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読んだ本の感想

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卍丸的な読書感想文集
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#わたしの本棚

ページと瓦礫のあいだで

ポール・オースターが死んだ。 そのようなニュースを見たとき、僕は偶然にも『ムーン・パレス…

卍丸の本棚
1か月前
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運命の彼方へ ──ミラン・クンデラとカール・ヤスパースに寄せて

はじめに ヤスパース──懐かしくも親しみ深い名前が飛び込んできた。須藤輝彦さんの『たま…

卍丸の本棚
2か月前
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須賀敦子さんのイタリア文学論を読む  第2回 現代詩論編

はじめに前回の中世詩論に続き、今回は須賀敦子さんのイタリア文学論から現代詩論について。 …

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ヘッセとクリムトのダナエ

この詩が僕をむかし掴んだ頃のように、今、僕を捉えて離さない。かつての頃よりも深いところで…

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『黒いチューリップ』 アレクサンドル・デュマ

『黒いチューリップ』 アレクサンドル・デュマ・ペール(大デュマ) フランス文学 1850年作 …

12

とりとめのないこと2023/03/20 185日目の一日一篇須賀敦子───須賀敦子さん没後25年…

一通のメッセージ───「おはよう。 ご存知かもしれないんだけど、今日は須賀敦子さん没後25…

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土曜の朝、須賀敦子全集第三巻を読み終える

早朝、まだ陽が登らない時刻、冬の蘇州の小さなホテルの一角にあるコインランドリーの並ぶ部屋──乾燥を待つ間、僕は須賀敦子全集第三巻を読み終えた。 他の宿泊者がやって来て、お互い寝ぼけ眼で軽く会釈した。霧が窓を薄い水のベールのように覆っている。ガラスに映る僕と見知らぬ人。窓の中の僕らは水滴で表情も視線も曖昧だ。 向こう側の僕らは冬の運河の旅仲間のように思えた。 外を眺め、眼を閉じると、ドラムの回る音だけが響く。 冬の運河沿いの木々が僅かに見える。 僕はどうしてだか白い薔薇の花

2022年の本、僕のベスト約10冊

やはり、いちばん影響を受けたのはバタイユだろうか。 エロティシズムはもはや僕のバイブル的…

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夜を流れる船のように── 2022年を振り返って

ひとまとまりの思考──さまざまな時代と文化背景の異なる言葉たちに出逢い、僕の心に浮かんで…

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Memoirs of Hadrian

回想とは、過去あるいは歴史における己の生への賛歌だろう。 誰かの頬をつたう涙はその讃歌の…

3

『無垢の博物館』 オルハン・パムク

はじめに2008年のノーベル文学賞トルコ人作家、オルハン・パムク。(パムクのノーベル賞受賞ス…

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古寺と須賀敦子と室生犀星

気付けばホテルの部屋は暗闇に包まれ、窓の外の高層ビル群は光彩を放ちはじめていた。 冬の上…

17

『他人の顔』 安部公房

はじめに『砂の女』の次の長編で、「失踪三部作」の2作目となる。 三島由紀夫は本作について、…

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偶然と必然、偶然と運命 ① ヤナーチェクの音楽の運命

はじめに読書や映画鑑賞をしていると、心に残る作品の特徴として、偶然と必然あるいは運命、そしてそれらにまつわる記憶や忘却がテーマに流れていることが多いように思える。 また、意識することなく使ったり感じたりする、意味を持つ言葉のもつ機能的なイメージ──すなわち概念と言うかもしれない──のいくつかに(偶然と必然)、(偶然と運命)がやはりある。 偶然とはなんなのか、必然、運命とはなんなのか? それらの関係性はどうなっているのか、 少し考えてみたい。 あらゆる物事の起こり得る確率