今週の全米アルバムチャート事情 #219- 2024/1/20付
先週末はゴルフのソニーオープン・イン・ハワイで蝉川選手があわや優勝争いか?と思うほどの躍進を見せ、松山選手も最終日伸ばして最低限の面目を保つという、久しぶりに観てて胸がワクワクするマッチでした。NFLもプレイオフ真っ最中で、来月のスーパーボウルに向けて盛り上がっている様子。寒い冬もスポーツが熱い日々が続く毎日、お互いに体調には気を付けて音楽も楽しみましょうね。
また先週からこのブログと並行してスタートしている例年恒例の、グラミー賞大予想ブログ・シリーズも、ポップ、ダンス/エレクトロニック、ロック/オルタナ、R&Bそしてカントリーと5つのブログをアップしてますので、こちらの方も是非一度ご覧下さい。そしていよいよ今年の吉岡正晴さんとのグラミー賞大予想DJ & トークイベント『ソウルサーチン・ラウンジ』も来週火曜日、1/23に迫りました。毎回お馴染みの新宿カブキラウンジで19時から熱ーくグラミーを語って、音源かけまくりますので、是非下記の吉岡さんのnoteの記事で詳細確認の上、お立ち寄り下さい。
さて今週の全米アルバムチャート、1月20日付のBillboard 200の1位ですが、ああやっぱりなあ、先週懸念していたように今週わずか4%のポイント減でこの期に及んでいらん踏ん張りを見せたモーガン野郎の『One Thing At A Time』が61,000ポイント(うち実売2,000枚)が消去法的に首位に復帰、通算17週目の1位をマークしてしまいました。17週1位というのは2012年に24週1位を記録したアデルの『21』以来の長期政権。このアルバムがそれだけの長い間全米で最も多くの人に聴かれたというのは間違いないとしても、特に素晴らしい名盤!というわけでもなく、今時のカントリーらしくトラップビートやヒップホップっぽい手法が感じられる曲もあってコンテンポラリーと言えばそうだけど、その根底にはビールとウィスキー呑んで、トラック乗って、振られた彼女を思い出して、時々イエスが登場するといった百年一日のような昔ながらのカントリー音楽の価値観をそのまま歌ってるというつまらなさ。
まあでも来週にはようやくいろんな強力新譜も登場するみたいだし、今週のこの1位でモーガン野郎のナンバーワンはそろそろ終わりにして欲しいですね。というかこのアルバム、去年の3/18付チャートでリリースと同時に1位初登場して以来今週で45週目になりますが、6位以下に落ちたことないんですよね。前作の『Dangerous: The Double Album』も初登場1位から49週間トップ10にチャートインして、1週だけクリスマス・アルバムに押し出された翌週にはまたトップ10復帰、結局通算100週実質トップ10にいたっていう「前科」もありますから(結局その後も3週後にトップ10返り咲いて、結局通算137週トップ10在位)、このアルバムも何だかんだいいながらまだ当分この辺でうろうろしてるんだろうなあ。ホンマ鬱陶しいわ。
さて例によってこの時期トップ10内は初登場も大きな動きもなく、11位以下圏外100位までに(というか200位まででも)ようやく4週間ぶりに1枚だけ初登場がチャートインしてきたので、そちらをご紹介。唯一の今週の初登場は36位にチャートインしてきた、ルイス・R・コンリケというメキシコ人シンガーによるアルバム『Corridos Bélicos, Vol. IV』。もちろん彼に取ってのBB200初チャートインですが、メキシコ人ということと、アルバムタイトルから言って、去年全米を席巻したリージョナル・メキシカン・ミュージックの音楽スタイル、コリドーの楽曲で作り上げられたアルバム。アコギをかき鳴らし、トロンボーンやホルンを吹き鳴らし、アコーディオンを演奏し、いなたいメロディと哀愁漂う曲で埋められたこのアルバムを聴くと、改めてリージョナル・メキシカンがすっかり全米で一般的な音楽ジャンルとして市民権を得たことを実感しますねえ。去年チャートで躍動したペソ・プルーマ、フエルザ・レジーダ、ナタナエル・カノーといった既に名が売れたミュージシャン達がコラボしていることも、こんな高い順位で初登場したことにつながってると思われます。
ただ、このルイス君がやっているコリドーはただのコリドーではなく、アルバムタイトルにもある「コリドース・ベリーコス(戦争コリドーの意)」という彼が造り出したと言われるコリドーのスタイル。何が普通のコリドーと違うかというと、曲調はのどかなんですが、何と歌詞の内容がすべて麻薬密売とそれにかかわる抗争を取り扱ったものだというから、さすが麻薬密売大国メキシコというか何と言うか、かなり物騒な音楽スタイルのようです。有名小説家ドン・ウィンズローの作品を思い出しますね。実際、ペソ・プルーマとデュエットしている「Pixelados」では、麻薬カルテルとの戦争で手榴弾発射機やM4ライフルで応戦するぞ、といういやいやそれ危ないでしょう、という内容らしく。こういう作品がこんな上位でチャートインする状況、あまりぞっとしませんよねえ。
ということで久しぶりに初登場、と思ったら物騒な作品だったという今週の全米アルバムチャートですが、Hot 100の方はアルバム同様静かな週で、先週クリスマス・ソングがごっそり抜けた後に一ヶ月ぶりに首位に返り咲いた、ジャック・ハーロウの「Lovin On Me」が通算2週目の1位を記録してます。ただこれも今週限りで、来週はアリアナの新曲がかなり初週ストリーミングを稼いで1/12付のスポティファイ・デイリー・チャートのぶっちぎり1位なので、来週の初登場1位は間違いないでしょうね。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
1 (2) (45) One Thing At A Time - Morgan Wallen <61,000 pt/2,290枚*>
2 (3) (14) For All The Dogs - Drake <58,000 pt/98枚*>
3 (1) (11) 1989 (Taylor’s Version) - Taylor Swift <56,000 pt/17,638枚*>
4 (4) (5) Pink Friday 2 - Nicki Minaj <52,000 pt/5,103枚*>
*5 (8) (59) Stick Season ● - Noah Kahan <52,000 pt/4,808枚*>
6 (7) (57) SOS ▲3 - SZA <43,000+ pt/2,430枚*>
7 (5) (64) Midnights ▲2 - Taylor Swift <43,000 pt/11,199枚*>
8 (6) (229) Lover ▲3 - Taylor Swift <42,000 pt/9,547枚*>
9 (9) (20) Zach Bryan ● - Zach Bryan <39,000 pt/2,106枚*>
10 (10) (181) Folklore ▲2 - Taylor Swift <34,000 pt/10,529枚*>
まだまだ動きも少ないどころか、今週はモーガン野郎が首位に復帰してしまった今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの来週の一位予想(チャート集計対象期間:1/12~18)ですが、今週くらいからようやく新譜リリース・スケジュールも少しずつ賑やかになってきて、来週のチャートではシックスナイン(6ix9ine)、キッド・カディ、カリ・ウチズといったR&B/ヒップホップ勢がトップ10に登場しそう。そして1位は、1/12付のスポティファイ・デイリー・チャート上位を独占中の21サヴェージの新作が、多分モーガン野郎を気持ち良く首位から引きずり下ろしてくれそうです。ではまた来週。
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