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今週の全米アルバムチャート事情 #188- 2023/6/17付

MLBもオールスター投票も始まり、前半折り返しに向けてペナント争いも佳境に入ってきましたが、まだ一応エンジェルスが脱落してないのはいい知らせですね。大谷選手も快調にHR量産体制に入りつつありますし。一方ゴルフの方は今年3つめのメジャー、全米オープンが今週木曜日(日本は金曜日)開幕ということで松山選手が2つめのメジャー獲得なるか?が興味の対象ですよね。梅雨入りで外の天気は今一つですが音楽も含めて盛り上がりましょう。と、言ってたらこの記事執筆中に何と自分のコロナ陽性が発覚。コロナもまだまだ注意が必要なことを再認識させられました。皆さんもどうかお気を付けて。

"5-Star: The 3rd Album" by Stray Kids

さて今週6月17日付のBillboard 200、全米アルバムチャートの1位ですが、先週予想していたメトロ・ブーミンの『Spider-Verse』のサントラ盤やテイラーらを大きく引き離して249,500ポイント(うち実売235,000枚と今年週間最高売上で当然アルバム・セールス・チャート1位です)という圧倒的なポイントで1位に初登場したのは、そう、Kポップの8人組ボーイズ・グループ、ストレイ・キッズのアルバム4作目『5-Star: The 3rd Album』でした(韓国語のアルバムとしては通算3枚目、間に1枚日本語のアルバムあり)。既に彼らは昨年EP『Oddinary』と『Maxident』の2枚を全米ナンバーワンに送り込んでるので今回が3作目のナンバーワンとなって、Kポップ勢ではBTSの6枚に次ぐ2番目の地位を更に揺るぎなくしたことになります(他のKポップ勢の全米ナンバーワン・アルバムは、スーパーMブラックピンクそして今年2月のトゥモローXトゥゲザーが各1枚ずつ)。

しかし今回のストレイ・キッズの新譜については、通常以上にKポップ・アーミーの購買行動が凄まじく、過去2作のナンバーワンはいずれも初週11万枚レベルの売上(ほぼイコールポイント)だったので、今回もそのくらいは来るだろうということで先週予想ではトップ10入りと読んだんですが、今回何とその倍以上の枚数を動かしたことになります。その要因の主たるところだと思うのは、毎回ご多分に漏れずKポップ商法でやられているバージョン違いのCDパッケージ(ジャケや封入グッズなどが異なる)の多さ。『Oddinary』の時は7種類、『Maxident』の時は10種類だったのが、今回は何と18種類ですって!これを全て買い集めに走ったファンも多いと思われるKポップ・アーミーの購買力恐るべし。あ、内容はいつものエレクトロ・ヒップホップ系です。

"Whitsitt Chapel" by Jelly Roll

さて先週全く予想できなかったのが今週90,000ポイント(うち実売63,000枚)で3位にドーンと入って来たジェリー・ロールのデビュー・アルバム『Whitsitt Chapel』。え?ジェリー・ロールって誰?そうですよねえ、この人の名前、日本のメディアで見たことないもんなあ。本名がジェイソン・ブラッドリー・ディフォードというナッシュヴィル近郊出身のカントリー系シンガーソングライターですが、その髭面のポッチャリとした体型といい、顔の十字架のタトゥーも含めてあちこちにタトゥーをまとった様子といい、見るからに異様な存在感を放ってます。子供の頃からストリートでマリファナとかの売人をやってたとのことで、14歳から24歳まで10年連邦拘置所でのお勤めも経験しているというからなかなか激しい人生を送ってきたヤツのようです。

そしてシャバに戻ってからしばらくはメンフィスあたりのラッパー達とつるんでヒップホップやってたらしいのですが(この辺の音楽性は今の作品にも脈打ってますね)、2021年頃からカントリーに軸足を置くようになって、実に17作目になるアルバム『Ballads Of The Broken』(2021年159位)からのシングル「Son Of A Sinner」が、そのしみじみとしたカントリー・ロック・バラード風の曲調とこれまでの自分の波乱の人生を振り返る内容が多くの共感を呼んだようで、カントリー・エアプレイ・チャートで1位、Hot 100でも31位まで昇るクロスオーバー・ヒットになって一躍全米でブレイク。今年の4月に開催されたCMTミュージック・アウォード(カントリーのMTVとも言われるCMTが主催する賞)でこの「Son Of A Sinner」で最優秀男性ビデオ部門と最優秀男性ブレイクスルー・ビデオ部門を見事受賞。順風満帆で今回のアルバムリリースになったというわけ。見た目はポスティで、何となく出始めのころのキッド・ロック的なオーラを持つ彼のこのアルバムを通して聴くと意外とメインストリームのなかなかクオリティの高いカントリー・ロック的楽曲で固めてて、おっと思わせます。いやしかし人気出てるのは知ってたけどこの順位に入ってくるというのは全く予想を超えてました。こういうユニークな人が出てきて、モーガン野郎とかの対極的に盛り上がってくれると面白いんですが。要注目ですね。

"Dark Blood (EP)" by ENHYPEN

さて今週は他にも続々新作がトップ10内に初登場してますが、Kポップの勢いが特に強く、4位に88,000ポイント(うち実売85,000枚)で飛び込んで来たのはKポップ7人組ボーイズ・グループのエンハイプン、昨年の『Manifesto: Day 1』(6位)に続く2枚目のトップ10EP、6曲入りの『Dark Blood (EP)』。EP全体は吸血鬼がテーマらしく、「Bite Me」とか「Sacrifice (Eat Me Up)」などそれっぽいタイトルの曲が並んでます。

こちらもお馴染みのKポップ商法で17種類のバージョン違いCDがリリースされたみたいですが、ストレイ・キッズの3分の1の売上に留まっているのはファン層の厚さの問題か、曲数の問題か、それともエンハイプンの方が従来のエレクトロ・トラップ系から今回かなりメインストリーム・ポップに寄せた曲調になってるからか?もう一つ腑に落ちないのは、このEP、先週チェックした対象期間のリリースリストにないんですよねえ。何なんだろう。

"Spider-Man: Across The Spider-Verse (Soundtrack)" by Metro Boomin

そして先週予想で1位と呼んでいたメトロ・ブーミンが手がけたアニメ映画『Spider-Man: Across The Spider-Verse』のサントラ盤は、66,000ポイント(うち実売3,000枚)という予想の半分くらいのポイントで7位初登場でした。自分の作品は出せばナンバーワンでこの間も『Heroes & Villains』が1位でシングル「Creepin’」も大ヒットと乗ってる彼のこと、今回のサントラもフューチャーリル・ウジ・ヴァート、前作のサントラでもポスティとの「Sunflower」の大ヒットを飛ばしてたスウェイ・リー、リル・ウェイン更にはジェイムス・ブレイクまで配したオールスター・キャストなのでもっと行くと思ったんですけどね。

まあ、先行シングルの「Calling」は同じスウェイ・リーメインとは言うものの、相方がカナダ人白人ラッパーのNAVでフィーチャリングがア・ブギー・ウィット・ダ・フディーというかなり小粒感が否めない布陣で、曲調も「Sunflower」のような高揚感たっぷりな感じではなく、チルでレイドバックなラップ曲、っていうのも今回のサントラ盤の勢いにはちょっとマイナスだったのかもしれません。アルバム全体の出来は決して悪くないんですがね。

"But Here We Are" by Foo Fighters

さあ今週はトップ10中6枚が初登場という、2020年以来の大賑わいなので急ぎます。続いて8位に初登場したのは、先日急逝したテイラー・ホーキンスに代わる新ドラマーとしてガンズナイン・インチ・ネイルズなどでもドラマーを務めたことのあるジョッシュ・フリースをアナウンスしたフー・ファイターズ11作目のスタジオ・アルバム『But Here We Are』(62,000ポイント、うち実売55,000枚)。既にメインストリーム・ロック・チャートでナンバーワン快走中のシングル「Rescued」の胸のすくようなストレートなロック・サウンドで幕開けするこのアルバム、今週UKでもノエル・ギャラガーの新譜を押さえて堂々1位を記録してます。

まだジョッシュが正式ドラマーになる前だったので10曲全曲でドラムスを叩いているのはデイヴ・グロール自身で、プロデュースはここ3作ずっと一緒にやっているヒットメイカーのグレッグ・カースティン、というタイトなプロダクションと、冒頭の「Rescued」から「もう君は安全だからどうか休んで」と絞り出すように歌う最後の「Rest」までアルバム全体を通じて、テイラーの死はもちろんのこと、昨年ひっそりと亡くなっていたというデイヴの母親ヴァージニアさんのことにも触れている内容で一貫している、とてもデイヴとバンドの感情がもろにぶつかってくる、そんな作品だな、と思いました。デイヴが愛娘のヴァイオレットとボーカルをハモってる「Show Me How」など新しいフーファイの一面を感じさせる曲もあり。来月にはこのアルバムとニュー・ドラマーを加えたメンバーでフジロックのグリーン・ステージを踏むフーファイ。彼らのライブを観るのは初めてでもあり、当日はとってもエモーショナルなステージを味わうことができそうで今から無茶苦茶楽しみです

"Hard To Love" by Moneybagg Yo

今週トップ10内最後の初登場はメンフィスのベテラン・ラッパー、マニーバッグ・ヨの17作目のミックステープ『Hard To Love』(51,000ポイント、うち実売2,500枚)。彼に取っては5作目のトップ10で、2021年初の1位に輝いたアルバム『A Gaingsta’s Pain』以来のトップ10になります。あのアルバムの直後、同郷のヤング・ドルフや、自分のレーベルの若手ラッパー、ビッグ・ナスキーが銃殺されるなど暗い事件が続いたこともあって新譜のリリースには時間がかかったということなんでしょうか。

中身は良くも悪くもいつものマニーバッグ・ヨ(笑)。ちょっとサザンラップの香り漂う、無機質でないタイプのトラップで全面まとめてます。サザンのトラップ仲間で今や大物のフューチャーを筆頭に、同郷で最近ブレイクしたグロリラや、今ノリに乗ってるシカゴのリル・ダークなど手堅くゲスト陣も固めていて、普通のトラップ・ファンだったらまあ聴きたいと思うような内容なんだろうなあ、と思いながら聴いてました。自分は3曲も聴いたらもうお腹いっぱいですが(笑)。

"Life Is But A Dream…" by Avenged Sevenfold

さて初登場で賑やかなトップ10に対して今週の11位以下100位までの初登場は3枚とやや少なめ。まず13位に入って来たのはカリフォルニアはハンティントン・ビーチ出身のプログレッシブ・メタル・バンド、アヴェンジド・セヴンフォールドの7年ぶりになる8作目『Life Is But A Dream…』。2000年のデビュー以来、メタル系では安定した人気を誇っていて、5作目『Nightmare』(2010)、6作目『Hail To The King』(2013)と連続BB200でナンバーワンを記録したくらいですが、コロナで新作録音やミキシング等でかなり時間がかかったとのことでこれだけ期間が空いてしまったというのも響いたのか、前作まで4作連続トップ10だったのがここで途絶えてしまいました。

と、いいながらこの人達の作品はちゃんと聴いたことがなかったので、今回一通り聴いて見ましたが、タイトなリズムで攻めてくるメタルナンバーを中心に、オーケストラ(カリフォルニアのサン・バーナディーノ交響楽団と共演してます)をバックにドラマティックなロックを展開しているナンバーや、正にプログレッシヴ・ロックそのまま、という感じのナンバーもあり、なかなか実力充分のバンド、という感じを受けました。

"Noujour" by Toosii

続いて19位に初登場は、現在シングル「Favorite Song」が大ヒット中(先々週最高位5位)のトゥーシーことナウジュール・レイジャー・グレインジャーのセカンド・アルバム『Naujour』。「Favorite Song」はチルでエモなグルーヴを湛えたトゥーシーの半分ラップっぽい歌で、彼女に「君はメイクしなくてもきれいだよ/自分の気分を良くしてくれる人を探してるんだね/そのドアを開けてくれれば僕がその人になってあげる」という、とってもポジティブで共感を呼ぶ素敵な曲。これがTikTokで流行ったのもむべなるかな、という感じです。

アルバムの方は、もう少しトゥーシーのラッパーぶりが聴ける、ややトラップ寄りのトラックが多くなってますが、彼のチルでエモなスタイルは一貫してますね。「Favorite Song」もオリジナルバージョンの他にカリードがコラボしてるリミックス・バージョン、更にはフューチャーをフィーチャーした(ややこしいw)トクシック・バージョン(フューチャートゥーシーと同じように歌ラップしようとしてるのが似合ってなくて結構おかしいw)と3バージョン収録してて、このヒットで一気に稼ごうとしてますね(笑)。いやでも、全体的にとても気持ちのいいアルバムです

"Shadow Kingdom" by Bob Dylan

そして今週100位まで最後の初登場は、71位に入って来た御大ボブ・ディランの記念すべき40作目のスタジオ・アルバム『Shadow Kingdom』。今回はドラムス・パーカッション抜きでアコーディオンを多用するというアメリカーナな構成のバンドをバックに、自分の1960年代中心の初期の楽曲を新たに録音したという、ファンにはたまらん企画盤です。2021年にイスラエル系アメリカ人の気鋭の女性監督、アルマ・ハレルが撮ったドキュメンタリー映画『Shadow Kingdom: The Early Songs Of Bob Dylan』のために録音されたものを今回アルバムとしてリリース。ジャケのディランがハーモニカを吹いている写真も同映画からのもので、そのサントラ盤にもなっています。

ディランについてはもう研究家みたいな方がたくさんいらっしゃるので、彼の音楽性やこのアルバムについての論評など恐れ多くてできないですが、過去何回か彼のライヴに行って、彼が自分の楽曲を完璧に破壊したアレンジで(ものによっては歌詞も変えて)パフォームするのに少なからずフラストレーションをためてた素人のディラン・ファンの自分としては、シンプルな、そして異国情緒も感じさせるバンドセッティングで聴き慣れた楽曲をそれほど完全に違うアレンジでなしに(笑)演奏し、歌うことでそれぞれの楽曲に新しい命を吹き込んでいるように思えて、ここ数年のフラストレーションが解消したような気持ち。アルバム中唯一の新曲は、ラストのインスト・ナンバー「Sierra’s Theme」でおそらくこれが映画のクレジット・ロールでかかるんだろうなあ、と思ったらこの映画とても観たくなりました。

さて珍しくトップ10が初登場で賑わった今週ですが、この前に6枚トップ10に初登場したのは2020/10/10付チャートというから2年半ぶりのこと。その時の1位はマシンガン・ケリーの『Tickets To My Downfall』でした。ではトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) 5-Star: The 3rd Album - Stray Kids <249,500 pt/235,000枚>
2 (2) (14) One Thing At A Time - Morgan Wallen <117,000 pt/3,952枚*>
*3 (-) (1) Whitsitt Chapel - Jelly Roll <90,000 pt/63,000枚>
*4 (-) (1) Dark Blood (EP) - ENHYPEN <88,000 pt/85,000枚>

5 (1) (33) Midnights ▲2 - Taylor Swift <83,000 pt/21,500枚*>
6 (3) (2) Almost Healed - Lil Durk <67,000 pt/239枚*>
*7 (-) (1) Spider-Man: Across The Spider-Verse (Soundtrack) - Metro Boomin’ <66,000 pt/3,000枚>
*8 (-) (1) But Here We Are - Foo Fighters <62,000 pt/55,000枚>
9 (4) (26) SOS ▲2 - SZA <51,000 pt/3,606枚*>
*10 (-) (1) Hard To Love - Moneybagg Yo <51,000 pt/2,500枚>

ということでトップ10が初登場だらけで久々の賑わいを見せた今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか?最後にいつもの来週の1位予想です(チャート集計対象期間: 6/9-15)。今週1位のストレイ・キッズ、アルバム買った人はもう買わないし、多分来週は半分以下にポイント減らすでしょうから、来週は10万ポイントくらいが首位攻防戦の可能性大で、そうするといやーなのは毎週数%しかポイント減らしてないモーガン野郎が来週も10万ポイントくらいで消去法的に1位になるパターン。ああ嫌だ嫌だ。来週の有力新譜となると、ジャネル・モネイか元ワンダイナイアル・ホランくらいだけど、どちらも10万ポイントはキツいだろうなあ。むしろ3位のジェリー・ロールがポイント積み上げて10万ポイントに届いて来週首位、ってパターンが遙かにいいのだけど、それも難しそうですしね。ということでまた来週。

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