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チルりたいんですか?地龍さん 第一話 chill outと地龍
あらすじ
自販機に体当たりする地龍。
月曜の朝7時。憂鬱な通学路の途中にある歩道橋下のすぐの曲がり角にある自販機でお茶を買っていくのが僕の日課だ。
その自販機に体当たりして缶ごとchill outを飲む地龍。
頭には禍々しい2本角。電柱より太い4本の足。岩のように太い尻尾を持ったそいつは、ご機嫌そうに尻尾を地面にゴリゴリと擦らせながらchill outを飲み干していた。
これは不登校になりたい僕と地龍の最っ高なチルを楽しむおはなし。
<地龍>
禍々しい二本の角と4本の足、岩のように太い尻尾を持つ伝説上の生き物。
近づくにつれて足取りが重くなる通学路。
ちょうど家と学校の真ん中にある歩道橋の上で僕はアイツと出会った。
ため息をつき、階段を上り切る。
いつかこの上から飛び降りてみたいと思っているが、怖くてできない。
友達と登校するからと母に嘘をつき早めに家を出て、この場所でぼーっとするのが朝の日課になってしまった。
「あー。行きたくねーー」
信号に従いながら行き来する車を眺めていると、なぜか落ち着く。
ここを飛び降りたら何か変わる気がするからなのかもしれない。
「おはよう」
「お、おはよう!岸さん」
(岸さん)「学校行かないの?」
「いや、、行くよ」
(岸さん)「先行ってるね!」
「うん!」
(よ、よ、よ、よっしゃ〜!!!朝から岸さんとお話しできるなんて!!)
クラスの人気者な岸さんは男子からも女子からも好かれるカースト上位の女子だ。
ショートヘアーで剣道部の彼女はいつも笑顔で明るい。
みんなは明るいけど凛とした感じが好きだと言っているけれど、僕は少し心配になる。
たまに笑顔が疲れているように見えるから。
歩道橋の上から岸さんが階段を降りてまっすぐ学校に向かう後ろ姿を眺めていると、僕がいつもお茶を買っていく自販機に奇妙な生物を見つけた。
自販機に突進してchill outをがぶ飲みしている龍のような生物がそこにいた。
「は?」
岸さんがその化け物の隣を通り過ぎていく。
「岸さん!!!!」
歩道橋の手すりから体を乗り出し、危機を知らせようと大声で彼女の名前を叫んだ。
いきなり大声で自分の名前を呼ばれた岸さんは振り返り、こちらを不思議そうな顔で見上げた後、笑顔で手を振り返してくれた。
(可愛い・・・。じゃなくて!!)
「岸さん気づいてない・・・?」
もう一度自販機の方を見ると、龍?がジロっと眉間に皺を寄せ、睨んでいた。
「あ、、」
大声を出した僕の方を警戒しながら見つめる龍?と目が合ってしまった。
じっとりと手汗をかき、鼓動が早くなる。
歩道橋から身を乗り出していた体はバランスを崩し、どっと噴き出た手汗で滑ってしまった僕はそのまま歩道橋から落ちてしまった。
(岸さん)「危ない!!!!!!」
逆さまになった景色と迫ってくる黒のミニバン。全身に緊張が走り、硬直する。目をギュッと閉じ、うずくまる。
「っ!!!!!!!!!!!!!」
ドンっ!!ドンっ!!ドンっ!!ドンっ!!ドンっ!!ドンっ!!
ガシャっ!!!!!
ギギギ!!!!!
地響きとともに破壊音が頭上で聞こえたと思うと、落下時の浮遊感が無くなった。
ゆっくりと目を開けると、歩道橋に尻尾をかけ、四足の足で僕を抱いている龍?の姿が見えた。
「あ、あれ・・」
「う、うわぁ!!!?!?!?!?!?」
(地龍)「黙れ」
龍?に口を押さえられ、そのまま気を失ってしまった。
目を覚ますと、保健室にいた。
頭を包帯でぐるぐる巻きにされ、利き手に添木をされている。
(岸さん)「お、おきた・・・」
「岸さん・・・?」
(岸さん)「よ、よかった〜〜〜〜!!!!!」
突然、泣きながらベッドに顔を俯ける岸さん。
「き、岸さん!!?」
(岸さん)「死んじゃったのかと思った〜〜〜!!!!!」
(保健の先生)「大丈夫??歩道橋から落ちたって聞いたけど!?」
「い、一応?大丈夫みたいです・・・?」
(保健の先生)「病院行く?軽く頭と右手をぶつけたみたいだけど、折れてはないわ」
「そ、そすか・・・」
あれ、そういえばあの時なんかいなかったけ・・・?
(保健の先生)「岸さんが助けてくれたらしいじゃない!?すごいわね〜」
(岸さん)「それが。助けた時の記憶が私、あんまりなくて」
「え、そうなの?」
(岸さん)「うん・・・」
(保健の先生)「無我夢中だったのね!ほんと!すごいわ〜!!」
(保健の先生)「明日、表彰式をしたいって校長が!!」
(岸さん)「そ、うですか・・・」
「・・・」
僕は大事を取って早退させられた。共働きの両親は迎えに来れないらしく、歩いて帰ることに。
(岸さん)「また明日!」
「うん」
僕は、帰り道ずっと上の空だった。
(なんか、忘れてるんだよな〜)
今朝、落ちた歩道橋の下に着くと、歩道橋は立ち入り禁止のテープが貼られていた。
上を見ると、大きく歪んだ鉄骨の手すりが目に入った。その途端、全てを思い出した。
歩道橋の下で立ち尽くして上の手すり部分を見ていると、背後にフードを被った長身の女性が立っていた。
(???)「・・・」
二話目のURLです
https://note.com/books_ic/n/n513335e079ed
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