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レティシア書房店長日誌

渡辺政隆「<生かし生かされ>の自然史」
 
 本書の言いたいこと、ズバリ「さあ、声高に叫ぼうではないか。『植物にもっと敬意を!』。1998年、共に植物学者で科学教育学者であるルイジアナ州立大学のジェームズ・H・ワンダーシーとテネシー大学のエリザベス・シャスラーは、「植盲」という概念を提唱します。 
 「周囲の環境における植物の存在が見えず注意を払っていないこと。その結果、次のような弊害を招いていること。1.生物圏と人間生活における植物の重要性を認識できない。2.植物界に属する生きものの美的な特徴とユニークな生物学的特徴を評価できない。3.植物よりも動物のほうがランクが上という人間中心的な誤解により、植物は顧慮するに値しないという誤った結論に至る。」だからこそ、植物の科学的見地から、その優れた生き方を学ぼうというのが著者の考えで、本書でも数多くの学説、研究レポートを解説しています。はっきり言って、その全部は理解できませんでした、私には。専門用語が出るたびにIpadで検索しながら読んでいたのですが、う〜うん?という場面に何度も出くわしました。しかし、これだけは言えます。
 

植物ってすげぇ〜!!
 食虫植物の ハエトリグサは、自分の用意したトラップ袋に虫を呼び込み、それを溶かして栄養にしています。しかし、そのトラップ袋が虫以外の、例えば風が当たったりして、その都度開いていた袋を閉じてしまうと、エネルギーの無駄使いになってしまいます。そこでハエトリグサは考えたのです。数えればいいんだと。
 「トラップは、センサーである繊毛が20秒以内に2回刺激されたときにしか閉じない。しかも閉じただけでは消化液は分泌されない。消化液の分泌には3回目の刺激が必要なのである。そしてさらに、分泌量も調整される。センサーが刺激を受けた回数に応じた量の消化酵素しか分泌されないのだ。」
 ハエトリグサは、袋に刺激を受けた時、その刺激が連続して起きた時に、おっ、これは虫だと理解し、袋を閉じます。慌てて、袋から脱出しようとした虫が、袋に刺激を与えて初めて、これは間違いなく私の食べ物だと考え、いただきま〜すと虫を溶かす消化液を放出するのです。
 肉食のキノコの話もあります。キノコが肉食??思わず、日本の特撮映画「マタンゴ」を思い出しましたね。
 「スーパーでふつうに売られているヒラタケが、じつは肉食性でもあるという話だ。いや、ヒラタケが動物を襲って食べるというわけではない。菌糸にからまった線虫〜細い糸のような微小な線形動物〜などを殺して消化するらしいのだ。 この手の菌類は、線虫食菌類と呼ばれ、意外に多いようだ。なかには菌糸を投げ縄状にして、それで線虫をからめ捕るツワモノもいるとか。」いやぁ、何だかすごいお話がどんどん登場してきます。
 進化と生態系をめぐる複雑な仕組みを、最先端の研究成果を紹介しながら、時にユーモアを加え、皮肉を含めたりしながら教えてくれる科学エッセイです。この著者については以前にも「科学で大切なことは本と映画で学んだ」(古書900円)を紹介しました。こちらは、もっと肩の凝らない本です。おすすめです。

●レティシア書房ギャラリー案内
10/7(水)〜10/13(日) 槙倫子版画展
10/16(水)〜10/27(日)永井宏「アートと写真 愉快のしるし」
10/30(水)〜11/10(日)菊池千賀子写真展「虫撮り2」


⭐️入荷ご案内
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本3」(660円)
おしどり浴場組合「銭湯生活no.3」(1100円)
岡真理・小山哲・藤原辰史「パレスチナのこと」(1980円)
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「てくり33号ー奏の街にて」(770円)
「アルテリ18号」(1320円)
「オフショア4号」(1980円)
「うみかじ9号」(フリーペーパー)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
加藤優&村田奈穂「本読むふたり」(1650円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
孤伏澤つたゐ「悠久のまぎわに渡り」(1540円)

森達也「九月はもっとも残酷な月」(1980円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
TRANSIT 65号 世界のパンをめぐる冒険 創世編」(1980円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」

いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)


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