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楽しむ権利、選ぶ権利は誰にでもあるはず

友人の投稿で知った件。
読めば読むほど違和感。
なので、ちょっと考え、ちょっと書いてみます。

そもそもおかしくないか?

と思ったのはこちらのイベント。

国技館のある両国、実家の近所には相撲部屋がいくつもあり、浴衣にセッタ姿のお相撲さんがチャリに乗っている街で育った私。お相撲さんと一緒にお神輿担いだり、、と、お相撲は身近なスポーツ。

だから、本場所とは違う巡業の楽しさも知ってます。
でっかいお相撲さんを間近で見るワクワク感。
巨体がぶつかり合う激しさと飛び散る汗。
漂うびんづけ油の香り、、、好きだなぁ。

で、今回の秋巡業@大田区。
友人の指摘で知ったチケットの種別への違和感。
お分かりになりますか?

大相撲城南大田場所サイトより

前提としてのアクセシブルな形

スポーツイベント、劇場、、いろいろな場所でシートのエリア分けがあって、価格が違うことはほとんどです。
見やすいとか選手に近くけど高い、とか、ちょっと見づらいけど安い、とか。
本来であれば、車イス利用の人であっても、自分の観たい位置や買いたい金額のエリアを選択できるべき。

「障害を持つアメリカ人法(ADA)」のあるアメリカでは、スタジアムなども含む公共施設や商業施設におけるアクセスの差別が禁止され、例えば車イスユーザーのアクセスを拒むような施設はオープンできません。さらに車イス等を理由に観戦できるエリア限定されることも「差別」とみなされることを想定し、車イス席もいろいろなエリアに設置されていることが多いのです。

たとえばマディソン・スクエア・ガーデン

https://tixis.co.jp/seat/nba/seat_nba_nyk.pdfより

NBAニューヨーク・ニックスのホームであるこちらのスタジアムのシートマップを見ると車いすマークがあちこちに点在していることが分かります。
「車イスだから、ここからしか観れない」にならず、自分が見たいレベル、払える価格のエリア(座席)を選択できるわけです。

100歩譲ったとして…の日本

2006年に国連で採択された「障害者権利条約」。
日本ではやっと2014年に批准したのですが、それが実に141国め。かなり遅かった。
なんでそれほど時間がかかったというと、まぁ、日本の障害者の置かれた状況があまりなお粗末で、権利云々のレベルになく、国内法の改正から始めなきゃならなかったから、と言えます。
で、2011年の障害者基本法の改正、2013年の障害者差別解消法の成立を経て、ようやく2014年批准した日本。
とはいっても、正直、障害当事者の一人として見れば、バリアフリーやユニバーサルデザインの面で日本は、マジ「まだまだ」としか思えないのが現状です。

「法律もできちゃったし」
「国連から勧告も出ちゃってるし」
で、重い腰を上げてる感じ、、、

からの、この「国技・相撲」の巡業の件、、な訳です。
もう一度チケット種別と料金表、貼ってみます。

大相撲城南大田場所 公式サイトより


「まだまだ残念な国」であることを鑑みて、「いろいろなエリアでの車イス席」が無くて、2階席のみであることは、100歩譲って許容としましょう。(既存の建造物の構造上の問題はなかなか簡単には解消できないですから)

でも、なんなの?この「福祉席」

配置図と価格を見た限り、イス席A(7,000円)よりイス席B(6,000円)の方が見づらい後ろ?側で、車いす対応の「福祉席」はたぶんそれよりさらに後ろ。
なのに、2席16,000円つまり1席8,000円!割高?
しかも2席セットでないと買えない⁉︎

なんなの??

障害者は介助者なしでは来ない前提?
しかも、ぼったくり?
「福祉」って名前の席を作っときゃいいでしょ?的な?

車イスユーザーだって、単身で日本中駆け回る人だっています。
ただ、物理的バリアフルな日本では、車イスでは暮らしにくく「障害」が生じることはある(※障害の社会モデル)

そんな社会でバリアにぶつかる時、そのバリアをクリアするために、人の手を必要とすることはあるけれど、だからと言って、「介助者とセット」しか認めないって、絶対におかしい。
しかも割高ぼったくり!

少なくとも、他の席と同じく1席ごと販売すべき。
単身で来れる方は1席買えばよい。
介助が必要な人がいるなら介助者の分も買えばよい。

そんな「見たいわけじゃないけど、介助という業務のために来る」場合を想定して「介助者」分を値引きするとか、はアリかと。
それなのに、逆に、割高ぼったくり!(2回目)

というか、そもそもこの、障害を理由に
「他より高い金額で販売する」
「2席セットでしか販売しない」
って、障害者差別解消法での「不当な差別的取り扱いの禁止」に触れるんじゃない?

不当な差別的取扱いの禁止
「障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」(第七条第一項、第八条第一項)

つまり、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、サービスの提供を拒否したり、サービスの提供の場所や時間帯を制限したり、障害のない人にはつけない条件をつけたりするなど、不利な扱いをすることを禁止していて、国や地方自治体(第七条第一項)も民間事業者(第八条第一項)も義務。

となるとこれって、やはり法律違反じゃね??

やれないことはない、やらないだけ!

こんな風に「障害者の権利」とか言うと、「車イス席を用意してもらえてるだけ、ありがたいことだ」とか「弁えろ」的な意見も出てくるかも。
「100歩譲る必要があるくらいの発展途上国・日本なんだから、そこまで贅沢いうな」って感じかしら。

でもね、そんな日本でもアメリカに負けないくらい、アクセシビリティに配慮したスタジアムがあるのですよ。
その良き例がMAZDAスタジアム(広島市)

広島東洋カープ公式サイト 車イス席配置図と価格表
広島東洋カープ公式サイト さまざまな車イス席の画像

きちんとサイトラインも確保されてます。
通常席だけでなく、砂かぶり席やなんとバーベキューテラスにも、段差解消機があって、車いすでも利用できる!!(段差解消機の画像もあり、サイズも書いてあるので、自分の車いすで利用できるかの判断も可能)

そして、すごーくいいのが、サイトのホスピタリティのページには、提供できるサービス、できることできないこと、そういうことがしっかりと記載されていること。

UD後進国の日本だって、やれるんですよ!!
…という良き例。

ルーツが広島で、ダンナは東京生まれ東京育ちなのにCarpのキャップ被った野球少年だった我が家的には鼻高々って感じ?(私はジャイアンツ一家育ちですが。)

気づかずんば、気づかせてやろう、声あげて

で、今回の大相撲城南大田場所の件。
これを決める際、誰も違和感を覚えなかったのか、ってことが気になります。
後ろの方の席なのに、前の方より値段が高いっておかしくない?と。
車イスの人が一人で来た時はどーするの?と。

しかもよく見ると、車イス席の案内をしてるのに、
注意事項にこんな記載が。

※会場内ではベビーカーや車椅子での観戦はできません。移動が終わりましたら会場の置き場をご利用ください。

大相撲城南大田場所公式サイトより

??
どゆこと?
「移動が終わりましたら」って??
マジ意味わかりません。
この読んで、誰も「??」って思わなかったのかなぁ。

結局、「中の人」たちが、「中の人」たちの視点からだけで考えて、「中の人」たちだけで決めてるから。

障害者権利条約を語る時、忘れてはならないフレーズ。

「私たちぬきに私たちのことを決めないで!
(Nothing about us, without us!)」

キキ・ノルドストローム(全盲・前世界盲人連合会会長)

このコンセプトを尊重し、新しい国立競技場を造る際には多くの障害当事者団体も参画したことは記憶に新しいと思います。
でも、その流れが全く広まっていないのも現実。
少なくとも、この巡業の興行では、当事者の視点があるようには思えません。

「障害者の権利」と言っても、私たちは何か特別のことを求めているわけではないのです。
障害のある人もない人も同じように、好きな場所で暮らし、行きたいところに行けるといった“当たり前”の権利と自由、社会の一員として尊厳をもって生活したいだけなのです。

残念ながらまだこの概念が社会で十分に理解されているとは言い難い現状。

パッと見で気づきやすいハード面のアクセシビリティですら見逃されるのですから、私(たち聴覚障害者)にとって大きな課題である「情報へのアクセシビリティ」なんて、ほんと蚊帳の外。

だからこそ、こういう一つ一つの違和感に対して、やはり声をあげていかなければならないと思うのです。

もしかしたら、気づいてないだけかもしれない。
気づいてくれれば変わるかもしれない。

それなら、気づいてもらいましょう。
気づいてくれるのを待つのではなく、気づかせてあげましょうよ。

鶯が鳴くのを待つ家康ではなく、鳴かないなら殺してしまう信長でもなく、鳴かせてみようとする秀吉のように。

と、「どうする家康」見ながら思った私です。(ムロ秀吉はちと苦手ですが)

もう、期待して待ってるだけじゃ、なんも変わらんからねーって。もう少し頑張ろっか。

いつもながらの長々した投稿ですが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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※参考「障害の社会モデル」

「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である、とする考え方(「ユニバーサルデザイン2020行動計画」より)

「障害の医学(個人)モデル」
障害や不利益・困難の原因は個人の心身機能が原因であり、その障害を解消するためには、個人の努力や訓練、医療・福祉の領域の問題である、とする考え方(公益財団法人 日本ケアフィット共育機構サイトより抜粋)

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