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「戦争は女の顔をしていない(漫画版)」は素晴らしいマンガだ。

「ウクライナ進行が行われている、今こそ読むべき本」
本を手にとった瞬間、店主の脳裏にありきたりなキャッチコピーが浮かびました。
「今この本を紹介すれば、きっと注目されるに違いない」
邪な気持ちが頭をもたげたままページを開くことになりました。

しかしこの「戦争は女の顔をしていない(漫画版)」を読み進めると、自分の浅墓さを悲しむ気持ちになりました。本当に恥ずかしい。この本は戦争についての想像力が足りていない人間、女性に対して理解が足りていない男性は必ず読まなくてはいけない本でした。

もし歴史を事実ベースで淡々と紹介したら、それは正しい記録です。比較・研究する際にはとても役立つ情報となりますが、そこからは人の息遣いは感じられません。もし戦争が題材であれば、「1941年6月22日、ドイツ軍のソ連侵攻が開始された」という一文から始まります。この他にどこの戦いでどちらが勝利し、何人の兵士が亡くなったという情報が記されることでしょう。

それに対し、一人の人間が戦争中に体験したことをストーリー形式で語るなら、それは記録的と言うよりは情緒的。ディスプレイや紙の上の戦争ではなく、ひとりの人間の目線から戦争を見つめることにつながります。そしてその現場で生きている人の感情を知ることにより、その当事者の心と読者の心が共鳴します。こういう目線は本当に大事だと思います。どちらが優勢かとか、何人死んだとか、どんな新兵器が投入されたという情報も重要ですが、現代社会に生きている我々にとって、戦争の悲惨さと女性の知られざる苦労の方が生きていくうえで大切な情報です。

この「戦争は女の顔をしていない(漫画版)」は、まさしくストーリー形式で歴史を伝えるマンガの傑作です。題材も良かればマンガも良い。女性の退役軍人の目を通して見える戦争は、我々が知っている戦争とはかなり違います。戦争が酷い、殺し合いはよくないことは誰でも知っています。しかし、その現場で起きていることは予想以上。カッコよくもなく地味な内容です。また、戦争の悲惨さだけを訴える作品とは一線を画している部分も見逃せません。目的が違う。伝えたいテーマの明確な違いがあります。

そしてジェンダーフリーや男女同権という言葉がなかなか進みそうで進まない日本において、大事なことが再確認できます。記録の上では男性と女性は言葉の違いですが、その目線から見える世界は全く違う。女性が男性を理解することも大切ですが、我々男性が女性をどこまで想像力を働かせ、理解に努めているのか?努力不足を感じざるを得ません。

おっと、熱をもってブログを書いていたら具体的な内容に関して紹介しておりませんでした。この本は「独ソ戦に参加した500人以上の従軍女性を取材した著者が書いた本が原著であり、その本を元に「狼と香辛料」で有名な小梅けいとさんがマンガ化するに際してブラッシュアップした作品です。

いい作品です。いや、そんな言葉は当たり前すぎます。とにかく読んだ方がいい作品です。今回は本の紹介ブログとしては迷走しておりますが、それもこの作品の影響を受け、頭に少々熱をもってしまったからだとご理解ください。


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