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DJ Boonzzyの第66回グラミー賞大予想#6〜カントリー部門

このグラミー賞予想ブログを書いていたら、サー・エルトン・ジョンがドジャー・スタジアムでのフェアウェル・コンサート・ライブを記録したディズニー・プラスのドキュメンタリー『Elton John Live: Farewell from Doger Stadium』で、昨日発表された第75回プライムタイム・エミー賞を受賞して、通算19人目のEGOT(エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞すべての受賞者)になった、というニュースが飛び込んで来ました。サー・エルトンおめでとう!エルトンは、パフォーミング・ミュージシャンとしてはマーヴィン・ハムリッシュ(1995年達成)、ジョン・レジェンド(2018年達成)、ジェニファー・ハドソン(2022年達成)に続く4人目のEGOTということになります。その彼が最初のグラミーを受賞したのは意外と最近で、1987年第29回、「That's What Friends Are For」を歌ったディオンヌ&フレンズの一員として、最優秀デュオまたはグループ(ボーカル付)ポップ・パフォーマンス部門を受賞した時でした。ミュージシャンとして一番受賞の機会が少なさそうなトニー賞を受賞して、76歳9ヶ月でEGOTコンプリートは歴代2番目の高齢達成になるそうです。同じようにあとトニー賞取ればEGOT達成、というリーチ状態なパフォーミング・ミュージシャンはアデルシェール、H.E.R.、サー・ポールなど11人もいるそうなので、同様のニュースが来年また聴けるといいですね。では、グラミー賞予想ブログ、カントリー部門です。


24.最優秀カントリー・ソロ・パフォーマンス部門

○ In Your Love - Tyler Childers
  Buried - Brandy Clark
◎ Fast Car - Luke Combs
  The Last Thing On My Mind - Dolly Parton
✗ White Horse - Chris Stapleton

毎年この部門の予想に当たって参照している、カントリー界2大アウォード、CMA(カントリーミュージック協会)アウォードACM(カントリーミュージック・アカデミー)アウォードの前年の結果がここ最近は年々グラミーのノミネーションの顔ぶれとのズレが大きくなってきていますが、昨年11月発表のCMAはとにかく、昨年5月にもう発表されているACMアウォードは半分以上は2022年の作品対象なので、もはや今回のグラミー予想の参考度合いは薄くなってしまってます。それでも両方のアウォードで共通して去年圧倒的な支持を受けているのはもはやベテランのクリス・ステイプルトンと、両方のアウォードで一昨年最優秀新人賞を受賞していながら、グラミー新人賞部門からは全く無視されてしまっているレイニー・ウィルソンの2人。特にレイニー・ウィルソンは今回のCMAでは「年間最優秀エンターテイナー」「年間最優秀女性ボーカリスト」「年間最優秀アルバム」の3部門、ACMでも「年間最優秀女性ボーカリスト」「年間最優秀アルバム」を受賞、正しくカントリー界のアウォード総なめ状態でした。

では、この2人、特にレイニー・ウィルソングラミーでも圧倒的に強いかというと、それがそうも行かないところがミソでして(笑)。例えばこのソロ部門、レイニー・ウィルソンは影も形もない代わりに、どちらのアウォードでもノミネートされていなかったタイラー・チルダーズブランディ・クラーク、ドリー・パートン御大がノミネートされてるという、グラミーいつものネジレ状態。というか、グラミー・アカデミーの選考視点が必ずしもCMAACMと同じではないということなんだと思いますが。で、その中で本命◎は、というとポップ・クロスオーバーとしても昨年大ヒット(最高位2位、年間でも8位)、CMAでは見事年間最優秀シングルとソング・オブ・ジ・イヤーを受賞(こちらは作者のトレイシー・チャップマンですが)した、ルーク・コムズの「Fast Car」が順当ですね。ルーク・コムズはこの曲のヒットもあって、ACMでも年間最優秀エンターテイナーと男性アーティスト部門にノミネートされてます。

一方対抗○として有力そうなのは、CMAで最優秀男性ボーカリストを受賞、AMCでは最優秀エンターテイナー受賞という圧倒的な存在感を示しているクリス・ステイプルトン、ということに普通なるのですが、ここでこのグラミーのみにノミネートされているタイラー・チルダーズの存在が大いに気になるのです。トラディショナル・カントリー・シンガーソングライターのスタイルながら、自作曲中心のゴスペル・アルバムを発表したり、ブラック・ライヴス・マターに反応して黒人差別の歴史を伝統的プロテストソングを集めたアルバムで表現したりと、やってることがロックでパンクな彼の今回の正統派カントリー・アルバムは、なかなか伝統的カントリー界では評価されにくいけど、多様性を標榜するグラミーだからこそ存在感を発揮するんじゃないか、と思うのです。なのでここは、PVに1950年代のケンタッキー炭鉱で働くゲイの炭鉱夫のカップルが登場する、タイラーの美しいヒット曲「In Your Love」に対抗○、クリスには穴✗で勘弁してもらうことにしました。

25.最優秀カントリー・デュオ/グループ・パフォーマンス部門

  High Note - Dierks Bentley featuring Billy Strings
  Nobody’s Nobody - Brothers Osborne
◎ I Remember Everything - Zach Bryan featuring Kacey Musgraves
  KIssing Your Picture (Is So Cold) - Vince Gill & Paul Franklin
○ Save Me - Jelly Roll With Lainey Wilson
✗ We Don’t Fight Anymore - Carly Pearce featuring Chris Stapleton

このデュオ・グループ部門も、毎年カントリー2大アウォードの受賞者とのネジレが顕著な部門CMAでは「年間最優秀ボーカルグループ」は過去6年連続オールド・ドミニオンが受賞してますが、その間グラミーでのノミネーションはわずか1回、もちろん受賞してませんCMAの「年間最優秀デュオ」はもう少しましで、ここ3年連続ブラザーズ・オズボーンが受賞してる一方、グラミーでもここ9年連続ノミネートされながらも、受賞はわずか1回(2022年第64回)とほぼ相関関係性が見られない状態です

そんなところに、自分がROYとSOY両方にノミネート予想したのに、全くグラミー主要4部門に無視されたザック・ブラウンとケイシー・マスグレイヴスのこの曲がノミネートされているとあれば、もうこれを本命◎とするしかありませんグラミーザックに冷たいのは、今回この曲や彼のアルバムが主要4部門から外れたことのみならず、最優秀新人賞部門からも全くシカトされているので判ってるんですが、さすがにこの並びでこの曲は無視できないだろう、ということで自信持っての本命◎予想します。ちなみにザックACMの最優秀新人賞を受賞してますね。

対抗○は、こちらはCMAの最優秀新人賞を受賞、グラミー最優秀新人にもノミネートされてるジェリー・ロールと、こちらも最優秀新人部門から無視されたレイニー・ウィルソンのデュエット「Save Me」に。そして穴✗をブラザーズ・オズボーンに付けようかなあ、と思ったんですが、カーリー・ピアスとデュエットしてるクリス・ステイプルトンの名前がどうも光ってる気がするので、こちらを穴✗にします。ブラザーズ・オズボーン、すまん

26.最優秀カントリー・ソング部門(作者に与えられる賞)

  Buried - Brandy Clark (Brandy Clark & Jessie Jo Dillon)
◎ I Remember Everything - Zach Bryan featuring Kacey Musgraves (Zach Bryan & Kacey Musgraves)
○ In Your Love - Tyler Childers (Tyler Childers & Geno Seale)

  Last Night - Morgan Wallen (John Byron, Ashley Gorley, Jacob Kasher Hindlin & Ryan Vojtesak)
✗ White Horse - Chris Stapleton (Chris Stapleton & Dan Wilson)

この部門で驚いたのは、例の差別的発言騒ぎのこともあり、これまで一切グラミーのノミネーションに登場してこなかったモーガン野郎が、昨年のHot 100年間ナンバーワン・ソング「Last Night」でノミネートされていること。ただこの部門は作者への賞なので、この曲を書いてないモーガン野郎は、仮にこの曲が受賞してもグラミーはもらえない、ということでアカデミーがさすがの年間ナンバーワンヒットへのリスペクトで選んだのかな、と推測しています。でも一方、CMAのソング・オブ・ジ・イヤー受賞した「Fast Car」が影も形もないという、まことに奇妙な状況になってます。主要部門のSOYにもノミネートされてないということも含めて(「Dance The Night」とかノミネートするんだったら「Fast Car」だろ!)これも随分と片手落ちのノミネーションリストではないでしょうか。

そうすると、ここで本命◎を付けるべきはやはり何と言ってもザックケイシーの「I Remember Everything」ということになるでしょうねえ。Hot 100でも1位になりましたが、カントリー・ソング・チャートでも15週間1位を現在も継続中のこの曲、主要部門のSOYから無視されたわけなので、ここでガッチリ受賞してもらわないと困りますよね。
対抗○はこの部門既に2回(2018年60回、2022年64回)受賞しているクリス・ステイプルトンが、ダン・ウィルソン(=90年代の一発屋セミソニック)と書いたロック調のカントリー・ソングが強そうではあるのですが、一方でソロ部門でも静かな存在感を見せていたタイラー・チルダーズの美しいバラードも捨てがたく、悩んだ結果対抗○タイラー、穴✗クリスにしました。クリス、すまん

27.最優秀カントリー・アルバム部門

  Rolling Up The Welcome Mat - Kelsea Ballerini
  Brothers Osborne - Brothers Osborne
◎ Zach Bryan - Zach Bryan
✗ Rustin’ In The Rain - Tyler Childers
○ Bell Bottom Country - Lainey Wilson

そしてCMAAMC両アウォード結果を踏まえて予想するとしたら、この部門はもうレイニー・ウィルソンの70年代ロックやR&Bの香りがほとばしるようなアルバムが本命◎になりそうではあるのですが(4ノン・ブロンズの「What’s Up」のカッコいいカバーには結構そそられました)、やっぱここはザックがいる以上、ザック一推しの自分としてはザックに本命◎付けざるを得ないです。何しろ自分の年間アルバムランキングではSZAに次ぐ2位に挙げてますし、絶対主要部門の最優秀アルバムにノミネートされると思ってましたから、ここにしかいない以上、ここで取らなきゃいかんでしょう。ということでカントリー4部門中3部門でザックが本命◎ですが、充分その資格はあるし、可能性もかなり高いと思ってます

従って対抗○はレイニー・ウィルソン、そして穴✗はアルバム全体でいうと、この2枚にはやはりちょっと見劣りしてしまうものの、美しい「In Your Eyes」や、クリス・クリストファーソンの「Help Me Make It Through The Night」のオリジナルへのリスペクトを強く感じる渋いカバーが収録のタイラーのアルバムに付けておきます(自分の年間アルバムランキングでは37位に入れてました)。

ということでカントリー部門の予想でした。全部で12本のブログシリーズの予定なので、ここでちょうど半分。次は去年までだとジャズ部門の予想の番なんですが、今年は大きな主要部門の統合再編によって、このカントリー部門とアメリカン・ルーツ・ミュージック部門が統合されたので、順番を変えて次はアメリカン・ルーツ・ミュージック部門の予想になります。乞うご期待。

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