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今週の全米No.1アルバム事情 #46 - 2020/9/26付

この週末、世の中は4連休ということですっかり平常モード復帰の感じでしたね。折から気候も素晴らしい秋本番の感じになってきたので、つい気持ちが誘われるのもよく判ります。せいぜい感染拡大防止には一人一人が留意しましょうね。

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さて今週末のBillboard 200の1位、やはり先週の読みどおり、ここのところ出せば必ず1位という、若手ラッパーの最右翼の一人、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインが昨年10月の『AI YoungBoy 2』(110,000ポイント)、今年5月の『38 Baby 2』(67,000ポイント)に続いて、わずか1年足らずの間に3枚目の『Top』を初登場1位に送りこんできました。今回は126,000ポイント(実売19,000枚)と、過去2作に比べると総合ポイントも、実売枚数もレベルが上がって来ていて(過去2作の1位の実売はちなみに3,000枚、4,000枚だったので大飛躍です)、着実にこの1年でファンベースを積み上げてきているのが判ります。

もともとエモっぽいスタイルで、楽曲の感じもフロウのスタイルも結構キャッチーなYBNBAだし、今回の新作もそのスタイルを維持して、いかにも売れそう!って感じの今どきのヒップホップ作品。ベタなトラップ・スタイルとは一味違うところも彼の独自性になってる気がします。

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そして90年代からの洋楽ファンには今週嬉しいのは、3年ぶりの新譜『We Are Chaos』を31,000ポイント(実売28,000枚)で8位初登場に送りこんで来たマリリン・マンソン!
そしてこのアルバム、単純に久しぶりのマリマンのアルバム、というだけでなく、いろんな意味で話題作なんです。まず、プロデュースしているのは、マリマン本人とシューター・ジェニングスそう、あのアウトロー・カントリーの雄、ウェイロン・ジェニングスの息子のシューターなんです。一見突飛に見えるこの組み合わせ、実は今から7年前の2013年に、ケーブルチャネルのFXで放送された、カリフォルニアのバイカー集団を中心にしたクライム・ドラマ『Sons Of Anarchy』のプロデューサーがこの二人に番組のために共作を依頼したのがきっかけでつながったとのこと(マリマンはその後のシーズンでドラマにも出演したらしい)。

その後2人はシューターが、あの!ジョルジオ・モローダーのトリビュートとして作ったアルバム『Countach (For Giorgio)』(2016)で、ボウイの「Cat People (Putting Out Fire)」のカバーを共演したりとか、今年の年末にインターネットチャンネルで放映予定のスティーヴン・キングの名作『The Stand』(これで何回目のTVミニシリーズ化だろう?)に使われる予定の、ザ・ドアーズの「The End」のカバーで共演したりとか、とにかく何だかお互いの出自ジャンルに関係なく、クールなクリエイティブな関係を育ててきてるようで、今回の共同プロデュースはその一つの完成形のようなんです。
ちょっと何曲か聴いただけでも、90年代のマリマンとは一味も二味も違う、研ぎ澄まされた楽曲クオリティを感じるこのマリマンの新作、これもまた2020年を代表する話題作になりそうです。本人のコメントによると「このアルバムのスタイルは、エルトン・ジョンバーニー・トーピンの関係を意識してシューターと作ったんだ。シューターのピアノはエルトン、って感じじゃないけどね」ということで、楽曲も相変わらずマリマン独得のゴシック・ロックなのですが、あちこちにシューターの存在が確実に感じられる、そんな成熟した感じです。ちなみにこのアルバム、ビルボード・ジャパンのアルバムチャートでも今週33位初登場していて、日本でも結構話題になってるのか?

思わず興奮して長文になってしまいましたが、今週のトップ10初登場はこの2枚。ということでここらで今週のトップ10おさらいです。相変わらずテイラーには印が付きませんが、『Hamilton』のアルバムがついに7プラチナに(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

*1 (-) (1) Top - YoungBoy Never Broke Again
2 (2) (11) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
3 (3) (10) Legends Never Die - Juice WRLD
4 (5) (8) folklore - Taylor Swift
5 (6) (260) Hamilton: An American Musical - Original Broadway Cast ▲7
6 (7) (29) My Turn - Lil Baby ▲2
7 (1) (2) Detroit 2 - Big Sean
*8 (-) (1) We Are Chaos - Marilyn Manson
9 (8) (24) Pray 4 Love - Rod Wave
10 (10) (54) Hollywood’s Bleeding - Post Malone

さて、来週の1位予想ですが、対象リリース期間の9/18-24リリース予定の作品でまず一番光ってるのがアリシア・キーズの新作。事前に何枚かシングルも先行リリースされたりしてるので、普通でいけばアリシアで1位は決まりかと。これを阻止する可能性があるのは、ここのところ調子のいいカントリーのキース・アーバンか、先々週出たインターネット・マネーのアルバムでもフィーチャーされてたヒップホップのリル・テッカのデビュー作くらいかなあ。結構接戦かもしれません。ではまた来週。

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