【読書メモ】『種まきノート ちくちく、畑、ごはんの暮らし』(早川ユミ、アノニマ・スタジオ)
原稿関係で読む。不勉強ながら取材で初めて知った作家さんである。高知の山の上の本屋うずまき舎さんに教えてもらったのだった。
山の上で自給自足で暮らす、というと都会で生まれ都会で育ち、山というと小さいころ父親の実家にお盆・年末年始に帰った記憶があるくらいで正直縁遠いものだったりする。
でも、『ウルトラライトハイキング』で書いた通り山とか自然とかに漠然とした憧れがある。まあ体も弱いしめんどくさがりなので住むのは無理だけれど、だからこそ自分にないもの、という意味で憧れている。
本書は、この山の上の自給自足を地で行く早川ユミさんという布作家さんが書いたエッセイ集である。
とにかく読んでいて心地いい文章が特徴で、論理的かと言われるとそうでもないのに、感覚的に著者が自分の暮らしを愛おしんでいることが伝わってくる。
自給自足とか自然とかそういう方面の本は、どうしても現代文明を腐したり主語が大きくなってしまったりして首を傾げたりしたくなることが多いのだけれども、本書ではそういった部分が無いというわけではないがとても少なく、主語が著者と著者の周囲に限られているので共感しやすいのが嬉しい。
何かを否定したオルタナティブではなくて、ただそこにある別のやり方を実践している感じというか。否定ではなく包摂で、ネガティブではなくポジティブで、呪詛ではなく祝福な、そんな本だった。