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今週の全米No.1アルバム事情 #75 - 2021/4/17付

いやあ、やりましたね、松山英樹選手。日本初、いやアジア人初のマスターズ制覇。今週はこの話題だけでご飯3杯くらい軽くいけそうです(笑)。しかし今回の彼が最も凄かったと思うのは、3日目のイーグル・バーディラッシュではなく、最終日15番でもう優勝確定かと思われた時にロング3打目を池に打込み、あわや崩れるかと思われたところからしっかり踏ん張って、結局最終日は一度もリードを渡すことなく優勝した(最後のパーパット外しはご愛敬でしたが)ことだと思います。やはり自分を信じて常にベストを尽くすことの重要性を改めて強く教えてくれた、そんな啓示に富んだ優勝だったと思います。松山選手おめでとう!

もう一つ。今週Hot 100の方ではグラミー賞で70年代ソウルファン涙もののパフォーマンスを見せてくれた、ブルーノ・マーズアンダーソン・パークシルク・ソニックの「Leave The Door Open」がチャートイン5週目で見事1位を獲得してます。こちらもおめでとう!なお、今週はちょっと遅くなりましたが、この記事と連動のポッドキャスト配信しますのでそちらもよろしく。

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さて今週のBillboard 200の1位、先週の予想でデミ・ロヴァートの2018年のOD事故から復帰後最初のアルバムが来るのでは!と言ってたんですが、そのデミのアルバム、わずか1,000ポイントの僅差で2位初登場止まり。代わりに1位を押さえたのは、ジャスティン・ビーバーの『Justice』でした。先々週あのモーガン・ウォレンを1位から引きずり下ろした後先週はロッド・ウェイヴに1位を明け渡していたジャスティン、今週は75,000ポイント(実売6,000枚)と先週からいずれも落としているんですが、チャート全体の商いが薄い中、消去法的に2週目の1位に返り咲いたというわけ。まあ、ダニエル・シーザーギヴィオンを従えたシングル「Peaches」はHot 100で先週の2位から3位にダウンながら星印付とまだまだ人気は維持しているみたいなので、ここはジャスティンの支持層の底力が支えた1位返り咲きということなのでしょう。ただポイント25%落としての1位なので星印はついてません。

そのアルバムから今週はストレートなラブ・ソングの「Anyone」のPVを。しかしこのビデオの主人公、ジャスティンにそっくりなんですがタトゥーがないのでそっくりさんなのか、CGなのか。

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そのジャスティンにわずか1,000ポイント差で2位に甘んじたのが、今週初登場のデミ・ロヴァートの『Dancing With The Devil…The Art Of Starting Over』といういかにもなタイトルのアルバム。しかし総合ポイントの74,000ポイントのうち、実売枚数が38,000枚と、今週のアルバムセールス・ナンバーワンを確保してますから、実力的には1位に匹敵する成績だったと言っていいでしょう。

何しろ今回の復帰作のプロモーションが力入っていて、リリースに合わせてYouTubeで先月末から4つのエピソードによるドキュメンタリー動画『Demi Lovato: Dancing With The Devil』をリリースしたり、大手小売チェーンのターゲットでの販売限定のボートラ付CDを出したり、自分のサイトでサイン入りCDを販売したり、ジャケ違いバージョンのCDを出したりとまあいろんな手で売りにかかってたからもっと来ると思ったんですがね。シングルもタイトルナンバーが56位Hot 100初登場が一番人気なので、思ったほどの反響は得られなかったということでしょうか。

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今週のトップ10は先週の賑やかさとはうって変わって、初登場はデミ・ロヴァートの他には5位に飛び込んできたNYはブロンクス出身のラッパー、リル・ティジェイの2枚めのアルバム『Destined 2 Win』のみ。ポロGのヒット「Pop Out」(2019年全米11位)にフィーチャーされてその名前が知られるようになった勢いで前作のデビュー・アルバム『True 2 Myself』(2019)も5位初登場とブレイクした若干19歳のラッパーです。

昨年はあの故ポップ・スモークのシングル「Mood Swings」(最高位17位)にフィーチャーされてるなー、と思ってたら直近では今年2月に、ヒップホップ・ソウルシンガーの6LACK(ブラック、と読みます)をフィーチャーしたシングル「Calling My Phone」が、いきなりオリヴィア・ロドリゴの「Drivers License」、アリアナの「34+35」に続くHot 100の3位に初登場するという大ブレイク。ぐっと大人の雰囲気のこのヒットに乗って今回リリースしたアルバムも62,000ポイント(実売3,000枚)でめでたくトップ10入り。基本的にはトラップ・ドリル系のエモ中心のラッパーなので、このまま成長すれば、ジュースWRLDとかポップ・スモークのいなくなっている穴を埋める存在になるかもしれません。ならないかもしれないけど。

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今週トップ10圏外はこちらも先週から一点して100位内に初登場ゼロという寂しい状況ですが、一つご紹介しておきたいのは、先日ドラッグODの後心不全で50歳の若さで他界したDMXのベスト、これが73位に再エントリーしています。当然訃報を受けての再エントリーですが、DMXといえば1998年から2003年にかけて『It’s Dark And Hell Is Hot』『Flesh Of My Flesh, Blood Of My Blood』『…And Then There Was X』『The Great Depression』『Grand Champ』と5作連続Billboard 200初登場1位という当時としては絶大な支持を勝ち得たラッパー。

そのダークな作風とダミ声のラップ・スタイルは一時期圧倒的な存在感でしたが、ティーンエイジャー時代から断ち切れなかったドラッグの魔手に最後はやられてしまいました。その後のラッパー達にも大きな影響を与えた偉大なる無頼ラッパー、DMXの早すぎた他界。心から冥福を祈ります。では今週のトップ10おさらい(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

1 (2) (3) Justice - Justin Bieber
*2 (-) (1) Dancing With The Devil…The Art Of Starting Over - Demi Lovato
3 (1) (2) SoulFly - Rod Wave
4 (5) (13) Dangerous: The Double Album - Morgan Wallen
*5 (-) (1) Destined 2 Win - Lil Tjay
6 (6) (9) The Highlights - The Weeknd
7 (7) (40) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
8 (4) (2) My Savior - Carrie Underwood
9 (9) (53) Future Nostalgia ▲ - Dua Lipa
*10 (14) (74) What You See Is What You Get ▲2- Luke Combs

さて来週の1位予想ですが、対象期間4/9-15のリリースの中で燦然と光ってるのが、昔の自分の作品の原盤権をジャスティン・ビーバーのマネージャー、スクーター・ブラウンに買われてしまったテイラーが、その反撃として始めた自作品の再録音プロジェクトの第1弾、2009年の大ヒットアルバム『Fearless』の再録盤。テイラーファンは間違いなくこぞって買うでしょうから、来週はこれがぶっちぎりでしょうね。ではまた来週。


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