読書メモ:『バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる法則』
トリッキーなタイトルの本は手にとることが少なくなってきた。どっちかというと本の内容をそのまま1行にしました、みたいなタイトルの本が多いかなあ。それは、ネット書店の検索結果の影響だったりもあるだろう。ネット書店だとオビコピーとかあまり見ないし、タイトルの重要度が増しているところもあるのかもな。なんか自分の心に余裕がない感じで嫌だなあ。本書はバナナの魅力を書いてある本ではないしそれを読者に強いるわけでももちろんない。本書に関しては読んだ動機は少し特殊なんだけど、ざくっといえば著者である柿内さんの本だから、というところでしょう。
コミュニケーション 本は古今東西永遠のテーマです。ダイエット・健康本同様、人類の歴史が続く限り一つの答えに収束するものではないでしょう。人によってなりたい自分、QOLの価値観、伝えたい内容と相手は違うのだから。コミュニケーションも、相手が一人か多数か、プライベートか仕事か、対面かネットかはたまたテキストか、いろんな「伝えたい」思いが世界中に充満しており、そして「言ったいわない」「伝えたはずだ」「何回言ったらわかるんだ」「聞いてます?」という不満とまじわりあってる。
本書はいわゆるハウツー本と呼ばれることもあるでしょう。本書後半には伝わるための「フレームワーク」とでもいうべきテクニックが、親しみやすいニックネームでずらりと並んでいる。確かに!と納得感満載の「理由の言語化」は著者の真骨頂だ。ただこの本がすごいのはそのテクニックを、ハウツーをいきなりずらずらと開陳するのではなく、コミュニケーションの「表現」以前に、相手に伝わるにはまずこういうことを心構えとして知っとかなきゃね、ということをやさしく教えてくれるのだ。『調理以前の料理の常識』なんて本もあったが、まさにそんな感じで。
結局、伝えたけど伝わらない、というのは言いまわしの妙や、語彙力や、声の大きさや権力、じゃないんだよね。まずここ押さえないとね、という前段が類書にあるようでない、ここまで明快に開かれた言葉で編まれた本を私は知らない。もちろんこれも本書の内容が読者に「伝わる」ための仕掛けなわけなんだけれど、とにかく全編通じて本書で紹介されているテクニックを使って書かれているので、そうか、これはこれを使っているわけか、と種明かしを考察するのも一興だと思います。
トリッキーな本書のタイトルの企みも、最後に明かされます。
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