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2021年7月の読書メーターまとめ

今月はミラン・クンデラの著書との出会いがとても印象深い。

おかげでオースターの本がいくつか未読のまま図書館へ返却日を迎えてしまったくらい、クンデラにはまった。

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2021年7月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:4954ページ
ナイス数:147ナイス

ペア読本
ピアニストは語る
子供時代

再読本
取り替え子

■Immortality
読了日:07月31日 著者:Milan Kundera
https://bookmeter.com/books/4363444

■ピアニストは語る (講談社現代新書)
アファナシエフのベートーヴェン ピアノソナタをいくつか妻に教えてもらって聴いてみた。静寂さと音の粒たちとのハーモニーから生まれる感情の揺さぶりを彼の演奏からも伝わる。
本書からは亡命の困難を乗り越えてきた背景と培われた音楽、生きること、自己表現の思想が伝わる。

タフで非常に芯の強い人だなぁと思う。
読後彼の月光を家族で聴いていて何とも言えない感動をもらえた。
読了日:07月30日 著者:ヴァレリー・アファナシエフ
https://bookmeter.com/books/11151426

■無意味の祝祭
クンデラの到達点のような本だった。
無意味を愛すというのは、ニーチェで言う運命愛的なものに包括される気がした。
ひとつのオペラのような本。
読んでいてずっとカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲が頭の中で鳴り響くようなイメージ。
読了日:07月29日 著者:ミラン クンデラ
https://bookmeter.com/books/9432562

■存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)
クンデラの思想、キッチュの永劫回帰をフーガの技法のような小説スタイルで提示している。
全裸で鏡の上を歩かされたり、糞をトマーシュの前で出させられるサビナがキッチュの例なのだろうか。実母に「罪」を与えられたり、嫉妬や後悔といったルサンチマンに陥っていたテレザが、トマーシュからの真の解放によりトマーシュへの真の愛を見出すまでは、ニーチェのツァラトゥストラ的に言うと3段変化の模倣のようでもある。
読了日:07月27日 著者:ミラン・クンデラ
https://bookmeter.com/books/543486

■取り替え子 (講談社文庫)
再読。
田亀のヘッドフォンで再生されてゆくのは吾良の声だけではなく、主人公コギトの痛みも緩やかに時間をかけて再生、回復しようとしていたのかもしれない。

「こちら側からの通信をひたすら待っている自分。もしそれへの応答が永遠にないとすれば、と全身がバラバラになるような寂しさを感じた」p35
近しい人が亡くなった直後は誰もが似たような感覚に陥る。時間が経過すると、思い出と共に寂しさの質が変わる。
読了日:07月24日 著者:大江 健三郎
https://bookmeter.com/books/521053

■子供時代 (新潮クレスト・ブックス)
第二次世界大戦が終わってしばらくした頃の旧ソ連。
スターリンが政権を握っていた時代の、子どもたちの屈託のない様子が描かれている。
一連の短編の登場人物の子供たちはそれぞれ近所なのだろう。最後のお話でゲーニャの誕生日にこれまでの短編の中で登場した子供たちが集まる。
印象的なのは、いじめられっ子だったゲーニャが、ピアノや折り紙といった芸術を通して子どもたちに受け入れられる最後のお話だった。
また、ウラジミール・リュバロフによる挿絵は直接的にはストーリーと関連性はなくとも、どこか素朴な暖かさがある。
読了日:07月23日 著者:リュドミラ ウリツカヤ
https://bookmeter.com/books/9749694

■言語の七番目の機能 (海外文学セレクション)
名探偵シャーロックホームズとワトソンならぬ、シモンとバイヤールが活躍する哲学界スーパースターたちを巡るエンタメ007フランスバージョン。
とあるメモを持ち歩いていたロラン・バルトが交通事故で運ばれ、メモも消える。
フーコー、デリダ、サルトル、ボーヴォワール、アルチュセール、エーコ、そしてミッテランと実在した有名知識人達か登場し、現実なのか虚構なのかわからないような記号学ミステリー。
純粋に面白かった。
エーコ以外扱い酷い。
読了日:07月21日 著者:ローラン・ビネ
https://bookmeter.com/books/16384972

■全体主義の克服 (集英社新書)
一なる全体にすべてを包含しようとする諸概念を批判し、より偶然や他者に開かれた地平を示そうというのが本書のポイントである。
本書は二人の哲学者、マルクスガブリエルと中島隆博の対談形式となっている。

科学技術の生み出す国境、境界線なき目に見えない全体主義、グローバル資本主義、心なき経済活動への厳しい批判をしている。
また、それを乗り越え新たな世界秩序を生み出すためにも、哲学に、現在起こっている現象をよりよく理解できるようにすることが求められる、としている。
東アジア哲学を学びたいとも思わされた。
読了日:07月17日 著者:マルクス・ガブリエル,中島 隆博
https://bookmeter.com/books/16346532

■Red (中公文庫)
主人公は女という生き方どうこうより欲望に流されやすい印象が残った。
30代でならまだ先はあるが老後に後ろ振り返ったら、誰もいない孤独な老人になっている可能性大だと思う。
夫との話し合いをきちんとすべきだったのに、男優先している感がなんだかなぁ。
夫婦の話し合いはやはり大事だ。
そして1番腑に落ちないのは子どもの話がまったく出てこないに等しいこと。これこそ自己中心的な主人公を象徴しているように思える。
読了日:07月16日 著者:島本 理生
https://bookmeter.com/books/12209736

■Fake (幻冬舎文庫)
序盤のイカサマも後半のイカサマも面白い。そして、バカ息子が、最初から最後まで、読み手をハラハラさせる笑。特に僕自身テキサスポーカーが好きなので、ふふってなりながら読んでいたらあっという間に読み切っていた。
Kindle版なので厚みはわからないが、分量の割にさっと読めて、趣味のポーカーが後半、ストーリー展開のキーとなっていたので良い気分転換になった。
読了日:07月11日 著者:五十嵐 貴久
https://bookmeter.com/books/540285

■翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)
「ライ麦畑でつかまえて」を初読の時は子どもだったので、当時は全く、サリンジャーの戦争体験によるPTSDがどうだとか、イノセンスにこだわっているのがどうだとか考えなかった。大人になると、大人の目線からの感想になってしまい、そうなると、村上春樹の解説にも興味が湧いた。本書は柴田元幸との対談の他、本来「キャッチャー~」に載せるはずだった翻訳者のあとがきが掲載されている。イノセンス辺りの解釈はみんな似たようなものなのだなと思うと同時に、さすが著者二人とも深く読まれているのがわかった。
読了日:07月10日 著者:村上 春樹,柴田 元幸
https://bookmeter.com/books/483916

■ムーン・パレス (新潮文庫)
読後少し個人的に引きずる作品だった。オースターによる「413ドルから再スタートを切るライ麦畑でつかまえて」的なものに見えた。
サリンジャーと共通しているのは2人とも傷を癒やそうと、あるいは意識せずとも、書き続けているように思えてきた。偶然と必然の二項対立的な事象や喪失感をテーマにすることが彼にとって結構なウェイトを占めているのだろうか?そして作品中の女性が皆したたかな強さを持っていてリアリティある。
読了日:07月09日 著者:ポール・オースター
https://bookmeter.com/books/579421

■闇の中の男
9.11のない伍長の世界線と孫娘のいる老人の世界線。
いずれの世界線でも紛争が起こっている。

オースターによるブッシュ政権への批判と9.11に対する哀悼の意が現れていた。

後半、故・後藤健二さんを思い浮かべた。

初期の3部作と比較してしまうと、残像のシャッフルされる感覚が少し弱い。

どちらの世界線をオースターが望むものなのか、現実の世界も虚構の世界も理想ではない。

それでもけったいな世界は転がっていく。

読了日:07月05日 著者:ポール オースター
https://bookmeter.com/books/8068151

■幽霊たち (新潮文庫)
ブルーの存在証明のためのブラックの視線
イタロカルヴィーノの描いた見えない都市の中を彷徨い歩きながらずっと自身の影を尾行しているような感覚はガラスの街同様にタブッキの世界観を彷彿させた。
2作品目だが、オースターはアメリカ版タブッキに思えてならない
読了日:07月04日 著者:ポール・オースター
https://bookmeter.com/books/579828

■ガラスの街 (新潮文庫)
ニューヨークは尽きることのない空間、中略、自分がどこにもいないと感じることができたp6
街=ガラスの街、蜃気楼の街、どこでもないどこかの街。バベルの塔で出てくる楽園のようなユートピア。
ピーター・スティルマン
本当の名前ではない。
ポール・オースター
本人でもない。
意味のない名前たち。
🍀
赤いノートに綴られたポールオースターの妄想?
🍀初オースター。最初は村上春樹っぽいなと思ったが、すぐ違うな、と思い直した。タブッキ風味だ。
妻シリへの愛の為に書いたという訳者あとがきを読んで、ふと親近感が湧いた。
読了日:07月04日 著者:ポール オースター
https://bookmeter.com/books/7118517


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