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幼稚園のセーラームーン。LGBTについてのマイオピニオン。

ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間 についてのネタバレがありますので気になる方はご鑑賞後に拝見下さい。
個人的にはサスペンスや謎解きでは無く性を巡るドキュメンタリー映画なのでネタばれていたとしても鑑賞できる構造の作品かと思いますが念のため。

さて以下本文。

私は父親の顔を知らない。正確に言うと覚えていない。小学一年生の頃、両親が別れてから一度も会っていない。そんなものだから父との思い出はひどく朧気で具体的に思い出せるエピソードが2,3しか無い。その中の1つで印象的だった言葉がある。

母と父、そして息子の私の三人暮らしのマンション。確か日曜の朝。春か夏頃。小学生になる前か、なりたての頃。週末は遅く起きてくる両親に隠れてTVでセーラームーンを見ていた。こっそりと。理由は分からないが見たかったのだ。

「セーラームーンは女の子が見るものだから男の私が見てはいけない」という様な偏見が自身にあったからこっそりと見ていたんだと今では思う。そうしてこそこそ見ていると、音を立てずに父が後ろに立っていた。チャンネルを変える隙もなく、画面に映る月野ウサギを見て父は笑いながら言った。

「男の癖にセーラームーンなんか見やがって」

なんて事ない軽口だった。確か私は何も言い返せなかったと思う。図星の部分もあったからだろうけど。何故か悔しかった記憶だけはある。物忘れの多い自分がこんなある意味なんて事ない言葉を忘れていないのはずっと胸に引っかかっていたからなのかもしれない。

ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間

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というドキュメンタリー映画の上映会・トークイベントでボランティアをして来た。トークゲストは日本初LGBT当事者で北海道議会議員になった渕上綾子さん・女装サロン「7丁目のパウダールーム」店主であり、さっぽろレインボープライド副実行委員長 満島てる子さん。の2名だった。

あらすじ

女性として生まれたが、自分の性に違和感を持ち続けていた小林空雅さん。13歳のとき、心は男性/生物学的には女性である「性同一性障害」と診断される。17歳の時に出場した弁論大会では、700人もの観客を前に、男性として生きていくことを宣言。そして弱冠20歳で性別適合手術を受け、戸籍も男性に変えた。本作はそんな1人の若者の9年間の変化と成長を描いた《こころの居場所》についてのドキュメンタリーです。

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女性の身体を持って生まれた小林さんが手術によって身体的にも戸籍的にも男性になるまでのドキュメンタリー映画。ではないのです。

本作には終盤、衝撃のツイストが加えられる。子宮を摘出し戸籍上も晴れて男性になったかと思いきや小林さんは男と女に二分される性に違和感を感じ、自ら「Xジェンダー(性別なし)」であると宣言します。ホルモンバランスの影響で少しふくよかになり、薄化粧をした24歳このみ(性的にどちらともとれるネーミング)として。

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それでも小林さんは作品中最大の笑顔で「今の自分が好き・幸せ」と語り映画は幕を閉じます。

ここからは私自身の話を少しします。

父が幼少期に家庭から居なくなってから私は三姉妹である母と祖母の逞しい腕に抱かれて女性だらけの家族に囲まれて育ちました。そんな環境も手伝ってか、とてもフェミニンなボーイになりました。破けた絵本を自ら修復し、ボロボロになっても愛でて、小学生になってからは風を感じたいからドライブに連れていけとせがんだ。古着屋で気になるシャツの柄は大抵花柄で、鮮やかでキュートなものに惹かれます。(自宅のランチョンマットはパステルカラー)男性と一緒に居るより女性と居る方が心が穏やかな気がします。おねえ言葉で話すのが好き。いや好きというより口をついて出るかな。男性と恋に落ちた事も性的経験もありません。しかし男性からアプローチされたことは何度かあります。好みではなかったからなのか、心理的なものなのか分かりませんが受け入れる事が出来ませんでした。所謂ワンナイトラブの関係を断った経験があります。申し訳なく思いました。だって相手からすれば「なよなよしたおねえ言葉のあんちゃん」なのですから。ヤレると思うのも理解できます。でも私は駄目でした。受け入れられなかった。

あなたはジェットコースターに乗ったとしたらどんな声で叫びますか?男っぽくうおおおおでしょうか?私は間違いなくきゃああああです。加えて、甘ったるくこわあいなんて言うでしょう。意識せずに出てくる感情表現が私は女性的なことが多いです。いわゆる私は異性愛者のノンケですが、心の中に消えてなくならない女性的な部分がいつもあります。女性に関する野卑なジョークに付き合わないといけないシチュエーションや男尊女卑的な考えの時代遅れのじじいと話すのが本当に苦痛です。生まれ変わるなら10000%女性になりたい。メイクして着飾ってモテモテになりたい願望があります。でも現状の私は男性を受け入れる事が出来ません。全く勃たなかった。やりたいと思えなかったのです。ではここで問いたい。私は「男」?「Xジェンダー(性別なし)」?「ノンケ」?

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SOGIというものを初めて知りました。「どんな性の人を好きになるか、自分がどんな性であると認識しているかということ。性に関するアイデンティティ」作中でもこのグラフが出てきて性についてのそれぞれの関心が可視化されるのでとても分かりやすかったです。

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男・女に縛られずに揺らいだまま生きてもいいのではないだろうか。長い人生において性の関心が変わることがあったっていいんのではないだろうか。作中に出てくる世界最高齢で男性から女性へ性別変更した現在92歳のチェリスト・八代みゆきさんは78歳の時に性転換手術をし男性から女性になった。男性の頃に結婚したピアニストの奥様と今も暮らしている。稀有だし奥様としての苦悩も勿論あっただろうが、とても風通しの良い素敵な関係性だなと思いました。このみさんの選んだ道はロールモデルも無く険しいのは確かだろうが、確実に少しずつ社会は変化している。同性愛者は病気じゃない。それはXジェンダーの人々だってそうだろう。

私はLGBTQの当事者では無くちょっとだけフェミなただの異性愛者だ。と多くの方は分類するだろうが自分の中で確実に違和感はあるのだ。それを分かってほしくて、というより自分自身で理解したくて、言語化したくて、こうしてタイピングしている。誰にどういわれようと。今の自分なら堂々とセーラームーンが見れる。可愛いもんが好き。それの何が悪い?とあの頃の父に言えるだろう。

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同じくボランティアとして参加されていたのメンバーの方と少しだけお話した際に個人的なセクシャルについての話題になった。彼はゲイであるとカラっと打ち明けてくれた。私は「つまらないかも知れませんが女性に恋する異性愛者です」とたどたどしく答えた。LGBTQ当事者でないことがなんだか後ろめたかったからだ。僅かな沈黙の後に彼はこう答えた。

「つまらなくなんかないですよ」

上手く返事を返せなかったがとても心が揺れた。感動したんだと思う。今も上手く言葉に出来ない。一つだけ確実に言える事は「参加して良かった」だ。

日々更新されていくジェンダーを巡る問題について手軽に学べるものは日本では海外の映画ではないかと個人的に思う。最近鑑賞したものだとハーフオブイット・ブックスマート・ペインアンドグローリー。ブックスマートでの男女の境目の無いジェンダーレストイレの描写に衝撃を受けた。邦画ワンダーウォールの題材になった京都大学 吉田寮でも実際にジェンダーレストイレが採用されている事を知った。日本にもあるのだ、知らないだけで。トークイベントの際に議員の渕上氏もジェンダーレストイレの普及の為に活動している旨のこと述べていた。性犯罪の問題も懸念されるだろうし、海の向こうの当たり前が日本に導入されるまで長い年月がかかるだろう、しかしゆっくりとだが確実に社会は変わる。当事者の方もそうで無い方も、意思を声に出せずに居る人だって沢山居ると思います。勇気のいる行為だから無理にとは言いません。しかし声を上げられずとも、愛を持って注視していて下さい。目を背けずに生き続けて下さい。

さっぽろレインボープライド2020は9月12日開催。場所は札幌市中央区南一条西二丁目〜三丁目。開場12時・パレードスタート14時30分・閉場、集合記念撮影16時30分 参加は要予約

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タフでなければ生きていけない。 優しくなければ生きている資格がない

レイモンドチャンドラー






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