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レティシア書房店長日誌

金井美恵子「スクラップ・ギャラリー」

 とても刺激的な美術エッセイでした。ルノワールから李朝民画の虎の絵まで、古今東西、古典派から現代アートの作家まで広く集めて、作品と著者流の解説をした本です。(平凡社/古書1300円)

 どれも面白いのですが、現代アートやアバンギャルド系の画家について論じているものが刺激的で、ぜひ実物を観てみたいと思いました。(紹介される画家は28人です)
 著者は映画に造詣が深く、本書でも多くの映画作品が登場します。え、そうだたっけ?とブルーレイを見直したのが、アントニオ・リガブーエ。
「ベルナルド・ベルトルッチの『暗殺のオペラ』が日本で公開されたのは1979年だったから、その二年前の『素朴な画家たち』展に出品されていたアントニオ・リガブーエの絵とブロンズ彫刻を一点ずつ見てはいたのだったが、その時は、正直いって、大して記憶に残る絵でも彫刻でもなかったし、一見、平凡な絵のように見えた。 『暗殺のオペラ』のタイトルバックには、荒々しい、ほとんど暴力沙汰といってもいいタッチと鮮やかで激しく、光にみちた荒々しい色彩で描かれた動物たちの絵が何枚か使われていて、草原でシマウマを襲うライオンや、農家の庭で毛を逆立て争う二匹の荒々しい猫や、雪原での鹿狩り、眼をランランと光らせて何かを見つめている黄色い巨大で獰猛な猫の顔などが次々と映し出され、その圧倒的な迫力に文字通り目を奪われる思いがしたのだったが、その絵の作者こそ、アントニオ・リガブーエだった。」
 リガブーエの作品が次のページに掲載されていのですが、猛々しい色彩と迫力ある動物。どんな経歴の画家なのか?と思ったのですが、著者によると「リガブーエについては、その後、いろいろと調べてみたのだが、インターネットに現われる情報も限られているうえに、イタリアで出版された画集や展覧会の図版カタログも売り切れで手に入らないのだった。」そうです。
 「ラウル・デュフィが、パリの高級ファッション・デザイナーでファッションの革新者でもあったポール・ポワレと組んで仕事をしたのは、1910年から11年の、わずか一年間だったらしい」という事実もこの本で知りました。「この時代のファッションをリードしたポール・ポワレの、コルセットを排してズドンとさせたシルエットのドレスは、布地を立体裁断でカットすることなくテキスタイルの持つ美しさをそのまま見せるのにふさわしいものだったから、彼が画家と組んで仕事をするのは、もっともなことだったかもしれない。」
 動きの激しい画風の画家が次から次へと登場する中で、長谷川潾二郎の「猫」、「猫と毛糸」、そして私の好きな「荻窪風景」が紹介されているのが、ちょっとホッとする瞬間でした。

レティシア書房ギャラリー案内
2/28(水)〜3/10(日) 水口日和個展(植物画)
3/13(水)〜3/24(日)北岡広子銅版画展
3/27(水)~4/7(日)tataguti作品展「手描友禅と微生物」

⭐️入荷ご案内モノ・ホーミー「貝がら千話7」(2100円)
平川克美「ひとが詩人になるとき」(2090円)
石川美子「山と言葉のあいだ」(2860円)
最相葉月「母の最終講義」(1980円)
古賀及子「おくれ毛で風を切れ」(1980円)
文雲てん「Lamplight poem」(1800円)
「雑居雑感vol1~3」(各1000円)
「NEKKO issue3働く」(1200円)
ジョンとポール「いいなアメリカ」(1430円)
坂巻弓華「寓話集」(2420円)
「コトノネvol49/職場はもっと自由になれる」(1100円)
「410視点の見本帳」創刊号(2500円)
「古本屋台2」(サイン入り/1650円)
RITA MAGAZINE「テクノロジーに利他はあるのか?」(2640円)
福島聡「明日、ぼくは店の棚からヘイト本を外せるだろうか」(3300円)
飯沢耕太郎「トリロジー」(2420円)
北田博充編「本屋のミライとカタチ」(1870円)
友田とん「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する3 先人は遅れてくる」(著者サイン入り!)


     


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