見出し画像

【妄想の墓場】寒いと着替えがつらい

 会社に行くためには着替えねばならないが、寒すぎて布団から出たくない。怠惰な私は布団にくるまりながらぼんやりと妄想していた。
某美少女戦士のように、「ムーンプリズムパワー!メーイク、アーーーップ!」と叫んで変身が始まればいいのに、と。
彼女たちーーーセーラー戦士の変身は早い。下手をすると我々女性がストッキングを履くのに費やす時間以下で着替えがまるっと完了するのだ。うらやましいことこの上ない。
そんな与太話を会社で先輩に愚痴ったところ、先輩も深く頷いていた。
各戦士の変身シーンを思い浮かべながら、妄想談義は続く。
「マーキュリーだと水だから寒そうですよね」
「マーズが一番あったかそう。火が出てくるし」
「でもマーズはハイヒールだから足が寒そうですよね」
そこまで言ってから、我々は肝心なことに気が付いた。セーラー戦士の服装は、いずれもミニスカートばかりで防寒性がゼロではないか。
では最も着込んでいるキャラクターは一体誰か?答えは1秒で出た。
「タキシード仮面はタキシードの上にマント着てるし、寒くないですよね」
「でも夏もあの恰好でしょ?暑くない?」
「絶対暑いです。そういえば馬に乗ってくることありませんでしたっけ?」
「あの馬どっから連れてきてるんだろう」
我々の興味は、もう早着替えではなくタキシード仮面の馬に移っていた。白馬に乗って登場する回があったような気がするが、彼はどこから乗ってきているのだろうか。一応馬は軽車両にあたり、自転車と同じ扱いだ。しかし道路を走る白馬の映像は流れたことがない。というか飼ってるのか?自分で?
タキシード仮面は道交法守ってなさそう、という話になりかけたところで朝礼が始まったので我々は解散し、1週間後に私は先輩から腹巻を貰った。

最後まで読んでくださってありがとうございます。 いただいたサポートは、書籍の購入に使わせていただきます。