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居場所って大事。

本日もほるぷ出版の絶版の絵本からご紹介〜。
ゾウが主役の2冊で、少し似た感じのお話です。
どちらも絵がすごーくかわいくて、大好きだった絵本。内容は今でも通じるというか、むしろ今の方がマッチしそうなものなので、これも復刻してくれないかなあと思ったり。
1冊目はこちら。

ちいさいちいさい、ねずみほどの大きさしかない若草色のゾウは、他の灰色の大きなゾウたちに、お前はきっと風に吹かれて海の向こうの土地からやってきたに違いない、私たちと全然違うじゃないか、と笑われます。
ちいさいちいさいゾウも、自分の故郷はここではないどこかだと感じています。海をみていて寂しくなったゾウはその晩夢を見ます。緑の草原、木には葉が繁り花が咲き、白い海鳥が飛ぶところ。きっと故郷に違いないと思ったゾウは、海辺で海鳥に尋ねたり波に尋ねたりしますが、誰もはっきりとした答えはくれません。海の向こうを確かめてみたいゾウは、風に運んでもらい、海の向こうへたどり着きます。はたしてこの場所が故郷なのか、ちいさいちいさいゾウは自分の居場所を見つけられるのでしょうか……。
といったようなお話です。
この若草色のちいさいちいさいゾウがかわいらしくて、風に舞上げられて海を渡る姿もころんとしていて本当にかわいらしいんです。
鉛筆画なのかな?色味も抑えた淡い色合いで、優しいタッチが素敵で、これも何度も読んだ本。灰色の普通のゾウたちが意地悪な感じで、寂しそうなゾウの姿が切なくて、ちょっと心がキュッとします。それだけにラストのほっこり感が増して、よかったねえ、と思えます。
自分が自分らしく生きられる場所を探す、自分を受け入れてくれる仲間を探す、普遍的ではありますが、今の時代だとよりフィットする内容な気がするので、復刊して読み継がれてもいい絵本なんじゃないかなあと思います。
最後の、「おかえりなさい、ふるさとへ」という文が暖かく心に沁みてきます。

そしてもう1冊も自分の居場所を探すゾウのお話。

トビアスはゾウなのに毛むくじゃらで生まれます。両親はそんな他とは違うトビアスを誇りに思っているのですが、変なゾウがいる!とジャングルでは噂で持ちきり。あんなゾウは見たことない、変なゾウだ、と噂はどんどん広がります。そしてライオンがトビアスに「外の世界を見てきなさい」と告げるのです。ここのライオンの真意が説明されていたかどうか記憶が定かじゃないんですが、ジャングルを騒がせているトビアスを厄介払いする感じだったように思います。どうだったかなあ。ともあれ、ライオンの言うことに従って旅に出るトビアス。ジャングルとは違う世界、世界の美しさを知り、そしてトビアスの毛を褒めてくれるサボテンたちと出会ったり、夜の寒さからその長い毛が守ってくれたり、ジャングルにいた頃は笑われていたトビアスですが、自分に誇りを持てるようになっていきます。そしてトビアスと同じ毛の長いゾウたちに出会います。トビアスもまた、他とは違う自分を受け入れ、自分らしく暮らせる場所と仲間を見つけるのです。
こちらは『ちいさいちいさいぞうのゆめ…です』とはまた違って、彩色豊かな絵が魅力。特にジャングルのシーンはどれも彩りが素晴らしくて、クジャクやオウムなんて本当に綺麗です。たくさん色を使っているのにごちゃごちゃしていなくて、目が楽しい。トビアスもフサフサした感じがとってもかわいらしいですよね。
この物語も、普通とは違うと疎外された者が居場所を探して自分らしくいられる場所を手に入れるという物語です。
自分と同じような仲間のコミュニティでないと生きづらい、という所に落ち着いてしまっているように見えますが、それは受け入れられたことの象徴として描いているのかなあ、と大人になってからは考えたりします。今の時代でもフィットする内容、と書きましたが、もしかしたら今なら彼らを疎外した者たちが彼らの個性を受け止め、ともに生きるという筋が必要なのかもしれません。
でも無理にそこに持っていく必要はないかな、と思ったりも。絵本だからとか、子供向けだからということではなくて、まずは自分と同じ仲間がいて、自分らしくいられる場所を作るって大切なことだし、その救いがあってこそ、自分と違う者にも相対することってできるんじゃないかな、と思うので。
ここは自分の居場所じゃない、受け入れてもらえないという孤独の中にある時に、自分を嘲笑する者と向き合うことって大人だって難しいですよね。他者と向き合う強さというものは帰る場所のある心強さと無縁ではないと思います。
“ここ”では受け入れてもらえないかもしれないけど、“どこか”では自分を受け入れてくれる。
他の人と違っていていもいいんだよ、きっと1人でいなくていい場所があるんんだよ、というメッセージはとっても優しいと思います。
どちらの絵本もとっても素敵で優しい気持ちになれるので、ぜひ今の子たちにも読んでほしい本。
最近復刻してほしい絵本シリーズみたいになってるな(笑)。

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