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吾輩は古本屋である(3)未来を見通すことならず

今日も忙しかったので【吾輩は古本屋である】を書きました。実は普通にエッセイ風に書いたところ面白くないと感じたので、急いで小説風に変換しました。ちなみにこの話は今年本当にあった話です。

吾輩は古本屋である。未来を見通すことならず。先日常連T氏が独りで来店し母の逝去を告げられた。店主はいたく驚いた。年末にお目にかかったばかりである。人の生死は如何にもなりようがない。悲嘆に暮れるT氏に店主は慰めの言葉をかけるもその効果は薄い。もはやなす術はない。このような場面において古書店の店主は無力である。

また今年の冬は暖冬なれど旅立つ人多し。悲しき別れあり。とある客人店内に入りて大声でご主人の永眠を店主に告げる。まことに驚くことかな。歳は店主よりも一回り上だが遠く離れた存在とは言えない。

介護をしている時は亡き人煩わしきかな。しかし亡き人いなくなれば淋しきかな。残されし人皆後悔する。店主はかのような人たちと話をする。信用されている。その結果本を頂くこともある。しかしだからといって儲かることはない。いくばくかの本を格安で得たとて大した利益とはならないのだ。

庶民の暮らしというのはこのようなものである。ただし幼き日より勉学に勤み就職後は仕事に励み経済的成功を勝ち取ることができたとしても死ぬ時に幸せであるとは限らない。それもまた人生である。


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