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『わにさんとつきあかりのよる』

こんにちは。いどうほんやKOKOです。

いどうほんやKOKOを開業する、少し前のこと。

我が家には2人の子どもがいるのですが、寝かしつけにはとても苦労しました。
絵本の読み聞かせをおやすみスイッチにすることに大失敗したわたしは、夜が更けるにつれてテンションが右肩上がりの子どもたちを落ち着かせるため、ひとまず強引に電気を消し、布団の中でおはなしを語って聞かせることにしました。

するとだんだん、静かに耳を傾けてくれるようになり、安心して穏やかに、眠りにつくようになったのです。

最初は即興だった物語は、何度も話しているうちに定番になっていきました。

これは、そんな物語と思い出を忘れないよう、絵本の形にしておきたいと思い、制作したものです。(画像の転載はご遠慮願います。)

わにさんとつきあかりのよる

ある いけの ほとりに
やさしい わにさんが いっぴき
おんがくをききながら
おひるねばかりして くらしていました。

あるひの ゆうぐれに
わにさんは つぶやきました。
「こんやの つきは きれいだな。」

すると、かばさんが たずねてきました。
「やあ こんばんは。すてきな おんがくだね。
ぼく ここへきて おどっても いい?」

めずらしい おきゃくさまに
わにさんは おどろいて おきあがりました。
そして いいました。
「もちろんさ。さあ、おどろう!」

ぱらら ぱーら ぱらら ぱーら
わにさんは うれしくなって ひみつをひとつ うちあけました。
「ぼくはね このきょくを だれかと いっしょに ききたいって おもっていたんだ。」

すると あとから ぞうさんが やってきました。
「あら こんばんは。とてもたのしそうね。
わたしも なかまに なれるかしら?」
わにさんは よろこんで いいました。
「もちろんさ。いっしょに おどろう!」

ぱらら ぱーら ぱらら ぱーら
わにさんは もっとうれしくなって またひとつ ひみつを うちあけました。
「ぼくはね むかし すてーじで このきょくを えんそうしていたんだよ。」

そこへ こんどは きりんさんが やってきました。
「やあ こんばんは。とても にぎやかだね。
ぼくも なかまに いれてくれる?」
わにさんは おおよろこびで いいました。
「もちろんさ。いっしょに おどろう!」

ぱらら ぱーら ぱらら ぱーら
わにさんは とてもしあわせなきもちになって のぞみをひとつ うちあけました。
「またいつか このきょくを えんそうできるひが くるといいのにな。」

よが ふけて、みんなが まだ おどっていると
こっそり はずかしそうに さるさんが あらわれました。
わにさんは いいました。
「やあ こんばんは。きみも いっしょに おどるかい?」

でも、さるさんは もじもじするばかりで なにもこたえません。
わにさんは、さるさんが なにかもっているのに きがつきました。
「あれ? それは なんだい?」

「わあ!たいこだね!」
「たたいて みせて!」

さるさんが うれしそうに たいこを ならすと
みんなは とても うきうきした きもちに なりました。
わにさんが いいました。

「よし、それじゃあ ぼくも!」

わにさんは、 ながいこと しまってあった
ごじまんの さっくすを だしてきました。
わにさんと さるさんの えんそうが はじまりました。

みんなが いいました。
「ぼくたちも なかまにいれてくれるかい?」
わにさんが いいました。
「もちろんさ。みんなで やろうよ!」
わにさんのいえには すてきながっきが たくさんあったのです。

ぱらら ぱーら ぱらら ぱーら
なんて こころおどる よるでしょう。

そのよるは わにさんが いままでに すごした
どんな よるよりも すばらしい よるでした。

よが あけて
わにさんは みんなに おいしい こーひーを いれました。
こーひーがにがてな さるさんには こうちゃを いれてあげました。

みんなは ゆうべの えんそうが
どんなにすてきだったかを はなしあいました。

そして つぎの まんげつのよるに
また えんそうかいを ひらくことにしました。

だんだん ひが たかくなると
みんなは わにさんに おわかれを いって
じぶんの おうちに かえって いきました。
「またね、わにさん。つぎの えんそうかいまで さようなら。」
「ありがとう、みんな。 きをつけて かえるんだよ。」

わにさんは また ひとり
だいすきな おんがくを くちずさむと
ひとまず ゆっくり おひるねを しました。

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