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読んだ本の感想

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卍丸的な読書感想文集
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#海外文学

カフカとカミュ、そしてゼーバルト

『カフカ短編集』『審判』『城』を久しぶりに再読している。 カミュが『フランツ・カフカの作…

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『移民たち 四つの長い物語』ゼーバルト・コレクションから

はじめにアントニオ・タブッキが大好きな僕。あるタブッキ好きな方から「きっと気に入りますよ…

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言葉と愛と物語と─『The Dictionary of Lost Words』by Pip Williamsを通して

はじめに日本語版では『小さなことばたちの辞書』というタイトルで小学館から刊行されているよ…

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『同調者』アルベルト・モラヴィア

夕方、妻に買い物を頼まれて、材木座近くのドラッグストアへやってきた。車の中に夕暮れの西日…

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『時は老いをいそぐ』アントニオ・タブッキ

タブッキは時と空間のねじれを記憶を媒体にした文章を音楽的に建築するかのように記録してきた…

16

『戦争の悲しみ』 バオ・ニン

寒波がやってくる少し前、集中して本を読みたくて、近所のカフェに立ち寄った。 ヴェトナム戦…

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Ciao

僕は何枚も馬鹿みたいに写真を撮った。 厚手のウェットスーツ姿のサーファーたち 娘が妻と母の間に立ち、彼女たちの手をしっかりと握りしめて波打ち際へと向かう姿。 彼らの向こう側、遠くの水平線を見ると、たくさんのヨットが揺れながらぽつぽつと波の合間に浮かんでいた。 風の強い冬、午後の海。 目を瞑ると、ヨットに乗るひとたちが、僕の逢いたいひとたちなのかもしれない、とそんな考えが浮かんだ。 あまりに遠くまでお互いに来てしまい、僕は彼らと次に逢えるのはいつの日なのかわからない

2022年の本、僕のベスト約10冊

やはり、いちばん影響を受けたのはバタイユだろうか。 エロティシズムはもはや僕のバイブル的…

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『無垢の博物館』 オルハン・パムク

はじめに2008年のノーベル文学賞トルコ人作家、オルハン・パムク。(パムクのノーベル賞受賞ス…

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場所 アニー・エルノー

ヨーロッパの長い貴族社会の歴史を振り返れば、だからこそナポレオンのフランス革命があったり…

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幻影の書

著者 ポールオースター 訳者 柴田元幸 出版 新潮文庫 ポール・オースターは本書で読むのが…

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善悪とr>gを超えたヒューマニズム

はじめに8月に、少し前に流行った本、フランス経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本』を再…

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アリ・スミス四季四部作④『夏』

はじめに四部作全編を読み終えた感想 前三作品の伏線のように散りばめられたものたちが回収さ…

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アリ・スミス四季四部作①『秋』

※本投稿は、どの政党を支持するしないと扇動したりするような内容ではありません。 「何を読んでいるのかな?」 スコットランド、インヴァネス出身の作家、アリ・スミスの四季4部作、第一弾の『秋』の中で、老人介護施設で眠り続ける101歳のダニエル・グルックがかつて主人公エリサベス・デマンドにいつも、そう尋ねていた。 英国ポップアートのアーティスト、ポーリーン・ボディのコラージュを見ているかのように1960年代や2000年代を行ったり来たりする物語。作中の老人は落ち葉を揺らす美しい