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ガザのこと

「 ファウジーは、「パレスチナはこんな形だよ」と砂にパレスチナの地図を描き、その脇にアラビア語でパレスチナを意味する「ファレスティーン」と書いた。  その隣に、「エルサレムはこんな感じ」と写真で見た「岩のドーム」を描く。彼がまだ一度も見たことがなく、国を持ちたいと願いながら一度も持ったことのないパレスチナ人の「首都」、聖地エルサレム。「サミールは行ったことあるの?」「子どもの頃にね。昔はわりと気軽に行けたんだ」「いいなあ」。そう言ってファウジーはまた、「ガザってちっちゃいなあ」とつぶやいた。「さて、そろそろ時間だ」とサミールが言って、海を背にメッカの方向を向いて三人が横に並んだ。跪き、砂に頭を垂れて祈りをささげる。起き上がった三人の鼻の頭についた海の砂。いつもふざけてばかりいるムハンマドさえ神妙な顔をしている。  私は祈り続ける彼らに向けて何度もシャッターを切る。ファインダーから覗いた彼らは仲の良い兄弟のように見えた。その背後では満ちてきた潮が砂浜を洗い、ファレスティーンの地図を消した。」

『ガザの空の下──それでも明日は来るし人は生きる』
藤原亮司 著

 本書の著者である藤原亮司さんは、パレスチナの状況を長年にわたり取材されてこられた日本人ジャーナリストの方です。

著者の命がけの多数の取材中のお写真や動画が僕の胸を打ちました。

彼のご友人サミールさんのご家族の支援を呼びかけてらっしゃいます。

Free Gaza, Free Palestine
"I am Hamza from northern Gaza.
I hate to do this, but I have no other choice. We were forced to eat animal feed in the northern Gaza Strip. We have been through the worst days of our lives.
Please help me and my family."
「私はガザ北部出身のハムザです。
こんなことをするのは嫌ですが、他に選択肢はありません。ガザ地区北部では、私たちは動物の飼料を食べることを強制されました。私たちは人生最悪の日々を過ごしてきました。私と私の家族を助けてください。」
彼らが住んでいた家はイスラエル軍によって破壊されました。危険を避けるため、避難所を転々としている。彼の弟は攻撃により負傷しました。
彼らが生き残るため、クラウドファンディングに少しでもご協力いただければ幸いです。
クラファンサイト QRコード
真ん中の妹を抱いた黄色いシャツが10年前のハムザ・スベータ。現在は22歳の大学3年生だったが、大学もイスラエル軍によって破壊された。右端は父親のサミール・スベータ(2014年8月撮影)
藤原亮司さん制作ポスター
QRコードからもハムザさんご一家のクラファンサイトへ飛べます。

このようなジャーナリストの方の行動の発露としての言説に無関心ではいられませんでした。

現地での藤原さんの取材協力をされてこられたサミールさんのご子息、ハムザさんご一家がいまだにガザ北部から出れておりません。

ガザの国境を越えるには、多額のお金が必要であるのはもはや周知の事実となってもおります。

ハムザさんご自身は寄付を募ることに躊躇もされたようです。

この百年前後の歴史を振り返ると、イギリスによる三枚舌外交と植民地主義的シオニズムに辿り着きます。国際社会はパレスチナの方々の状況を単なる〈難民問題〉としてしか扱わず、このような国際的な無視がパレスチナ人の自己決定権と政治的権利を脅かし、PLOや後にはハマスといった組織の台頭を促進する土壌を提供してきました。

「Security Council Resolution 242 treated the entire issue as a state-to-state matter between the Arab countries and Israel, eliminating the presence of Palestinians. The text does not refer to the Palestinians or to most elements of the original Palestine question; instead it contains a bland reference to “a just solution of the refugee problem.” If the Palestinians were not mentioned and were not a recognized party to the conflict, they could be treated as no more than a nuisance, or at best as a humanitarian issue. Indeed, after 1967, their existence was acknowledged mostly under the rubric of terrorism purveyed by Israel and eventually adopted by the United States.

意訳

安保理決議242は、アラブ諸国とイスラエルとの国家間の問題として全ての問題を扱い、パレスチナ人の存在を排除した。文書はパレスチナ人や最初のパレスチナ問題の多くの要素を言及しておらず、難民問題の公正な解決についての曖昧な言及を含んでいるだけである。パレスチナ人が言及されておらず、紛争における認識された当事者とされていない場合、彼らは単なる迷惑、または最良の場合は人道的な問題として扱われることができる。実際、1967年以降、彼らの存在は主にテロリズムの文脈で認識されている。」

『The Hundred Years' War on Palestine』
Rashid Khalidi著

安保理決議242がパレスチナ問題を「難民問題」として曖昧に扱い、パレスチナ人を紛争の有効な当事者として扱わなかったことは、PLOとハマスのような組織がなぜ力を得たのかを理解する上で極めて重要です。
彼らは自らの権利と存在を主張し、国際社会に認識されるために積極的行動を取ったのかもしれません。

『シャティーラの四時間』/『恋する虜』ジャン・ジュネ著、『パレスチナとは何か』エドワード・サイード著を何度も読み返していた時期がありました。シオニズム、ユダヤ人の政策は国家を形成しました。
一方、パレスチナ解放運動、世界からはテロと言われ、パラドクス的に彼らは利用されつくしています。

報復に次ぐ報復がもはや集団懲罰的になっています。
2023年10月7日からのパレスチナ側死者数は既に35,000人以上の方々が亡くなられてます。

「ガザ地区北部への立ち入りは非常に制限されているため、ガザ地区北部に関する情報はほとんどありません。私たちの輸送隊や援助トラックは、しばしば検問所で長時間待たされます。一方、多くの絶望を抱える人々が、配給を待つことができずに直接食料を手に入れようと、援助トラックに近づいてきます。イスラエル当局が私たちの輸送隊に横断の許可を出す頃には、トラックはほとんど空っぽになっています。」

UNRWA事務局長より「ガザ地区:死、疲労、絶望の中で日々の生きるための奮闘」https://www.unrwa.org/japan70th/asturugglefordailysurvival/

個人への寄付には様々な考えもあると思います。
寄付が本当にご本人に届くのか、親戚やご両親をなくした情報発信手段を持たないちいさなお子さまや障がいを持ってらっしゃる方々はどうなるのか、など僕も葛藤いたしました。
それでも、どうか、ひと家族でも、と思いました。

まだまだ、必要な金額には達していないようです。

このような文章を僕が書いている間にも、彼らの命がどうなってもおかしくない状況です。

ご支援のほど、よろしくお願いします。

https://gofund.me/9ffd4049

ハムザさん、サミールさんご一家、どうか、ご無事で🙏

※写真のポスターは藤原亮司さん制作です。
ご本人のご了承を得て投稿させていただきました。


参考文献

『ガザの空の下──それでも明日は来るし人は生きる』藤原亮司 著 dZERO

『The Hundred Years' War on Palestine』Rashid Khalidi 著 ProfileBooks

UNRWA事務局長より「ガザ地区:死、疲労、絶望の中で日々の生きるための奮闘」

『パレスチナとは何か』エドワード・サイード著 岩波書店

『恋する虜』ジャン・ジュネ著 人文書院




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