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今週の全米アルバムチャート事情 #168- 2023/1/28付

今週強烈な寒波が日本列島を襲う中、皆様はいかがお過ごしでしょうか?日本海側や西日本の雪に見舞われた場所の皆さんのご苦労があまりありませんように。そんな寒波の中、今週火曜日1/24開催の、新宿カブキラウンジでの吉岡正晴さんとのグラミー直前大予想トーク&DJイベント「ソウル・サーチン・ラウンジ」にお越し頂いた方々には改めて感謝致します。また来年もやると思いますので、今回お越しになれなかった皆さんも含め、どうかよろしくお願いします。

"SOS" by SZA

さて今週1月21日付のBillboard 200、全米アルバムチャートの1位はやはり先週の予想通り、年始でビッグ・リリースの新譜もない中、SZAの『SOS』が1993年のジャネット・ジャクソンjanet.』以来初の女性R&Bアーティストによるデビューから6週連続1位、という記録に並びました。先週もお伝えしたように、この上となると1987年のホイットニーのセカンド・アルバムのデビューから11週連続1位の記録になりますからまあ、さすがにこれは厳しいんでしょうね。しかし今週のSZAも119,000ポイント(うち実売500枚強)と先週比わずか4%しかポイントが減衰してないんですよね。同じようにポイントのほとんどがストリーミングのヒップホップ系のリリースが2週目以降はストリーミングのポイントも大きく減衰するのに、このSZAの持ちこたえ具体は特筆ものですね

そしてちょっと調べたところ、2000年以降で6週以上の1位を記録した女性アーティストによるアルバムは計11枚なんですが、そのうち5枚がテイラー、3枚がアデルなんですね。いかにこの二人が21世紀のシーンを席巻し続けているかがよく判ります。ここでその2000年以降の女性アーティストによる6週以上1位のランキングを見てみましょう(1位週数、タイトル、アーティスト、1位を記録した週)。

1.(24 weeks) 21 ▲14 - Adele (2011/3/12-19, 4/2, 4/23, 5/7-6/4, 6/25, 8/6, 8/20, 11/5, 2012/1/14-3/17, 6/23)
2.(11 weeks) Fearless ▲10 - Taylor Swift (2008/11/29, 12/27-2009/2/7, 2/28-3/14)
2.(11 weeks) 1989 ▲9 - Taylor Swift (2014/11/15-29, 12/13-20, 2015/1/3-24, 2/14-21)
4.(10 weeks) 25 ▲11 - Adele (2015/12/12-2016/1/23, 2/13, 3/5-12)
5.(8 weeks) Folklore ▲2 - Taylor Swift (2020/8/8-9/12, 10/3, 10/31)
6.(7 weeks) Red ▲7 - Taylor Swift (2012/11/10-24, 12/22-2013/1/12)
7.(6 weeks) Feels Like Home ▲4 - Norah Jones (2004/2/28-4/3)
7.(6 weeks) I Dreamed A Dream ▲4 - Susan Boyle (2009/12/12-2010/1/16)
7.(6 weeks) Speak Now ▲6 - Taylor Swift (2010/11/13-20, 2011/1/1-22)
7.(6 weeks) 30 - Adele (2021/12/4-2022/1/8)
7.(6 weeks, so far) SOS ● - SZA (2022/12/24-2023/1/28*)

来週もSZAが1位をキープしてこのランキングの順位を上げるか、興味の集まるところです。

"The Highlights" by The Weeknd

さて今週はトップ10内の初登場がゼロ。トップ10内のチャートアクションで目立っているのは何度目かは忘れましたが、またまた圏外36位から5位にズームアップしてトップ10に返り咲いている、ザ・ウィークンドのベスト盤『The Highlights』。これはこれまでにも何度かご説明しているように、アルバム収録の個々の曲のストリーミング・ポイントは、その曲が収録されているアルバムのポイントになるんですが、複数のアルバムに同一の曲が収録されている場合(例えばこのザ・ウィークンドの「Blinding Lights」はアルバム『After Hours』とこの『The Highlights』に収録されてます)、その曲の全てのストリーミング・ポイントが、実際のアルバムセールスが多い方のアルバムに加算されるという、ビルボードの奇妙なチャート・ルールがあるんです!これによって、アルバム・セールスのわずかな上下によって、このベスト盤がチャートを上下に乱高下する、という現象がこれまでも何回も起きていて、今回もそのパターン。ビルボードさん、早くこのルール何とかして下さいね!

"Bin Reaper 3: New Testament" by BabyTron

さてトップ10内初登場はボウズでしたが、今週は圏外100位までにも初登場はわずか1枚、それもジャスト100位初登場のベイビー・トロンの『Bin Reaper 3: New Testament』。去年11月にアルバム『Bin Reaper 3: Old Testament』を69位に初チャートインさせていたミシガン州出身の若手ラッパーですが、Old Testament(旧約聖書)やNew Testament(新約聖書)といったタイトルが暗示するようなクリスチャン・ラッパーではないことは前回登場時にご説明しました(笑)。

一応前作の続編という位置付けのようですが、今回は前作よりはややトラップ色が強いようで、冒頭の「Forever $cams」では「人生は勝つか負けるかだ/人生に引き分けなんてねえ」とクール(カッコいい、という意味とはちょっと違う)な世界観のエモなフロウを展開していてちょっとおっ、と思わせます。まあただのベタベタトラップとはちょっと違うのでちょっと聴く気は起きるかな、という程度です。相変わらずプルプル言ってますがね(笑)。

ということで先週にも増して地味なチャートになっている今週ですが、今週はちょっと新譜リリースが多かったので、来週チャートは少し賑やかになるかもしれません。というところでトップ10のおさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (6) SOS ● - SZA <119,000 pt/500+枚>
2 (2) (13) Midnights ▲2 - Taylor Swift <73,000 pt/18,814枚*>
3 (3) (7) Heroes & Villains - Metro Boomin <56,000 pt/685枚*>
4 (4) (11) Her Loss - Drake & 21 Savage <47,000 pt/158枚*>
*5 (36) (101) The Highlights - The Weeknd <44,000 pt/1,000-枚>
6 (5) (37) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <43,000 pt/707枚*>
7 (6) (106) Dangerous: The Double Album ▲4 <41,000 pt/965枚*>
8 (7) (35) American Heartbreak - Zach Bryan <32,000 pt/1,666枚*>
9 (8) (14) It’s Only Me ● - Lil Baby <29,000 pt/131枚*>
10 (10) (35) Harry’s House ▲ - Harry Styles <24,000 pt/4,772枚*>

ということで100位内で100位初登場のみ1枚というチャートだった今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。最後に恒例の来週の1位予想。来週のチャートの集計対象期間は1/20~26ですが、1/20リリースの新譜の中でSZAにチャレンジできる可能性のありそうなのは、やはりヒップホップ系ということでトリッピー・レッドの5作目のアルバムくらい。しかしこいつにしても初週10万ポイント叩き出せるかどうかやや微妙なので、SZAが2割以上ポイントを落としてこないと厳しいかも。なので来週もSZAが10万ポイントギリギリくらいはキープして、7週目の1位というのが可能性が高いシナリオです。それ以外では、日本のオリコンチャートでもいきなりトップ10入りしたらしい、マネスキンのアルバムがトップ10内に入って来そうです。ではまた来週。


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