TシャツバンドルのCDボックスといったいろんなバージョンを用意したことに加えて、同じ週に時間差で2曲のボートラを追加したデラックス・デジタル・エディションもリリースしたのが大きかったようですね。

ドラムスのトラヴィス・バーカーはここ数年、マシン・ガン・ケリーの台頭に象徴されるエモ・ポップ・パンクのルネッサンス的動きのサポーターとして、いろんなアーティストのプロデュースや共演で活動していた一方、2021年にはリーダーでベースのマーク・ホッパスがガンであることを公表した後完治したことを発表などいろいろある中、2015年にバンドを離脱していたオリジナルのギタリストのトム・ディロングのバンド復帰がアナウンスされて発表された今回のアルバム、彼らにとって2011年の『Neighborhoods』(2位)に続く2回目のリユニオン・アルバムということになりました。去年の今頃から17週間ロック・エアプレイ・チャートの1位を独走していた先行シングルの「Edging」をはじめ、いつものカッとんだポップ・パンクな曲が満載のこのアルバムの1位、ブリンクって結構人気あるんだなあ、というの改めて実感しました。

"Hackney Diamonds" by The Rolling Stones

そして、バッド・バニードレイクがポイントを落としたら1位のチャンスがあるんじゃないか、と言ってた実に18年ぶりのオリジナル・アルバム(2016年の『Blue & Lonesome』はブルースのカバーアルバム)となったザ・ローリング・ストーンズの『Hackney Diamonds』は101,000ポイント(うち実売94,000枚)と何とか10万ポイントは叩き出したものの、3位初登場に終わりました。本国UKでは当然のごとく、アルバムチャート初登場1位を決めています。

この18年の間にチャーリー・ワッツは他界し、オリジナル・メンバーが揃うことはなくなったストーンズですが、今回のアルバムには「Mess It Up」と、エルトン・ジョンをフィーチャーした「Live By The Sword」の2曲、チャーリーのドラムスを使った曲が収録されてるとのこと。しかも後者の曲は、2012年以降ストーンズに参加していなかったビル・ワイマンがベースで入っているという、全盛期のストーンズのメンバーが勢ぞろいした曲になってます。いやいや、それにしてもどの曲も『Some Girls』の頃のストーンズが帰ってきたかのような瑞々しさとテンションと、エネルギーに満ち溢れてて、80代に突入しようとしてるバンドの演奏とは思えないほど。今回ソングライティングも含めてプロデュースを担当したアンドリュー・ワットの存在も、彼らのサウンドにコンテンポラリーな輝きを注入するのに貢献大だったんじゃないでしょうか。サー・ポールのベースをフィーチャーしたカッとびロックンロールナンバー「Bite My Head Off」や、レディ・ガガスティーヴィー・ワンダーをフィーチャーしたゴスペル風のラスト・ナンバー「Sweet Sounds Of Heaven」など、聴きどころ満載のストーンズのアルバム、今年を代表するロック・アルバムになったというのは言い過ぎか。音楽メディアの評判も概ね良好です。

さて今週のトップ10の上位トップ3にはガチのロック・アルバムが2枚も登場するという、最近記憶のないパターンですが、ちょっと調べてみたところ、ガチのロック系バンドがトップ3中2枚を占めていた、というのは2014/8/16付のチャートで、1位がトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズHypnotic Eye』で、2位がエリック・クラプトン&フレンズThe Breeze - An Appreciation Of JJ Cale』だった時以来みたいです。なので今週のこの出来事は9年ぶりの快挙ということですね。

"Pa Las Baby’s y Belikeada" by

一方、11位以下100位までの圏外には今週はわずか2枚が初登場。そのうちの1枚、14位に登場してるのは、今年の大きなトレンドの一つだったリージョナル・メキシカンの5人組、フエルザ・レジーダのたぶん初総合チャートイン・アルバムで8作目の『Pa Las Baby’s y Belikeada』。ご多分に漏れず今年「Ella Baila Sola」(Hot 100 4位)をヒットさせたエスラボン・アルマドや、バッド・バニーとの共演シングル「Un x100to」(同5位)をヒットさせたグルーポ・フォンテラ同様、コリドーと言われる伝統的なメキシコ音楽に今風のテイストをちょっと加えたスタイル。他の2グループ同様、アコギのような弦楽器をかき鳴らしながらスタッカートリズムでトランペットがバックビートを刻むというのは同じですが、彼らに比べるとややビートが強めな感じがします。

それよりもこのグループが特徴的なのは、他の2グループが弦楽器中心で管楽器はトランペットだけなのに対し、何とスーザフォンを吹くメンバーがいること。スーザフォンって知ってますか皆さん(笑)そう、ブラスのマーチング・バンドの最後尾で体より大きい管をかつぎながら超低音を吹く、あの管楽器です。彼らも既にグループ・フォンテラとのコラボヒット「Bebe Dame」(2022年25位)でクロスオーバーヒットを放っていて、このアルバムにも「TQM」(今年34位)と「Sabor Fresa」(同26位)の2曲が収録されてる上に、何とあのマシュメロとのコラボ曲「Harley Quinn」を含む全30曲という大変お得なパッケージなので、リージョナル・メキシカン・ファンには大いに受けてるんでしょうね。

"Christmas" by Cher

そして今週もう一枚の初登場はああ、もうそういう季節か、ハロウィーンも終わったしなあ、という感慨を感じさせてくれる、シェールのクリスマス・アルバム、その名も『Christmas』が32位に初登場してます。意外なことにシェールがクリスマス・アルバム出すのは今回が初めてなんですが、前作も自分がミュージカル映画『Mama Mia! Here We Go Again』に出演したということで全曲アバのカバーアルバム『Dancing Queen』(2018年3位)でしたから、ちゃんとしたオリジナル・アルバムって2013年の『Closer To The Truth』(3位)以降出してないんですよね。まあ、もうオリジナル・アルバム頑張って出す必要もないんでしょうが(笑)。

当然「Run Rudolph Run」「Santa Baby」「Please Come Home For Christmas」といった定番曲もやってますが、例の「Believe」路線のボーカロイドなダンス・ナンバーの「DJ Play A Christmas Song」なんていうオリジナル曲もいくつかやってます。スティーヴィー・ワンダーとのコラボやシンディ・ローパーとのコラボ、更には何とラッパーのタイガとのコラボもやったりしてて、まあ意欲的ではあるなあと感心しますね。ただちょっと全体派手めなので、家で聴くというよりはスポーツバーとかのBGMでかけるとこれからの季節ピッタリくる感じですね。しかしこの人77歳のはずなんですが何なんでしょうね、この年齢不詳ぶり(笑)

以上、今週の100位までの初登場アルバムは都合4枚でした。一方今週のHot 100テイラーの「Cruel Summer」が2週目の1位をキープしている他は特に大きな動きもなくて静かなチャートになってます。後述しますが、来週はドカ盛り必至なので嵐の前の静けさってやつですね。ということで今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-)(1) One More Time… - Blink-182 <125,000 pt/101,000枚>
2 (2) (3) For All The Dogs - Drake <120,000 pt/442枚*>
*3 (-) (1) Hackney Diamonds - The Rolling Stones <101,000 pt/94,000枚>
4 (1) (2) Nadie Sabe Lo Que Va A Pasar Mañana - Bad Bunny <97,000 pt/1,320枚*>
5 (6) (34) One Thing At A Time - Morgan Wallen <69,000 pt/1,678枚*>
*6 (9) (53) Midnights ▲2 - Taylor Swift <52,000 pt/9,085枚*>
7 (8) (218) Lover - Taylor Swift <52,000 pt/10,168枚*>
8 (4) (9) Zach Bryan - Zach Bryan <51,000+ pt/4,666枚*>
9 (7) (6) Nostalgia - Rod Wave <51,000 pt/136枚*>
10 (10) (7) Guts - Olivia Rodrigo <45,000 pt/9,850枚*>

何となく全米アルバムチャート上位に久しぶりに元気なロックが復活したような気がしていい感じの今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつものように来週の1位予想ですが(チャート集計対象期間:10/27〜11/2)、来週の1位はもう既にテイラーの『1989』の再録番で決定ですね。10/27付のスポティファイ・デイリー・チャート1位から21位までと23位がすべてテイラーのこのアルバムの曲と、超ドカ盛り状態です。あとの興味はどこまでポイントを伸ばすかですが、リリース3日で既に50万ポイントを超えてるらしいので、久々のミリオン達成もあるかもしれません。それ以外にトップ10に来そうなのはR&Bシンガーのブレント・ファイアズくらいかなあ。

さてここでちょっとご連絡。私事ですが今度の日曜日から検査入院で一週間ほど入院することになりました。その関係で、来週のこの「全米アルバムチャート事情!」の執筆がチャート日付の11月11日までにできない可能性があります。何とか可能な限り執筆をトライしますが、もし無理な場合は一回お休みとさせて頂くかもしれません。では何もなければまた来週。

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