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今週の全米No.1アルバム事情 #49 - 2020/10/17付

Facebookで5年ほど前から毎日その日の洋楽一曲をポストしている《Song Of The Day》という企画が昨日で2,000曲目のマイルストーン到達。極力年代、ジャンル、アーティストがかぶらないように、とやってきたが2,000回となると「名球会入りだね」(笑)と言って下さる方もあり、ちょっと感慨にふけってしまった。記念すべき2,000曲目は、ア・テイスト・オブ・ハニーの「I’ll Try Something New」(1982)。先日やっと見れた映画『メイキング・オブ・モータウン』で、スモーキー・ロビンソンの詩人ぶりを説明するのに使われていた曲のカバーだ。そしてマイルストーンに到達したからといって安んじることなく、常に新しいことに挑戦するぞ、という密かな決意も込めた選曲のつもり。そうこうしているうちにこの全米アルバム事情も次回で50回。今のポップ・カルチャーを切り取る興味深い指標としての全米アルバムチャートへのコメンタリー、今後も頑張って続けていきますのでどうぞご愛読を

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ということで今週末のBillboard 200の1位は、やはり先週予想したとおりのヒップホップとK-Popの一騎打ちで、勝ったのはもはやベテランの域に入りつつある、アトランタ出身のラッパー、21サヴェージ(本名:シェヤー・ビン・エイブラハムジョセフ)と、こちらもベテランのヒップホップ・プロデューサーのメトロ・ブーミン(本名:リーランド・タイラー・ウェイン)の3作目になるコラボ・アルバム『Savage Mode II』。171,000ポイント(実売22,000枚)、うちストリーミングポイントが148,000ポイント(オンディマンドストリーミング2億回分相当)という、いかにもヒップホップらしいポイント構成で余裕の1位でした。

前々回のコラボ作EP『Savage Mode』(2016)が23位、前回のアルバム『Without Warning』(2017)が4位だから、今回順調に人気を積み上げて1位を達成したという格好です。メトロ・ブーミンの仕事というと、やはりミゴスリル・ウジ・ヴァートの大ヒット「Bad And Boujee」(2016年1位)、コダック・ブラックTunnel Vision」(2017年6位)、フューチャーMask Off」(同5位)あたりが代表作で、どよーんとしててキャッチーなトラップ・ヒップホップ的なサウンドが特長なんだけど、今回もその路線はがっちり守って、彼らのファンには安定の仕上がり。だから1位なんだろうけどね。Hot 100の方にも初登場9位の「Runnin」を筆頭に、全15曲中13曲がチャートイン(うち6曲がトップ40)という、この手のハイプロファイルのヒップホップ・アルバムではおなじみの状況です。

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そして惜しくも1位を逃して2位に初登場したのは、ご存知K-Popの4人組ガールグループ、ブラックピンクのUSでの初アルバム、その名も『The Album』。110,000ポイント(実売81,000枚、今週のアルバムセールストップ)と思ったよりやや控えめのポイント数だけど、先日初登場13位で最高位を決めたセリーナ・ゴメスとのコラボ・シングル「Ice Cream」(アリアナが共作者としてクレジットされてるね)の余韻がまだ残ってるタイミングだろうから、21サベージ+メトロ・ブーミンがなければ順当に1位だったんだろうな。まあBillboard 200では3枚目のチャートインにして初のトップ10が2位だから文句はないでしょ。

BTSが思いっきり懐古的ディスコR&Bサウンドなのに対してブラックピンクはこの曲も含めて、かなりヒップホップの要素が強い楽曲が多めのようで、カーディBとのコラボ曲(次のシングルか?)なんかもあるね。でも全体アリアナとかに通じる手堅く作られた今どきのポップ・アルバムですね。今週のグローバルチャート(US以外)でもBTSを蹴落として1位なんで、しばらく上位に居座るかもね。UKでも初登場2位とのこと。

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さて今週はR&Bヒップホップ系の初登場が多いな。4位にはコンプトン出身のラッパー、YGの5作目にして5枚目のトップ10アルバムになった『My Life 4Hunnid』が64,000ポイント(実売47,000枚)で初登場。このアルバム、ストリーミング・ポイント(17,000ポイント、231万回オンディマンド・ストリーミング相当)より実売の方が遥かにポイントが大きいという、ヒップホップにしてはなかなか珍しいパターン

この人、フィーチャリングはともかく、ソロやリーディング・クレジットでの大ヒット曲って、ジージーリッチ・ホーミー・クワンをフィーチャーした2013年の「My Hitta」(19位)と2チェインズ、ビッグ・ショーンニッキー・ミナージュをフィーチャーした2018年の「Big Bank」(16位)くらいで、これがこいつのシグナチャー・トラック!みたいのがないのに、アルバム出せば必ずトップ10、というが不思議。今回もHot 100には一曲もチャートインされてないしなあ。ヒップホップヘッズの息子に今度聞いておこう。

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続いて5位には、「トラップソウル」という独自のスタイルでデビュー以来独自の地位を確保してるブライソン・ティラーの3作目『Anniversary』が57,000ポイント(実売4,000枚)で初登場。彼の場合、YGと逆でどちらかというとR&B寄りのアーティストなのに実売よりストリーミングの方が遥かにポイントが高い(52,000ポイント)という不思議なパターン。アルバムタイトルは、このアルバムのリリース日が、彼のデビュー作『Trapsoul』(2016年8位)のリリース日からちょうど5周年目にあたるからということらしい。

音的にはザ・ウィークンドをもう少しだけトラップ寄りにしただけで、スタイルはよく似てるだけに、この人も出せば今どきはそれなりに売れるアーティストなんでしょうね。Hot 100の方にも、ドレイクをフィーチャーした「Outta Time」(48位)を筆頭に3曲ほど初登場してます。

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今週のトップ10最後の初登場は、7位に入ってきた、ロサンゼルス出身の3人組インディ・ポップ・バンド、LANY(ロサンゼルスとNYの頭文字だそうで)の3作目『Mama’s Boy』が55,000ポイント(実売46,000枚)で来てます。前2作(2017年のデビュー作『LANY』と2018年の『Malibu Nights』)はいずれも30位台最高位だったので、今回大きく躍進。ちょっと聴いた感じ、ワンリパブリック以降の2010年代メインストリーム感満載の、エレクトロなポップ・ソングを気持ちよく聴かせてくれるバンドのようで、この「Is This The Last Time」あたりは初期コールドプレイキーンあたりの地味なスケール感も感じさせて(変な表現だな)個人的には結構気に入りました。もう少し聴き込んでみて、いい感じだったらレコード買おうかな。

ということで今週のトップ10おさらいです。先週からガラリと半分入れ替わり。先週名前を出したボン・ジョヴィは19位、マライアは31位初登場でした。なお、エディ・バン・ヘイレンの死去の関係で、ヴァン・ヘイレンのファーストが30位、『1984』が45位に再登場しています(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

*1 (-) (1) Savage Mode II - 21 Savage & Metro Boomin
*2 (-) (1) The Album - BLACKPINK

3 (4) (14) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
*4 (-) (1) My Life 4Hunnid - YG
*5 (-) (1) A N N I V E R S A R Y - Bryson Tiller

6 (1) (2) Tickets To My Downfall - Machine Gun Kelly
*7 (-) (1) Mama’s Boy - LANY
8 (6) (13) Legends Never Die - Juice WRLD
9 (9) (4) Top - YoungBoy Never Broke Again
10 (12) (32) My Turn ▲2 - Lil Baby

さて来週の1位予想ですが、対象リリース期間の10/9-15リリース予定の作品はどれも比較的小粒のものが大印ですが、強いて言うなら過去3作中2作が1位(前作は3位)のトレイ・ソングズくらいかなあ。ひょっとするとコンテンポラリー・クリスチャンのベテラン、クリス・トムリンのクリスマス・アルバムなんてなのが来たりして。ということでまた来週。

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