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読んだ本の感想

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卍丸的な読書感想文集
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#あらゆる戦争に反対します

ページと瓦礫のあいだで

ポール・オースターが死んだ。 そのようなニュースを見たとき、僕は偶然にも『ムーン・パレス…

卍丸の本棚
1か月前
12

『非-知』と現代社会の危機

はじめにジョルジョ・バタイユが提唱する「非-知」の概念は、合理性や理性主義に対するラディ…

卍丸の本棚
2か月前
12

ふたつのエクリチュールの差異──紙に書かれたものと虚無に書かれたものの暴力性

 僕の読書スタイルは書写になりつつある。詩人、思想家や文豪の美しく洞察力にすぐれた文章、…

卍丸の本棚
7か月前
10

絶対的空間の欠如と回復──非暴力の企て

妻と週末に庭の柿をいくつか収穫した。キッチンに無造作に置かれた柿と同化するかのような西日…

卍丸の本棚
7か月前
9

『恋する虜』 ジャン・ジュネ

 デモクラシーとは、他民族排斥に立脚し、自民族中心的な平等を謳うものかもしれない。 宗教…

卍丸の本棚
8か月前
18

鏡、レダと白鳥、ローマ悲歌

 朝は少し曇っており、太陽が顔を隠すと少し肌寒い。紺色の作業着も長袖のものを紺色のシャツ…

卍丸の本棚
8か月前
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『土神と狐』 宮沢賢治

はじめに 僕の拙い文章を、いつも読んでくださるSさんに、『土神と狐』宮沢賢治 著 をおしえていただいた。 美しい樺に恋する狐と土神。 狐は上品で身なりも小奇麗だが、土神は神であるにもかかわらず、粗野で、あまり見なりに気を使っていない。 物腰柔らかで上品〈そう〉な人は、ひとあたりもよく、他の人々に嫌われる要素も──うわべだけの付き合いならば──あまりないであろう。 樺が土神よりも、狐の方を好いていたのも、頷ける。 なぜならば、樺は、狐のことも、そして、土神のことも、うわべ

憲法について

非常に刺激的で暑い日だった。 憲法と聞いて右左、じぶんには関係ない、と感じるひともいるか…

卍丸の本棚
10か月前
18

至高の感性──『ヒロシマの人々の物語』

もうすぐ、78回目の終戦記念日がやってくる。 長崎──原爆投下地として最後の土地であること…

卍丸の本棚
10か月前
14

『目眩まし』ゼーバルト・コレクションから

雨が降ったり止んだりする。 この数年は、春が足早に通り抜けていったかと思うとすぐさま蒸し…

卍丸の本棚
11か月前
19

『移民たち 四つの長い物語』ゼーバルト・コレクションから

はじめにアントニオ・タブッキが大好きな僕。あるタブッキ好きな方から「きっと気に入りますよ…

10

須賀敦子さんのイタリア文学論を読む  第2回 現代詩論編

はじめに前回の中世詩論に続き、今回は須賀敦子さんのイタリア文学論から現代詩論について。 …

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大江健三郎さんを偲んで

憲法記念日、大江さんの短編や松浦司教さまの平和についてのご本を読んで過ごした。 僕は憲法…

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『黒いチューリップ』 アレクサンドル・デュマ

『黒いチューリップ』 アレクサンドル・デュマ・ペール(大デュマ) フランス文学 1850年作 作品の舞台は三銃士のダルタニアンから二十年後くらいのお話だろうか。 勧善懲悪な冒険活劇で程よい純愛がある。 デュマの作品は三銃士ものやモンテ・クリスト伯など、ひとつひとつがとても分厚い。 そんなデュマの作品群の中でも、『黒いチューリップ』は奇跡的に小ぶりで一冊に収まるため、時々読み返している。 小ぶり故にモンテ・クリスト伯のようなスケールの広がりはあまりない。 しかしなが