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生は彼方に

著者 ミラン・クンデラ
訳 西永 良成
出版 ハヤカワep 

生は彼方に、窓の向こうのそとにある
『生は彼方に』ミラン・クンデラ ハヤカワep p150

クンデラの作品番号op.2
1番目は「冗談」。

クンデラの作品はほとんどが7部構成となっていて、その構成は音楽的構成でもある。
本作品は1967年クンデラ38歳頃から書かれ、1970年にフランス ガリマール社からフランス語版として出版された。チェコ語を介さずにフランス語からの日本語翻訳。
奇数の部に主人公ヤロミールが登場し、クンデラの自己批判、自己嫌悪の滲み出た自伝的小説とも言えるかもしれない。
本書は、『存在の耐えられない軽さ』よりも前に書かれた作品ではあるが、彼の哲学的思索が随所に散らされており、大変面白い。

あらすじ

恐怖政治を音楽や詩といった抒情で民衆を煽動していた社会情勢を批判しつつ、10代の少年から青年に成長していく過程をポリフォニックに描いた歪んだ、クンデラの自伝的なハイパーミラクル青春小説。

感想

主人公の極端な性格、利己的で精神的に未熟な抒情を鎧にし大義名分のもとでの彼女に対する行動は歪んだ愛情は母親の過保護からのものなのか?

自分勝手な絶対的愛を渇望するのは極端だが何となくわからなくもない。

第七部の各節が呼応し合いながらどんどん融合していく感覚が圧巻だった。 解説がとても親切で訳者のクンデラ論を読みたくなった。

カミュの異邦人とシーシュポスが切っても切り離せない関係であるように、生は彼方にと不滅もそうした関係性が見出せる気がする。
本書での偶然生まれたヤロミール
不滅での偶然小説のモチーフとして生まれたアニェス

どちらの作品も少々ペシミズムとシニカルな雰囲気。主人公も呆気なく死んでいくし、音楽的7部構成。


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