見出し画像

レティシア書房店長日誌

 小林真理編著「柚木沙弥郎 美しい本の仕事」
  
 染色工芸作家、柚木沙弥郎が、今年1月31日に102歳で亡くなりました。数年前の美術館えきKYOTOの個展では、とても楽しい時間を過ごすことができました。
「みずみずしい感性で創り上げられる図案、そして鮮やかな赤や青、柔らかな緑や水色など豊かな色彩。日常にある身近なモチーフを基点に、自由な心を介して生み出された作品群は、生き生きとした生命力に満ちあふれる絵本や版画となって、人びとの生活空間を豊かに彩りつづけている。」と、本書(新刊/3080円/パイ・インターナショナル)編著の小林真理は、柚木沙弥郎の真髄をこんな文章で表現しています。

 「柚木は美を求める作家たちの期待に応えるべく工夫を重ね、装幀の新たな世界を確立した。師匠である染色家の芹沢銈介も多くの装幀を手がけたが、二人の本の仕事において魅力を引き出す共通の要素は、何といっても『型染』による文字と絵柄との融合である。 『型染』とは、型紙を使って布地の上に防染糊を置いて染める伝統的な技法だ。日本の伝統的な木版印刷のように、本来なら絵師、型彫師、染物師(紺屋)が分業で行う作業を芹沢は一人で行った。柚木は芹沢の影響を受けて、染色の技法や感性を本の表紙や見返しに生かしている。色や形や模様を自由に表現できる染色を本作りに応用しているのだ。」
 柚木の型染の工程も本書で見ることができます。
「第1章 装幀と本の仕事」から始まって、「第2章絵本の仕事」「第3章絵の仕事」「絵本の原画の魅力」「第4章文字の仕事」と分けられて、彼の膨大な作品を楽しむことができます。
 「絵本の原画の魅力」では、彼の原画の楽しさ、面白さを堪能できます。ジャズミュージシャンの山下洋輔が文章を書いた「つきよのおんがくかい」は、音楽の楽しさに満ち溢れた絵本です。もちろん、個展で原画を観て、いいなぁ〜と思いました。
 当店で、今も人気の金関寿夫/訳・柚木沙弥郎/絵による「魔法のことば」(新刊1650円)について、こう解説されています。
「柚木は72歳のとき初めて絵本を手がけた。『魔法のことば』は、エスキモーの口承詩をもとにした物語に柚木がつけた絵が、原始的な詩の世界と見事に合致し、<子どもの宇宙>国際賞(スイス)を受賞。型染による力強さと物語と呼応する絵の世界が高く評価された。」

 ところで、昔持っていたCDブック「長岡輝子朗読 宮沢賢治の魅力全6巻」のジャケ絵も柚木だったことを、本書で初めて知りました。もう手元にないのが、残念!

レティシア書房ギャラリー案内

3/13(水)〜3/24(日)北岡広子銅版画展
3/27(水)~4/7(日)tataguti作品展「手描友禅と微生物」
4/10(水)〜4/21(日)下森きよみ 絵ことば 「やまもみどりか」展

⭐️入荷ご案内モノ・ホーミー「貝がら千話7」(2100円)
平川克美「ひとが詩人になるとき」(2090円)
石川美子「山と言葉のあいだ」(2860円)
最相葉月「母の最終講義」(1980円)
文雲てん「Lamplight poem」(1800円)
「雑居雑感vol1~3」(各1000円)
「NEKKO issue3働く」(1200円)
ジョンとポール「いいなアメリカ」(1430円)
坂巻弓華「寓話集」(2420円)
「コトノネvol49/職場はもっと自由になれる」(1100円)
「410視点の見本帳」創刊号(2500円)
_RITA MAGAZINE「テクノロジーに利他はあるのか?」(2640円)
福島聡「明日、ぼくは店の棚からヘイト本を外せるだろうか」(3300円)
飯沢耕太郎「トリロジー」(2420円)
北田博充編「本屋のミライとカタチ」(1870円)
友田とん「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する3 先人は遅れてくる」(著者サイン入り!)
中野徹「この座右の銘が効きまっせ」(1760円)
青山ゆみこ「元気じゃないけど、悪くない」(2090円)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?