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今週の全米アルバムチャート事情 #171- 2023/2/18付

嵐のようなグラミーウィークとそこに至るまでのブログラッシュが終わり、ちょっとだけ平和な日々を送っているBoonzzyです(笑)。一方今週は月曜から第57回スーパーボウルで、これまで観た中では多分ベスト・ゲームだと思う、カンザス・シティ・チーフスフィラデルフィア・イーグルスの試合を観て、まだ興奮冷めやらぬところです。戦前はかなりの確率でイーグルス優位、チーフスは少し前に負傷したQBマホームズが完治していて、しかも最高のパフォーマンスをしなければキツいだろうな、と思っていたら、何とその通りのプレイ(イーグルスのQBジェイレン・ハーツも素晴らしいプレーでしたが)に加えて、スーパーボウル記録となる65ヤードのパント・リターンや、ファンブル・ターンオーバーのタッチダウンなど興奮度満点のプレイの連続で38対35という僅差でチーフスが優勝マホームズは2年前の雪辱を果たした形でした。いやあスゴい試合でした。こういうのを見せてくれると、ここのところ続いてる有名ミュージシャンの訃報で暗くなった気持ちも晴れるというものです。皆さんもまだ寒さが続きますが、目前に来ている春まで体調に気を付けて行きましょう。

"SOS" by SZA

さて今週2月18日付のBillboard 200、全米アルバムチャートの1位はやはり先週予想したように、今週も先週とほぼ同じ10万ポイント(うち実売500枚)を維持したSZAの『SOS』が見事首位に返り咲き、通算8週目の1位を決めています

しかし『SOS』、まだ現在はデジタル・ダウンロード以外のフォーマットでのリリースがない中、ほとんどストリーミング・ポイントのみでずっと10万ポイント台を維持(今週のストリーミング・ポイントは99,000ポイントで、収録楽曲がオンデマンド・ストリーミングで1億3500万回ストリーミングされたことになります)してるので、これでCDやヴァイナルがリリースされたらまたポイントが上乗せされることになり、当面強力な新譜が出る週以外は、消去法的に1位を続けて行くことが予想されますね。となると通算1位記録でホイットニーのセカンドアルバム(11週)を抜く可能性も出て来ました。既に女性アーティストとしては2016年アデルの『25』(10週1位)以来、R&B系女性アーティストとしては1994年マライアの『Music Box』(8週1位)以来の記録的ヒットとなっているこのアルバム、来年のグラミー賞では主要部門でのノミネートがどうもかなり堅そうですね

"Queen Of Me" by Shania Twain

そしてそのSZAと1位を争う可能性のある唯一の作品、と言っていたシャナイア・トウェインの6年ぶり、通算6作目になる『Queen Of Me』は38,000ポイント(うち実売34,000枚)と思ったより控えめなポイント数で、今週10位に初登場しています。トップ10アルバムとしては、前作『Now』(2017年1位)以来、通算6枚目になります。そして何とUKでは今週初登場1位シャナイアってイギリスでも人気あるんですなあ。そう思ってクレジット見てたら、今回のアルバム、イギリス人のソングライター達との共作曲が満載

その中でもアルバム冒頭でシングルの「Giddy Up!」、そしてセカンドシングル「Waking Up Dreaming」の共作者クレジットには、BTSの「Dynamite」のソングライティングに招かれて共作した、イギリス人のデイヴィッド・スチュアート(あのユーリズミックスの人ではない)の名前が。いずれもキャッチーなポップ・ナンバーで、アルバム全体のポップさを支えてます。シャナイアというと、デフ・レパードAC/DCとかのプロデュースでも有名なロバート・ジョン・”マット”マット”・ラングが旦那でもありプロデューサーでもあったんですが、知らない間(2008年)に離婚してたんですねえ。15年ぶりにリリースされて見事1位を取った前作『Now』から既に新しい制作スタッフでやってたみたいなんですが、もう20年以上ポップのクロスオーバー・ヒットがなく、最近どうしているのか正直知らなかったんで、先週のグラミー授賞式でいきなり登場した時は「何で今シャナイア?」と思ったんですが、地道に活動してたんですね。おそらくシャナイア自身が共作者を選りすぐったと思われる収録楽曲はどれも彼女らしいキャッチーなものばかりなので、今回のアルバムのヒットもうなずけるというものです。あとはポップ・ヒットがあれば完全復活なんでしょうけど。

今週のトップ10初登場はシャナイアだけですが、今週またまた圏外41位からトップ10内6位にザ・ウィークンドのベスト盤『The Highlights』がこれ何度目?っていうくらいのトップ10内ズームイン復帰。この理由は毎回同じなのでもうここでは繰り返しません。興味ある方は前回このアルバムがズームイン復帰した時に書いたこの記事の内容を見てみて下さい。
もう一枚、トップ10内に復帰してるのは、先週のグラミーで見事最優秀アルバムを受賞したハリー・スタイルズの『Harry’s House』がその影響で9位に復帰してます。それ以外のグラミー効果のチャートアクションは、圏外ではビヨンセの『Renaissance』が24位→11位、スティーヴ・レイシーの『Gemini Rights』が70位→46位、リゾの『Special』が194位→89位、アデルの『30』が134位→93位、そして新人賞を取ったサマラ・ジョイの『Linger Awhile』が158位に初チャートインといったところに現れてますね。

"My 21st Century Blues" by RAYE

さてその圏外11位から100位で初登場はというと、今週はわずか1枚。58位に初登場しているのは、現在女性シンガー070シェイクをフィーチャーした「Escapism」が英米で大ヒット中(全英1位、Hot 100今のところ最高位22位)のイギリス人女性シンガーソングライター、RAYE(レイ)ことレイチェル・アガサ・キーンのデビュー・フルアルバム『My 21st Century Blues』。このアルバム、本国UKでもシャナイアに次いでアルバムチャート2位初登場してます

母親がガーナ系スイス人、父親がイギリス人という今時のマルチレイシャルなRAYEは、2016年のジョナス・ブルーのUKトップ20ヒット「By Your Side」にフィーチャーされたのがシーンに名前を知られた最初で、同じ年には共作者としてクレジットされたジャックス・ジョーンズの全英3位で、2018年のブリット・アウォードで年間最優秀シングルにもノミネートされた「You Don’t Know Me」にもフィーチャーされて、UKではこの年一気にブレイクしてます。翌年にはピンのクレジットで初のUKトップ20ヒット「Decline」(15位)、2020年にはトップ10ヒット「Secrets」(6位)、2021年にジョエル・コリーデヴィッド・ゲッタとのコラボシングル「Bed」が全英3位(Hot 100最高位48位)と着実にヒットの実績を重ねて来て今回の大ブレイクにつながったということのようですね。

ヒットした「Escapism」は失恋の痛みをドラッグや酒に逃避することで紛らわせようという内容の歌詞を、ちょっとトリップ・ホップ風の2020年代にしてはレトロな感じのトラックに乗せてRAYEがディーヴァ風に歌唱しているという曲で、ヨーロッパでは大分TikTokでヴァイラルになったよう。今のUSだと曲調的にはイマイチウケなさそうだけど、詞の内容が共感を呼んでるのかもしれません。これ以外のアルバムの収録曲も全曲共作してますが、ノーザン・ソウルっぽい「The Thrill Is Gone」やディーヴァっぽくスケールの大きいバラードを歌い上げてる「Ice Cream Man」、軽快なR&Bポップ・ナンバー「Worth It」など、なかなか多様な音楽性を持ってるみたいですね。これから今年いっぱい英米を巡るツアー(3/15にはLAのトルバドゥールでライブやるみたいです)に出るみたいなので、アメリカでもこれから人気が出てくるかもしれません。要注目ですね。

ということで今週は100位までの初登場はわずか2枚という意味では地味目なチャートでした。ここでいつものようにトップ10のおさらいです
(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (2) (9) SOS ▲ - SZA <100,000 pt/500枚>
2 (3) (16) Midnights ▲2 - Taylor Swift <62,000 pt/12,588枚*>
3 (1) (2) The Name Chapter: TEMPTATION (EP) - Tomorrow X Together <48,000 pt/44,766枚*>
*4 (6) (109) Dangerous: The Double Album ▲4 <46,000 pt/1,084枚*>
5 (4) (10) Heroes & Villains - Metro Boomin <46,000- pt/566枚*>
*6 (41) (104) The Highlights - The Weeknd <45,000 pt/698枚*>
*7 (8) (40) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <45,000 pt/1,199枚*>
8 (5) (14) Her Loss - Drake & 21 Savage <43,000 pt/279枚*>
*9 (13) (38) Harry’s House ▲ - Harry Styles <38,000 pt/9,900枚*>
*10 (-) (1) Queen Of Me - Shania Twain <38,000 pt/34,000枚>

ということで、SZAが首位に復活した今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの来週1位の予想ですが、来週チャートの集計期間2/10-16にリリースされる新譜でトップ10にガーンと入って来そうなのは久々のパラモアの新譜くらい。それにしても彼らのアルバムが10万ポイントを叩き出すのは厳しいでしょうから、このままだと来週もSZAが首位キープして通算9週目の1位を記録する、というシナリオがかなり濃厚ですね。ではまた来週。

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