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シェア型書店も淘汰される

シェア型書店に関しては、古本屋の経営者として色々考えることがありました。そこで先日、叩かれることを恐れつつも「シェア型書店は本屋じゃない」というブログを書きました。

しかし、その後に店主が恐れていたようなことは起きませんでした。そして、かすかに期待していた賛同者も現れませんでした。とはいえ、自分が議論したいとも思っていなかったので、とりあえず静観を続けました。

ただ、X(旧Twitter)上では少々反応があり、その意見や記事などを追っているとシェア型書店への知識が少し増えました。すると、少し気がついたことがあったので、それについて今日のブログを書いてみたいと思います。

それは、「シェア型書店はブランド力が非常に重要な業態だ」ということです。

これはどういうことかというと、シェア型書店の本の販売価格は棚主が決定しています。しかし、その棚主の家賃はシェア型書店のオーナーが決めています。

そして、シェア型書店の収益は基本的に棚主から得る家賃収入なので、家賃が高ければ高いほど儲かります。つまり、シェア型書店経営者は賃料を高くしたいと思うはずです。ということは、高い賃料にしても申し込みが殺到するようなシェア型書店を経営する人が成功するわけです。

つまり、お金を払ってでも「ここで棚を借りたい!(書店をやりたい!)」と思わせるブランド力こそが、この業態の成功の鍵となる。そのためには、デザイナーを雇っての店舗デザインやロゴを含めたブランディング力、マスコミへのリリース力やSNSでの発信力、そういった魅力が大切になるのではないでしょうか。

マスコミが頻繁に取材してくれるようなシェア型書店であれば、出版社がアンテナショップ的な使い方で棚主になってくれるかもしれません。逆に、名もなきオーナーが経営しているシェア型書店であれば、棚主が集まらないという現実的な問題に直面するでしょう。

つまり、ブランド力がない、発信力がないシェア型書店は淘汰される運命にあると思います。

「本と読者のために」と意見を言っているのは棚を借りている棚主がほとんどだと思います。この棚主たちは損が出ても棚を借りるはず。そもそも利益を出しておらず、期待しておらず、言動が一致しています。しかし、シェア型書店の経営者は赤字の経営を続けるとは限りません。

「では、お前のところはどうなんだよ」と聞かれるかもしれないので古本屋の現状をお話しますと、チェーン店っぽくない居酒屋に若干客層が似ていると思います。大量に来店される一見さんではなく、定期的に利用してくれる常連さんがそこそこいればやっていけるのです。

つまり、古本屋はブランド力がなくてもやっていけます。もちろんあった方がいいですが、なくても問題ありません。ただただ、儲けが少ないことだけが問題です。

商売の上手い人は、一見さんを大量に集めて、流行っている間に儲けるだけ儲けて退出します。それこそ最近までタピオカ屋をやって、流行が終わりそうになったらいち早くお店をたたんで別業態へ移行したような人がそうでしょう。

だから、店主は今話題になっているシェア型書店についても冷ややかな目で見ています。多くの人が参入することで、これからトラブルだって起きるでしょう。

現在の世論?はシェア型書店の登場で出版業界が救われる、日本各地にシェア型書店が誕生してもっと本が身近になる、という感じです。でも、店主はそれらのニュースに否定的です。繰り返しになりますが、シェア型書店だって淘汰される時が来るはずです。

結局は、新刊書店であろうと、古本屋であろうと、シェア型書店であろうと、リアル世界で本の販売に関わる全ての業態がシュリンクし続けていくのは避けられない現実だからです。とはいえ、その時代の流れに抗っていく。そのためにも色々なところにぶつかりながら考え続けたいと思います。


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