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日本企業の勝算|読書

今日紹介する本は
「日本企業の勝算 人口減少時代の最強経営」です。



本の概要です。
著者はデービットアトキンソンさん。日本にある「小西美術工藝社」の社長をされています。
イギリス出身でオックスフォード大学の「日本学」を専攻し、イギリス人でありながら、日本の国宝などの補修をしている会社「小西美術工藝社」の社長を務め、茶道にも通じている(裏千家茶名「宗真」)、日本在住30年以上!という日本大好きの日本マニア!


もともとはゴールドマンサックスで働いていた金融アナリストの方です。
他の著書に「日本人の勝算」もあります。

この本、翻訳者が・・・書いていないので・・・ご本人が日本語で書かれているようですね。
Twitterも日本語で発信されています。

アトキンソンさんは2020年に政府の成長戦略会議の議員にも起用されていて、日本の企業政策に影響力を持っているので、今後、国が民間企業向けにどのような政策が進められるかを知るための一冊にもなるので、多くのビジネスパーソンの方には読んでみてほしい1冊です。


さて、本書「日本企業の勝算」は、長らく経済成長が低迷している日本の問題点を指摘して、どうすれば日本企業の生産性を高めて、経済成長につなげていくのか、ということが述べられています。

本書のキーワードはこの3つだと思います。

「人口減少」
「生産性」
「中小企業政策」

至るところで出てきます。

本書の要点はまとめると、以下の通りです。
『人口が減少するので、このままでは社会保障の持続は困難である、企業の生産性向上は絶対に必要だ。その日本企業では、技術革新や海外展開に対応できる人材の不足や最新設備の導入ができないことが企業の競争力と生産性向上の足かせになっている。
そしてその要因には、中小企業の多さや最低賃金の低さがあるため、日本は中小企業政策を転換する必要がある』

細かくみていきます。

まず人口減少と生産性の関係にについてですが、
GDP(国内総生産)は、「生産性×人口」という方程式で表すことができます。その片方の人口が減ると、GDPを押し下げる要因になります。
なので、人口が減るのであれば、もう片方の「生産性」(=「一人当たりの付加価値」を高めるしかない。
生産性は労働生産性という(一人当たりが生み出す付加価値の質とか量)と労働参加率(労働人口)で決まるので、この両方を高めることで生産性は上がるのですが・・・日本で行われてきた政策では、女性と高齢者に活躍しれもらうことで労働力・労働人口を確保してなんとか、生産性を維持してきました。そして、すでに女性も高齢者も可能な限り労働に参加しているので、これ以上労働参加率を高めるのは難しい。だから、日本企業は、この先は労働生産性を高めるしか方法はない。という主張です。
実際、日本の中小企業庁が毎年発行している「中小企業白書」にも、たびたび労働生産性の向上という課題が述べられています。

そして、本書でも生産性の低さを指摘して、生産性を高めるための施策提案をして、タイトルでもある「日本企業の勝算」を述べています。


指摘内容ですが大きく5つ
①人材のスキル向上
②企業規模の拡大
③成長企業への投資
④最低賃金の向上
⑤経営者の質向上

①人材のスキル向上

まず①人材のスキル向上ですが
アトキンソンさんは、日本企業の競争力の足を引っ張ているのは人材のスキル不足も大きな原因だと言っています。
学校教育を終えた後の人材を再教育する仕組みがない、という指摘で
具体的には「基礎的なビジネススキル」や、「デジタル技術」、「論理的思考」など教育するための
仕組みと投資が必要だと述べています。

②企業規模の拡大

②企業規模の拡大については、
今日本は99.7%が中小企業です。そして規模が小さいと人、モノ、カネ、情報あらゆる資本が不足するわけです。
逆に規模が大きければ余剰が産まれてより多くの雇用をしたり、新しい技術に投資したりすることができるので、そのまま労働生産性の向上につながる、だから日本はもっと中小企業の数は減って中堅企業が増えていかなければいけない。という主張です。

③成長企業への投資

ではどうやって企業規模の拡大をしていくか、という話で、これは国が成長企業への投資を行うべきだ、と述べています。今までは既存の中小企業を守るために補助金を使っていたので、本来とっくに淘汰されるべき企業が今もずっと残ってしまっているわけです。
それらの政策は転換して、新規事業やM&Aを進めて規模拡大を図っている企業に国は支援すべきだ、としています。
実際今、企業への補助金はそういった成長企業への投資という流れに変わってきていますね。

④最低賃金の向上

とにかく最低賃金が低すぎるという指摘も強く主張しています。
最低賃金が低いとどういうことが起きるかというと、格差拡大はもちろんですが、雇用する側が強くなって、簡単には転職できなくなる、そして労働市場の流動性が低くなる、そうすると逆に企業側は新たな人材確保が難しくなるので、企業の規模は大きくならないし、新規事業などが行えない、新たに海外進出しようにもができなくなって輸出比率は低下する、といった結果につながるとしています。

それらを回避してむしろ成長していくためには、最低賃金を高めること。ほかには労働組合の組織率を高めて経営側へ交渉できるようにすることや、労働者のスキルアップも重要だと述べています。

⑤経営者の質向上

最後に経営者の質向上ですが、企業規模は経営者の能力によって制限されることや経営者の質と生産性の関係は立証され始めていることが述べられています。
逆も言えて、日本企業の規模が小さいのは「中小企業の経営者の経営能力が低い」ということも意味していると。
なかなか受け入れられないと思うけど、事実として大企業で当たり前にできている経営が中小企業ではできていないのも確認されている。と指摘しています。

しっかり経営者の質を高めるよう、制度をしっかり作って産業構造を変えたり、規模の小さい企業への優遇措置を変えたりしていく必要があると主張しています。

まとめ

もう一度まとめると、
『日本は人口が減少するので、このままでは社会保障の持続は困難だ、これらの対策として企業の生産性向上は絶対に必要だ。
そしてその日本企業では、技術革新や海外展開に対応できる人材の不足や最新設備の導入ができないことが企業の競争力と生産性向上の足かせになっている。
さらに、最低賃金の低さや中小企業の多さがその要因であるため、日本は中小企業政策を転換する必要がある。』
ということです。


アトキンソンさんは中小企業政策を提言するにあたって様々な資料を参照しているのですが、その中には、日本の中小企業庁が毎年発行している「中小企業白書」の数字も含まれています。だからその主張には根拠があって一定の説得力があります。

いかがでしょうか。
誰もが気になる今後の日本企業、ひいては私たちが暮らす社会の進むべき道。日本人よりも日本のことを真剣に考えてハッキリとして指摘してくれている本だと思います。ぜひ手に取ってみてください。

以上です。

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