今週の全米No.1アルバム事情 #69 - 2021/3/6付
大阪他6府県は解除となったものの、東京は緊急事態宣言延長になっちゃいましたね。来週月曜日3/8に新宿カブキラウンジで開催予定だった、音楽評論家の吉岡正晴さんとの毎年のグラミー賞予想トークイベントもリアル開催が怪しくなってきました。最終はこの週末までには決定してアナウンスの予定ですが、本家のグラミーもバーチャル開催が決定したようで、このコロナ状況との戦いはまだ当面続きそうです。
さてそんなコロナの状況も何のその、今週もわずか5%のポイント減で89,000ポイント(実売は31%減の7,000枚)というしぶとい粘り腰で今週も1位をキープして、これで初登場から7週連続1位を達成してしまった、モーガン・ウォレンの『Dangerous: The Double Album』。カントリーのオリジナルアルバムとしては、1992年10月にガース・ブルックスが『The Chase』で初登場から6週連続1位だった記録を実に29年ぶりに更新、全ジャンルでも、初登場からの連続1位週数では歴代7位(9枚目)の記録となりました。ちなみにその歴代ランキング、見てみましょう。
1.13週 Songs In The Key Of Life ▲10 - Stevie Wonder (1976/10/16-1977/1/8)
2.11週 Whitney ▲10 - Whitney Houston (1987/6/27-9/5)
3.9週 Views ▲6 - Drake (2016/5/21-7/16)
4.8週 No Strings Attached ▲11 - ’N Sync (2000/4/8-5/27)
4.8週 The Marshall Mathers LP ▲10 - Eminem (2000/6/10-7/29)
4.8週 Weathered ▲6 - Creed (2001/12/8-2002/1/26)
7.7週 Bruce Springsteen & The E-Street Band Live / 1975-85 ▲13 - Bruce Springsteen & The E-Street Band (1986/11/29-1987/1/10)
7.7週 25 ▲11 - Adele (2015/12/12-2016/1/23)
7.7週 Dangerous: The Double Album - Morgan Wallen (2021/1/23-3/6*)
こうして見ると軒並みダイヤモンド・ディスク(10xプラチナ以上の売上)が並ぶそうそうたる顔ぶれなのと、意外と2000年以前のアルバムが上位を占めていますね。8週トリオの存在が2000年当時の勢いを感じさせますけど。でもスティーヴィーやホイットニーは別格として、ボスやアデルと並び称される記録になったモーガンのこのアルバム、いや、そんなレベルの大ヒットアルバムなのかなあ、とやっぱり腑に落ちない感満載なのは自分だけでしょうか。そして来週のチャートのリリーススケジュールを見る限り、来週相当『Dangerous』がポイントを減らさない限り、来週にはモーガンがイン・シンク、エミネム、クリードの8週トリオに並ぶ可能性がかなりありますので、ますますこの非現実感は増していきますねえ。しかしその初登場から連続7週1位ってのがカントリーアルバムでは新記録、という内容を伝えるビルボード誌の記事が、過去の長期1位のカントリー・アルバムのリストの5位にイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』を表記していたのがすごく違和感。確かに当時カントリー・アルバムチャートの5位まで行ってるんだけど、ファーストやセカンドならいざ知らずあのアルバム、カントリー・アルバムじゃないやろ?
そして今週もトップ10内初登場はゼロ。先週1位にチャレンジするのでは、と思った2枚のアルバムは健闘したのですが、残念ながら1位とはならずでした。その1枚が、5曲追加のデラックス・バージョンのリリースで9位→2位にアップしたアリアナの『Positions』(66%アップの49,000ポイント)。最近Hot 100を再上昇している、ドジャ・キャットとミーガン・ザ・スタリオンをフィーチャーした「34+35」のリミックス・バージョン等を含むこのデラックス盤はモーガンを倒して1位を取る可能性結構あるなあと思ってたんですが、蓋を開けてみたらポイントでモーガンの半分強くらいまでしか伸ばせませんでした。
そしてもう1枚はBTSの『BE』の「エッセンシャル・エディション」。何がエッセンシャルかというと、収録楽曲は変わらないんですが、スペシャルCDパッケージや、同梱されている写真などのグッズでファンの購買行動を喚起しようというマーケティング戦略によるリリースで、まあいわば「AKB商法」みたいなもの(笑)。これは見事に当たって、254%増つまり2.54倍になった36,000ポイントのうち実売は何と888%増つまり8.88倍の28,000枚と急増して、先週の74位→7位に一気に大幅リバウンドしてトップ10に帰ってきました。まあ来週はまた圏外に落ちていくんでしょうし、これが先週時点でもう少し売れていれば(計算すれば判りますが、先週は3,000枚くらいしか売れてません)モーガンを脅かす存在になれたんでしょうけどね。
ということでトップ10のおさらいです。トップ10圏外では、18位に南部ルイジアナ州のプエルトリカン系黒人ラッパーのケヴィン・ゲイツのミックステープ『Only The Generals, Pt. II』、56位には年末からブレイクしてる「Whoopty」がとうとうHot 100でトップ10入りしたNYはスタッテン島のラッパー、CJの『Loyalty Over Royalty』、そして77位にはコロンビア系アメリカ人のR&Bシンガー、カリ・ウチズがスペイン語で歌うR&Bアルバム『Sin Miedo』が初登場しているくらいですが、チャートインしてくるリリースが徐々に増えてる感がありますね(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。
1 (1) (7) Dangerous: The Double Album - Morgan Wallen
*2 (9) (17) Positions - Ariana Grande
*3 (4) (34) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
4 (3) (10) The Voice - Lil Durk
5 (5) (3) Shiesty Season - Pooh Shiesty
6 (2) (49) After Hours - The Weeknd
8 (7) (47) Future Nostalgia ● - Dua Lipa
9 (11) (68) What You See Is What You Get ▲2 - Luke Combs
*10 (13) (52) My Turn ▲3 - Lil Baby
さて来週の一位予想ですが、上でも触れたように、対象リリース期間の2/26-3/4のリリースラインアップには、強力な新譜はもとより、大きくリバウンドしそうなデラックス盤リリースも見当たらず完全無風状態。個人的にはジュリアン・ベイカーの3枚目がかなりいい感じでよく聴いてるんですが、これはモーガンの8週目はどうも堅そうです。ではまた来週。
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