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チルりたいんですか?地龍さん 第二話 殺さないでよ?地龍さん

(???)「見たな〜〜〜!!!??」
「!?」

背後に立っていたフードを被った長身の女性が僕の腰と口に手を回し、膝を曲げ飛び立った。

「んんんん!!!!!!!!????????」



[どこかの廃村]

ドサッ!!

「グヘッ!?」
(???)「ああぁ〜〜!!!!!もう私の安息は終わりだ〜〜!!!!!」

古い廃村のお社前にほたり投げられ、仰向けになる。
ここへ連れてきた当の本人は地面にうつ伏せ、泣き叫びながら地面を叩いていた。

「はい???」
麻のフードの下からボロボロと泣き崩れる美女。その端正な潤んだ顔立ちに思わず見惚れて声が詰まる。

僕の腰にしがみつき、泣きながら「今朝の事を忘れろ!」と繰り返し頭をポカポカ殴ってくる。

手を振り翳した拍子にフードがはだけると、2本の禍々しい角と艶やかな黒髪が露見した。

日本人離れした高い鼻から出る鼻水と碧眼で猫目の瞳から溢れる大粒の涙で僕の服がびしゃびしゃになっていく。


それに、やや大きめな膨らみのある胸部。


(まずい・・・!下半身に当たるふわふわは、思春期高校生には強すぎるぅう!!)


僕は泣きつく美女の両肩を持ち、腰から引き剥がしてから事情を聞くことにしてみた。

「あ、あなたは??」
(???)「ここに住んでる。木花土草竜(コノハナノツチクサメ)。土から生まれた使い・・・」
「コ・ノ・ハ・ナ・ノ・ツ・チ・ク・サ・メ・・・・・?」
「花ちゃん、でいい?」
(花ちゃん)「あ"ぁ"??舐めてんのか・・・?」

グリグリと角を額に押し付け、睨みつけられる。少しでも下を見ると思春期男子からすると絶景の光景を見られるが、今はチラリとでも見たら殺されそうだ・・・。


「では、なんとお呼びすれば・・・」

角の逆立った鱗で額の皮がうっすらと切れ血が滲み出す。

(花ちゃん)「私は誇り高き地龍ぞ!!ちゃんとした名で呼べ!!」
「で、でも長いし・・・。地龍で・・・」
(地龍)「地龍はしゅ!ぞ!く!名では無い!!!!!」


(めんどくせーなこの龍。顔は良いのに)

(地龍)「おい。今めんどくせーやつだなコイツって思っただろ」

(げっ!!心の声が聞こえんのか!!?)

(地龍)「バッチリ聞こえとるわアホ」


ゴゴゴゴゴゴ

[地震です!地震です!強い揺れに警戒してください!]

「!?」

心の声が聴かれている件をしていたら、突如スマホの地震アラートが鳴り始めた。

アラートがなり終わると、遠くから地響きが聞こえ始め、大きく揺れ始めた。


「うおぉ!?でけーなこの地震・・・」
(地龍)「危ない!!!!」

瓦が草で茂った古いお社が崩れ始め、瓦礫が僕の方へ飛んできた。

「っ!!!!!」


咄嗟に僕を抱え、降ってくる瓦礫から回避してくれた地龍。

「ボサっとすんな!!ったく!!昔からここの奴らは変わんねーな」
「ぉ"ぉ"ムグググ」


たわわから香る土けむりと花のようなフローラルな香り。代謝がいいのか、汗が胸の先から滴ってくる。

(地龍)「胸でモゴモゴしゃべるな!!くすぐったい!!」
「いい匂い」
(地龍)「息したら殺す」


僕は息を止めて揺れが治るまで、頭を埋め、地龍の下で過ごす。

ゆらゆらゆらゆらゆら・・・・

木々は枝葉を落とし、石は地面に弾みカタカタと音を立て続けている。お社は崩れた後もギシギシと音を立て、砂煙と埃を瓦礫の隙間から吹いていた。


しばらくして、揺れが治ると地龍はすぐに身体を起こしてお社へ駆け寄っていった。

(手入れされなくなった寺社仏閣はこうも簡単に崩れ去るのか・・・)


「あの・・・。二度も助けていただき、ありがとうございます・・・」

(落ち込んでる・・・?よな)

倒壊したお社の前で神妙に立ち尽くす地龍の背に向かって二度も助けてくれた感謝をできる限りの誠意を込めて伝えた。


(地龍)「・・・・・・・・・・・」
「あ、あの〜」
(地龍)「ふ、ふふふ、あはははははは!!!!!!!」
「え、なに!?」

(棲家が壊れて落ち込んでるんじゃ無いのかよ・・・)



袖とは別の箇所からもう2本の腕が出てきて、喉元をギュッと掴まれる。
そのまま徐々に力を加えて首を締めてくる。


ギリギリギリ


「!!!」
「カハッ!!」
「だ、だれ"に"も"、、、い"い"ま"せ"ん"ん"ん"ん"ん"ん"・・・!!!!

(???)「ほんとか〜?わしは今この場でお前なんか殺しても、どうもおもわん・・・」
「・・・?」
(???)「と思ったけど、やっぱ夢見悪いからいい」
「はぁァ!!はぁァ!!はぁァ!!うぅ!げほっ!!ごほっ!!!」
「た、助かった・・・」
(???)「どうせすぐ・・・」
「え・・・?」
(???)「何でも〜な〜い。このメガネ!」


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