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バリアフリー能楽観劇

昨日はあいにくの雨でしたが、久しぶりにお出かけ。

東京2020 オリンピック・パラリンピック能楽祭 ~喜びを明日へ~
https://www.nohgaku.or.jp/tokyonohfes_para

能楽祭チラシ画像

たまたま家で見かけたチラシが、実はたまたまでなく、末っ子の小学校時代の同級生ママがポストインしてくれたものだと分かったのは、能楽堂に向かう途中。

以前、そのママのお誘いで靖国神社での夜桜能のお手伝いをさせてもらったことがあり、手伝いながら遠目に見たお能の美しさに、「いつかちゃんと観たいな」と話していたのを覚えていてくださり、今回のバリアフリー公演を教えてくださったのでした。(彼女の地謡も観れた!)

せっかくの機会なので、とお誘いした視覚障害(白杖)のRさんと、情報センタースタッフのYちゃん、そしてチャンプと共に国立能楽堂へ。

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こちらの公演のバリアフリー対応は、ほんと、「これでもか!」(笑)というほどの万全ぶり。 

聴覚障害者対応として、
・受付や解説などでの手話通訳
受付に立ってた通訳さんは一見して分かるようになってて、声をかけやすい感じでした。(私はチャンプがいたので、通訳さんの方から来てくださいましたが。)
演目始まる前の解説では舞台の上に通訳さんも乗って通訳。目の前の字幕と合わせて、とても分かりやすかったです。

・全座席での字幕表示
字幕表示機器の貸し出しかと思ってたらまさかの全席背面にモニター付き。(飛行機みたい)

客席後方から舞台を臨む画像

前席の背面のモニターとおすわりするチャンプ

これは、外国語サービスとかにも使ってるのかなぁ。
すごい設備にビックリ!

・台本の配布(観客全員対象)

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これは全員配布のプログラムと一緒に配られました。聞こえる人でも、文語文は聞き取りにくいのかもしれません。
嬉しいのは全てにふりがなが振ってあったこと。
難しい言葉だけでなく、私たち聞こえないと漢字の読みが苦手なので、すごーく嬉しかったです。

視覚障害者向けの対応としては
・副音声ガイド 貸出。
・点字パンフレット 配付。
・舞台の触図 配付。

視覚障害者向けグッズの画像

触図って、舞台の状況が起伏で表されているものです。

触図がぞ

私は単にどんな形の舞台か、どんな配置か、を触って分かるだけのものだと思ったのですが、副音声ガイドで、演者の動き、、どこから出てきて、ここに動いて、、ということが流れるので、今、舞台のどこで演じているのか、をなぞることができるそう。
私たちが目で演者の動きを追うように、手で追うことができる、ってこと。
素晴らしいですね。

もちろん補助犬の同伴もOK!

伏せているチャンプの奥に舞台が見える画像

そして何よりすごいのは、これらが当日申し出れば対応してもらえるっていうこと。
実はこーゆー「バリアフリー対応」というものは、事前に申し込んでおかないとダメな場合が多いのです。
手話通訳を用意しておいて、聞こえない人が来なかったら無駄になる、点字資料も、必要な人が来るとわかったら用意すればいい、って感じなのかもしれません。

本来は、必要とする人がいる、いない、に関わらず、当たり前に用意されていることが理想、なんですが、まだまだ「特別な配慮が必要なら前もって申し込む」くらいは我慢すべき、という感じで、なんとなく、そこにバリアーを感じてしまったりします。
その点で、こちらのバリアフリー対応は、「これこれを用意してありますよ。必要な人は当日言ってね」という感じ。(車イス利用など座席などにも関わる場合は事前に連絡することにはなってますが)

障害者の料金割引もチケットを事前に購入するときは一般の人と一緒で、現地で手帳を提示してキャッシュバックしてもらえるのです。

なんとなく全体を通して、障害のある人もない人も、同じように扱われてて、でも必要なサポートは対応するよ、っていう姿勢を感じて、心地よかったです。

嬉しすぎて、帰り際、ロビーにいらした紋付袴の方(偉い感じの方)に声をかけ、私もRさんも堪能できたこと、嬉しかったこと、そして、今後もぜひやって欲しいこと、などを熱ーく伝えてしまいました。
さらに補助犬のリーフレットとステッカーも渡しました(抜かりなし!笑)

補助犬情報センターパンフと厚労省ステッカー画像



そうそう、肝心の演目!!

前半は日本ろう者劇団の手話狂言でした。
手話狂言、ちゃんと見るのは初めてでしたが、振り付け?が手話になっているので、聞こえなくてもどんなことを言っているか、なんとなく分かり、字幕の文語文とのリンクが面白かったです。
「心得た」が「分かる」とか。

もちろん音声も(アテレコみたいに)流れていたので、手話を知らない人も「狂言」として楽しめたのではないかしら?
ていうか、「手話」だと気づいていないかも、、(笑)
表情、身振りの豊かさはろう者の特性が生かされていて、魅力的でした。

後半は能「羽衣」
三保の松原の羽衣伝説を元にしたお話で、とにかく天人(天女)の舞が素敵でした。
面をつけていて無表情なのに、舞を見ていると、面の表情が動いているような、、微笑んでる?哀しんでる?そんなふうに感じました。

笛や鼓、地謡の声、は聞くことができなかったけれど、太鼓は響いてきたし、演者の足踏みはドーンと響いて、「ハッ!」って感じ。

伝統芸能は、言葉も難しかったりするし、雰囲気も厳かで、なんとなく敷居が高い気持ちがしますが、お話(ストーリー)はどこかで聞いたことのある昔話や伝説が元になってたりするので、実はわかりやすかったり。

さらにこんなふうなバリアフリー対応がされていれば、楽しめる人はすごーく増えるはず。
ぜひぜひ今後もやっていただきたい。

…ていうか、「特別イベント」でなく、公演にあたりまえに用意される時代になって欲しいな。
「特別」に用意するのはちょっと大変かもしれないけど、「あたりまえ」になったらきっと「あたりまえ」になるはず。

演劇、芸能、、いろんなことを誰もがあたりまえに楽しめる時代がきっと来る、そう信じたいと思えた1日でした。

国立能楽堂のすぐそばには国立競技場。
オリパラのレガシーがスポーツだけではなく、いろいろなところに残っていくといいなぁ。

国立競技場を遠目に見つめるチャンプの画像


いただいたサポートは私の人生を支えてくれた聴導犬をはじめ、補助犬の理解啓発のための活動に生かさせていただきます。