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レティシア書房店長日記

政木哲也著「本のある空間採集」 
 
 書評家の永江朗が「書店観察の新しいかたちがここに。」と帯に書いている「本のある空間採集」(学芸出版/新刊2750円)は、確かに全く新しい視点で書店の姿を描き出した画期的な本です。

 永江の推薦の言葉を続けます。
「品ぞろえ、店主やスタッフの人柄。思いがけない本との出会い。本屋さんの魅力はいろいろある。なかでも『空間』はもっとも重要なひとつ。しかし、それを言葉で伝えるのは難しい。本書は店舗を実測した上で斜め上から見下ろすアイソメ図にして見せた。空間の構成だけでなく、どのように本が棚に並べられているのかもよくわかる。そうか、こういうふうになっていたのか。」
 ここでは、個人書店、私設図書館、ブックカフェなど20数軒が取り上げられています。上から見下ろすような感じで店舗の中を見ることができるので、店の中を歩いているような感覚で、楽しい!
 京都からは誠光社、ba hutte.が紹介されています。平面図に加え、外観や店内写真も収録されて、解説がついています。例えば「ba hutte(バヒュッテ)は、京都市の北白川という落ち着いた住宅街にある。表通りと裏の大学会館の敷地に挟まれたヘタ地のような細長い土地には、元々地元客向けの魚屋があった。普通の住宅は建ちようがない狭小地に地元建築家の設計による店舗付き住宅が建てられ、ba hutteが1階にオープンする。」と細かく解説されています。写真と文章が図面とマッチしていて、本屋ってこんな空間を持っているんだということを改めて知った感じがします。それぞれの空間をどれだけ豊かで鮮度の高いものしておくかが、書店員の仕事になります。
 驚いたのは、新潟市にある「今時書店」。開いたのは現役高校生で、ブックオーナーが1年ごとに入れ替わるスタイルでの会員制無人書店とのことです。図面を詳しく見ていると、キャッシュレス決済のため、カウンターにタブレットやカードリーダーが置かれていることがわかります。万引きといった防犯どうしているのだろう?新刊書店員時代、万引きには散々な目にあったので、興味をそそられます。


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