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レティシア書房店長日誌

映画「リアリティ」ティナ・サッター監督

 2017年、トランプ政権下のアメリカ。国家安全保障局の契約社員として勤務する25歳の女性リアリティ・ウィナーが、いつものように買い物を済ませて車で帰宅すると、見知らぬ男性二人が近寄ってくる。「ハァ〜イ」と笑顔で話しかけてくる二人は、実はFBI。捜査中の事件で聞きたいことがあるんだけれど、あっこれ任意だからね、と言いながら家の内へと入ってきます。さらに多くの捜査員がきて、彼女が何をしたのか?というサスペンスがとんでもない映画的手法で迫ってきます。


 これは実際にあった事件です。当日尋問を担当したFBI職員が、彼女とのやり取りを録音していました。映画は、そのやり取りの一言一句をそのまま映像化していきます。舞台は彼女が尋問される2階の部屋のみで、気さくで穏やかな口調のFBI職員が、ジリジリと彼女を追い詰めていきます。少しづつ首を絞められていくような息苦しさを、私たちも否応なく感じることになるのです。穏やかだった彼女の部屋の雰囲気が、不穏なものに変化していき、隠れていた真相が徐々に現れてきます。
 彼女は、実はトランプにとって不都合な事実をリークしていたのです。世間を騒がせたスノーデン事件と双璧をなすかもしれません。機密の保持か、それとも私たちが知る権利が大事か…….。しかし、そういう政治サスペンス映画ならば、作り手はヒロインにもっと寄り添った立場で演出するはずですが、尋問調書の通りに、客観的に彼女と職員の会話だけで進んでいきます。ある日、突然審問される恐怖が描かれます。
 上映時間90分に満たないのですが、じわじわと迫ってくる恐怖に長い間耐えているように感じました。ある日、私たちもこんな尋問に遭遇するかもしれません。そう思うと背筋がゾクッとしてきます。

フランクそうなFBIですが...…


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