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小日向素子さんが選ぶ「感覚を磨くための5冊」

 第10回「bookwill 小さな読書会」(2024年4月12日開催)では、ゲストキュレーターに牧場研修を運営する小日向素子さん(COAS代表)を迎え、『ナチュラル・リーダーシップの教科書』(あさ出版)をテキストに対話を深めました(記事はこちらから↓)。

※前編のリンクを入れる

 かつてブックライブラリーを運営していたこともあるという素子さんは、お気に入りの蔵書の中から「感覚を磨くための5冊」を持参し、紹介してくださいました。推薦コメントと共に、ここにシェアします。「感覚を磨く」体験の扉として、ぜひお楽しみください。

注目集まる「馬から学ぶリーダーシップ」の研修を主宰する小日向素子さん。

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『馬の自然誌』(J.E.チェンバレン著、屋代道子訳/築地書館)
「人間社会の始まりから、文明の域を超えて特別な存在であり続けた馬と人間のかかわりの歴史を詩的に語る本。馬の前で、人間が見つめる自分とはどういうものなのか、長い時間軸で俯瞰できます」


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『センス・オブ・ワンダー』(レイチェル・カーソン著、上遠恵子訳/新潮社)
「子どもたちに何か一つ、能力を贈ることができるとしたら、自分の周囲にある豊かな奇跡に気づく力を与えたい。著者の願いに深く共感します。この本から受け取れるのは、植物が私たちに与えてくれるメッセージ。馬からの学びとの違いも感じながら、何度もめくりたくなる本です」


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『文章読本』(谷崎潤一郎著/中央公論新社)
「流麗な文章の美しさに定評のある谷崎文学。私もファンの一人ですが、彼が残した文章論の本書は『言葉を通じて感覚を磨くメソッド』を伝える教本でもあります。いわく、名文を読み、名文を書け。やはり重要なのは『感覚』だと説いています」



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『猫のゆりかご』(カート・ヴォネガット・ジュニア著、伊藤典夫訳/早川書房)
「とっても愉快なSF小説! なぜ愉快かというと、この本ではすべての言葉の定義をひっくり返しているから。『言葉の檻』を出た新しい人間世界が、どんな終末へ向かうのか。おかしくも、自分の中にある思い込みの数々に気づかされる名作です」

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『重力と音寵』(シモーヌ・ヴェイユ著、冨原眞弓訳/岩波書店)
「著者は30代の若さで無名のまま生涯を閉じたフランスの哲学者。ユダヤ系の医師を父に持ち、裕福な家庭に育ち教師資格も持ちながら、内戦下での過酷な工場勤務を選ぶ。短い人生の中で書き残した雑記帳をもとに編集され、ベストセラーになったのがこの本です。『真空状態になれ』と訴える彼女の哲学には共感する点が多いのですが、今の私に響くのは『偶発的なものと科学的なもの、そのどちらが欠けても仕事は陳腐になる』という言葉です」


 小さな読書会「bookwill」では、これからも1冊の本を通じて女性たちがやさしくつながる対話の時間をつくっていきます。次回のレポートもどうぞお楽しみに。